「オイディプスREXXX」明日開幕、中村橋之助「僕の今年のメインイベント」
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KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「オイディプスREXXX(オイディプスレックス)」が、明日12月12日に神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオにて開幕。これに先駆けて本日11日にフォトコールと囲み取材が行われた。
杉原邦生が演出を手がける本作は、父を殺し、自身の母と夫婦となったオイディプス王が、破滅の道をたどる姿を描いたソポクレス作のギリシャ悲劇。オイディプス役を中村橋之助、オイディプスの妻であり母でもあるイオカステ役ほかを南果歩、イオカステの弟・クレオン役ほかを宮崎吐夢が演じる。
フォトコールではまず、周囲を客席に囲まれたステージ上に大久保祥太郎、山口航太、箱田暁史、新名基浩、山森大輔、立和名真大が担当するコロスが登場。彼らはラップに乗せて冒頭のストーリーをつづり、そんなコロスたちの熱気に誘い出されるように、サングラスをかけた橋之助演じるオイディプスが颯爽と姿を現した。橋之助は威厳たっぷりに語り始め、若きオイディプス王としての存在感を見せつける。続いて披露された第2場では、宮崎演じるクレオンに疑念を抱くオイディプスが、彼を激しく問い詰める。そこへ南演じるイオカステが現れ、2人を仲裁。イオカステは夫のオイディプスを包み込むようになだめた。
フォトコール後の囲み取材には橋之助、南、宮崎が登壇。橋之助は「(杉原)邦生さん、(南)果歩さん、(宮崎)吐夢さんをはじめ、素晴らしいチームに囲まれ、充実した1カ月でした」と振り返り、自身初となるストレートプレイへの挑戦に触れ「歌舞伎は、先輩方がなさった作品をなぞることを意識するんですけれど、今回のようにチームで1から作り上げていくのは初めての経験でした。自分の思ったことをお客様に伝えられる楽しさを感じております」と充実ぶりを語る。また自身が演じるオイディプスについて「王としての品格を持ちつつ、堕ちていく部分は、お客様に感情移入していただき、オイディプスの強さ、孤独を感じ取っていただけるように演じたいです」と真摯に述べた。
本作が約2年ぶりの舞台出演となる南は「この作品を復帰作と位置付けています。本当にいい役と出会えたので、この作品をもっともっと自由に大きくしていきたいです」と目標を掲げる。そしてイオカステ役については「親子であることを知らずにオイディプスと夫婦になるのですが、最後の最後で本当に愛していたんだということを伝えたい」と意気込む。また「杉原邦生さんの演出はとにかくハードなので、稽古前に30分のトレーニングをしているのですが、私がそのインストラクター役を務めていまして、体力作りはばっちりです」と笑顔を見せた。
「ギリシャ悲劇をまったく知らなかった」と言う宮崎は「ギリシャ悲劇がこんなにわかりやすくて面白いものなんだと知ったので、お客さんにも共感していただけるんじゃないかと思います」と呼びかける。続けて「クレオン役以外にも2役ありますが、かなり滑稽な役なので、“ギリシャ喜劇”にならないようがんばります!(笑)」と記者たちの笑いを誘った。
橋之助は「今回はスポンジのように吸収し、真っ白なキャンバスのようなイメージで挑みたいと思って、皆さんに色を付けていただきました。お稽古に入る前は歌舞伎に戻ったときの引き出しが増やせるように務めたいと思っていましたが、今は歌舞伎俳優ではなく、一人の俳優として見てもらいたいです」とアピール。さらに「お稽古は本当に毎日楽しかったですが、劇場に入ってからは緊張感も出てきました。オイディプスらしく自由に芝居をすれば、お客様にも伝わると思います」と期待を込めた。
南は今作で初共演する橋之助のことを「王のような、王子のような、持って生まれた品格があります。頼り甲斐がある年下の夫でございます」と紹介。これに対して橋之助は「(南は)超一流の女優さんなので、僕みたいな若造は怒られたりするんじゃないかと思っていました。でも実際はお優しくて素敵な方で、お稽古でも助けていただいています」と南に視線を送る。そして宮崎は橋之助の印象について「僕の半分以下の年齢なんですが、頼り甲斐がある座長です。僕がセリフを間違えても丁寧に対応していただいています」と微笑んだ。
記者から「お父さんの中村芝翫さんは舞台を観に来られますか?」と尋ねられた橋之助は「父と次男の(中村)福之助はちょうど南座の顔見世興行に出演中で、今回の舞台を生で観ることができないんです。父からは『いい環境で初めてお芝居させていただいているんだから、難しいことは考えず、まずは楽しんでやりなさい』と、LINEでメッセージが送られてきました」と明かし、「三男の(中村)歌之助は今高校生ですが、『オイディプスREXXX』のポスターを見て『カッコいい!』と感激していたので、観劇の感想が楽しみです(笑)」とエピソードを語った。
南は「去年の春、うつ病と診断されて、1年以上かけてここまで来られました」と打ち明け、「今はこうやって仕事ができている感謝でいっぱい。乳がんもそうですが、同じ病気を経験された方に対しても『私は生きている!』ということをお見せしたいです」と言葉に力を込めた。
最後に橋之助は「2018年の締めくくり、そして橋之助としての新たな一歩であるこの作品が、僕の今年のメインイベントだと思っているので、命を懸けてがんばります。劇場でお待ちしております」と締めくくった。上演時間は途中休憩なしの約1時間50分を予定。公演は12月24日まで。
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「オイディプスREXXX(オイディプスレックス)」
2018年12月12日(水)~24日(月・振休)
神奈川県 KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
作:ソポクレス
翻訳:河合祥一郎(光文社古典新訳文庫「オイディプス王」)
演出:杉原邦生
出演:中村橋之助、南果歩、宮崎吐夢 / 大久保祥太郎、山口航太、箱田暁史、新名基浩、山森大輔、立和名真大