Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > ぴあ映画 > 【おとなの映画ガイド】筒井真理子主演、キムラ緑子、木野花、江口のりこ、平岩紙、光石研、磯村勇斗、そして柄本明…、役者が神がかりで全員ぶっとんでいる!──荻上直子監督の『波紋』

【おとなの映画ガイド】筒井真理子主演、キムラ緑子、木野花、江口のりこ、平岩紙、光石研、磯村勇斗、そして柄本明…、役者が神がかりで全員ぶっとんでいる!──荻上直子監督の『波紋』

映画

ニュース

ぴあ

『波紋』 (C)2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ

続きを読む

フォトギャラリー(7件)

すべて見る

予告映像を観て期待したのに、なんだこりゃ、っていう映画は結構多い。でも、5月26日(金)に公開される『波紋』は逆。この面白さ、予告編だけでは伝わらない。それくらい、至るところにブラックユーモアや、微妙な人間の深層心理描写がちりばめられている。

宗教に走ってしまった主婦を筒井真理子が演じる。狂気を奥底に潜めるヒロインは、いかにも筒井にぴったり。監督は荻上直子。コワイはコワイ。しかし、どんなシリアスなドラマでもどこかクスリとさせるユーモアがあるのが身上の荻上監督。それが筒井のコワイにぴたりとハマった。

それだけでなく、いろんな気づきもあたえてくれる。「絶望を、笑え」がキャッチフレーズ。今回はなんと、書いた監督自身が「自分史上最高」という脚本。掛け値なし、オススメの1本です。

『波紋』

依子(筒井真理子)は専業主婦。ガーデニングが趣味だった夫(光石研)が、突然に家出をしてから11年。ずっと介護をしていた寝たきりの義父が他界し、ひとり息子(磯村勇斗)は遠い場所にある大学を出て、その地で就職をしてしまった。いまはひとり暮らしだ。スーパーでパート仕事。「緑命水」という水の効能を信じる新興宗教にのめり込み、家中にその水が置かれている。夫が丹精こめて作った庭は、白い砂と岩がおかれた「枯山水」に姿を変えた。依子は、毎朝、大きな熊手を使いその枯山水に波紋を描くことで、自分を「整える」。

静かで一見穏やかな日々は、夫が突然に帰宅し、崩れる。ガンにかかったという。高価な薬が必要で、その金を無心にきたのだ。しかも夫は何事もなかったように、また、この家で暮らし始めてしまう……。

荻上直子監督は「依子は、夫がいなくなるまで、働かずに済むなら、働かなくていいという意識で生きてきたのですが、私の母親世代の多くは依子のような専業主婦で、そうした生き方が当時は主流でした。そういった女性が、家族の世話から解放されたときに拠り所をなくしてしまうというその心理はわからないではないけれど、次の依存先を欲してしまうという気持ちのほうがわからなかった。そこを知りたい、理解したいという気持ちから、依子という人物が宗教にはまる心理を考えていきました」とインタビューに答えている。

宗教を扱った映画では、芦田愛菜が「宗教2世」役を演じ、永瀬正敏と原田知世が両親を演じた『星の子』という作品があった。あの作品でも、両親たちは神聖で力を持つ水にのめりこむ。信じないものにとってはその儀式も冗談としか考えられないが、信心だから批判できない。

依子が通う宗教団体のリーダー役を演じるのはキムラ緑子、熱心な信者役で登場するのが江口のりこ、平岩紙と、役者も神がかり的。「個性・存在感」を競う実力派ばかりだ。そんな人たちが、至って善意で、美しいことばをぬりたくって「切磋琢磨いたしましょう」とか言い合う。

その3人以外でも、出てくる役者は「全員、実力派。全員、ぶっとんだ演技のコラボレーション」だ。例えば、隣人役に安藤玉恵。依子がつとめるスーパーで、毎日、クレーマーまがいの難癖をつけて値切る客に柄本明。一瞬気づかないような役でムロツヨシも出演している。夫役の光石研、息子を演じた磯村勇斗と、まさにただならぬ役者ばかり。

なかでも、依子と同じスーパーで清掃の仕事をする木野花は、インパクト強し。彼女のなにげにしたアドバイスが、依子を変える大きなきっかけとなる。彼女自身驚くような現実をかかえていて…。それはそれで衝撃的なエピソードだ。

荻上直子