iri、最新アルバムインタビュー「今考えると“デトックスしたい”という気持ちだったのかな」
音楽
インタビュー
iri Photo:小境勝巳
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オルタナR&B、ローファイ・ヒップホップ、アコースティックなどをナチュラルに取り入れた音楽性、そして、日常のなかにある光景や感情を反映した歌。iriのニューアルバム『PRIVATE』は、タイトル通り、彼女自身の私的なドラマを表現した作品だ。
前作『neon』以降のモードの変化、『PRIVATE』に至るプロセスについて語ってもらった。
――6thアルバム『PRIVATE』が完成しました。サウンドメイク、ボーカルの雰囲気を含めて、前作『neon』とはかなりモードが違いますね。
そうですね。『neon』はコロナ渦のメンタル的なダメージがかなり反映されていた気がして。リード曲の「摩天楼」もそうなんですけど、けっこう尖っていたというか。サウンドに関しても、「無駄なものを入れたくない」というモードだったんです。ストイックに追求していたところがあったんですけど、今考えると「デトックスしたい」という気持ちだったのかなと。それもたぶん、今回のアルバムを作るために必要なプロセスだったと思います。1回リセットされて、再スタートみたいな感じもありました。
――外からのイメージやトレンドを気にせず、いい意味で“作りたい音楽を作っている”という印象もありました。
確かに何かを狙ったというより、自分がいいなと思う曲、リスナーとして聴きたい曲、求めている曲を作った感じがありますね。トレンドもあまり気にしなくなったし、本当に自分が好きなものを集めたというか。鍵盤で作った曲が入っているのも、今までとの違いですね。バンドメンバーの方に鍵盤をもらったんですよ。ピアノが弾けるわけではないんですけど、コードを抑えながら、メロディを作ったり。ピアノの音って鎮静効果があるというか、自然に穏やかな曲になるんですよね。
――先行配信された「Season」は、まさに今のiriさんのモードを表した楽曲だと思います。特に「定期的なBadから抜け出すHow?」「どうやらそれほど/悪くないこの世界は」という歌詞は印象的でした。
自分自身、20代最後の年というのもあって。「20代のうちにやり残していることはないかな?」とか、謎のプレッシャーがあるんですよ。もちろん30代に突入する楽しみもあるんですけど、それ以上に不安や葛藤があるというか。そういう憂鬱だったり、「なんかやる気が出ない」みたいなことって、たぶん誰にもあると思うんです。「Season」を作ったときは、あまりネガティブに捉えず、肩の力を抜けるような時間になったらいいなという思いもありましたね。私自身も、ちょっとしたことで気持ちがラクになることあがって。道や電車のなかで知らない人に優しくされたりとか、そういう小さな幸せが大事だと思うし、それが「どうやらそれほど/悪くないこの世界は」という歌詞につながっているのかなと。
iri「Season」MV
――iriさんの歌からもリラックスした気分が伝わってきました。
今回のアルバムはあまりストイックにならず、肩の力を抜いて歌っていた感じはあると思います。自分のマインドもそうだし、あとはサウンドの影響もあるでしょうね。今回はダンストラックが少なくて、落ち着いたテンポ感やサウンドの曲が多めなので。もともと自分は、アップテンポの曲をガンガン歌い上げるタイプではなくて、弾き語りから始まってるんですよ。なので、ゆったりしたテンポのほうが自分らしい表現をできるのかな、と。曲を作ってるときは自分の部屋でひとりで歌を録ってるので、レコーディングのときもなるべく似たような環境を再現するようにしてます。
――「DRAMA」はシックな手触りのミディアムチューン。憂いから明るい気分に移り変わっていくようなリリックも素晴らしいな、と。
前作の『neon』以降、明るい曲を作るのがちょっとキツイなって感じる時期があって。ずっと暗い曲しかできなかったんですよ。そういうときにYaffleくんやESME MORIくんと一緒に作ることで、彼らの音で救い上げてもらう感覚があって。「DRAMA」はその途中というか、這い上がっている最中みたいな印象がありますね。
――なるほど。「moon」はノスタルジックなメロディが心地よくて。ギターのフレーズも軸になってますね。
まさにギターでループを作るところからはじまった曲なんですよ。ギターとビートだけのシンプルなデモを作って、それをトラックメイカーに投げて、アレンジを組んでもらって。それを聴きながらメロディと歌詞を乗せていきました。トラックに引っ張られたところも大きいですね。
――夜の情景が浮かんでくるリリックですよね。歌詞の描写の精度もさらに上がってて。
そこも意識してしましたね、今回のアルバムは。“踊れる、盛り上がれる”というよりも、日常に馴染むメロディと歌詞というか。自分自身がそういう曲を聴きたかったし、聴いてくれる人の日常に入っていける音楽になったらいいなと。そのときに目にしていたものというより、トラックを聴いているときに頭のなかに浮かんできた景色をそのまま書く感じですね。
――「boyfriend」はアコースティックな手触りの楽曲。「冷めそうにないこの微熱」というフレーズもそうですが、切ないストーリーと感情が滲む曲だなと。
特にストーリーなどを決めていたわけではなくて、「こういう気持ちに共感してくれる人もいるだろうな」と思って書き残した感じの曲かな。サウンド面で言うと「ガットギターの丸い音を活かした曲って、意外となかったな」と思って。自分のルーツである弾き語りを曲として残したいという気持ちもあったし、なるべく音を足さず、シンプルに仕上げようと。
――iriさんにとってガットギターの魅力とは?
シンプルに音が好きなのと、ガットギターのほうがリズムを出しやすいんですよ。ガットギターを弾くようになったのは、七尾旅人さんのライブを観たのがきっかけなんです。旅人さんに“ギタレレ”をいただいたんですけど、それもナイロン弦で。逆にアコギはほとんど弾いてなかったですね。
――アルバムの最後に収められている「private」はローファイ・ヒップホップの雰囲気を取り入れたナンバー。
アルバム制作の最後に出来上がった曲ですね。LA在住のAsoというトラックメイカーと一緒に作ったんですが、まずリファレンスの楽曲を送って、「夜っぽい感じがいいです」みたいなことだけ伝えて。私も英語がペラペラなわけではないので、イメージが食い違ったらイヤだなと思って。あえてシンプルなやり取りで進めていたんだけど、最高のトラックを送ってきてくれたんです。ひとつの物語を聴いているようなトラックで、すごくよくて。構成に手を加えることもなく、あとは自分が想像したストーリーを歌詞にしていきました。Asoは私が大学生のときにSoundCloudでよく聴いていたんですけど、当時からすごく好きで、いつか一緒にやってみたいと思ってて。ようやく実現できてうれしかったですね。
――アルバムのタイトルを『PRIVATE』にしたのはどうしてですか?
今回のアルバムは内省的というか、自分のプライベートな部分を描いている1枚でもあるなと思っていて。あと、私は「この歌詞はこういう思いで書きました」と細かく説明するのがあまり好きじゃないんですよね。インタビューで「この曲はどんな気持ちで書かれたんですか?」と聞かれると、「言いたくないなあ」と思ってしまったり。説明したとしても、「それだけじゃないんだよな」って思っちゃう自分がいるんです。『PRIVATE』というタイトルには、そんな気持ちも入ってますね。
――プライベートな領域を大切にしたいとう思いもあるのかも。アーティストとして表に出ていると、外からのイメージとプライベートな自分とのギャップを感じたりしないですか?
それはあまりないかも。もともと人見知りでシャイだし、表に立つことに向いてないと思ってるんですよ。ステージに立つときも「私を見て」という感じではなくて。それがiriのスタイルだと思うし、そういう自分だからこそ伝わるものもあるんだろうなと。
――ライブに対する意識も変わってきた?
最初は座って弾き語りしてたんですよ。ハンドマイクを持って、立って歌うだけであたふたしてたし(笑)、会場が大きくなってくると見せ方も考えなくちゃいけなくて。最近はあまり考えすぎず、バンドのメンバー、お客さんと一緒に楽しめばいいと思うようになりました。『PRIVATE』のツアーも楽しみですね。「Season」みたいなポップな曲もあるし、今までのライブとはちょっと雰囲気が変わるのかなと。「boyfriend」は弾き語りでやってみたいし、久しぶりの曲も入れようと思っていて。声出しがOKになって初めてのツアーなので、みんなと一緒に歌うこともできるのかなって、ワクワクしてます。
――楽しみです。最後に、iriさんがいちばん穏やかでいられるプライベートの時間というと?
やっぱり自然がある場所ですね。海が近くにある逗子で育ったので。今も時間があると、地元の海に行ったり、商店街とかを散歩してます。ぜんぜん雰囲気が変わらないし、ホッとするんですよね。
Text:森朋之 Photo:小境勝巳
<リリース情報>
iri 6thアルバム『PRIVATE』
発売中
●初回限定盤(2CD):4,180円(税込)
●通常盤(CD):3,300円(税込)
●アナログ盤(LP):4,400円(税込)
【収録内容】※全形態共通
1. Season
2. STARLIGHT(サッポロ生ビール黒ラベルStar Lyrics企画タイアップ曲)
3. Roll
4. DRAMA
5. 染(Amazon Originalドラマ『モアザンワーズ/More Than Words』主題歌)
6. Go back
7. friends(メルセデスAMG SL タイアップソング)
8. moon
9. boyfriend
10. private
【CD DISC2収録内容】※初回限定盤のみ
■iri Presents ONEMANSHOW "STARLIGHTS"
1. Corner
2. ナイトグルーヴ
3. Rhythm
4. 染
5. 会いたいわ
6. 半疑じゃない
7. 摩天楼
8. Sparkle
9. 24-25
10. STARLIGHT
配信リンク:
https://jvcmusic.lnk.to/PRIVATE
<ツアー情報>
『iri Hall Tour 2023 "PRIVATE"』
5月17日(水) 神奈川・神奈川県民ホール
OPEN18:00 / START19:00
5月18日(木) 宮城・トークネットホール仙台
OPEN18:00 / START19:00
5月25日(木) 北海道・カナモトホール
OPEN18:00 / START19:00
6月2日(金) 福岡・福岡国際会議場 メインホール ※SOLD OUT
OPEN18:00 / START19:00
6月6日(火) 岡山・倉敷市芸文館
OPEN18:00 / START19:00
6月8日(木) 大阪・サンケイホールブリーゼ
OPEN18:00 / START19:00
6月9日(金) 大阪・サンケイホールブリーゼ ※SOLD OUT
OPEN18:00 / START19:00
6月16日(金) 愛知・日本特殊陶業市民会館ビレッジホール ※SOLD OUT
OPEN18:00 / START19:00
6月18日(日)東京・東京ドームシティホール ※SOLD OUT
OPEN17:00 / START18:00
【チケット料金】
前売:7,000円(税込) / 当日:8,000円(税込)
※全席指定
チケット情報はこちら:
https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=F8210040
関連リンク
オフィシャルサイト:
https://iriofficial.com/
Instagram:
https://www.instagram.com/i.gram.iri/
Twitter:
https://twitter.com/03iritaama
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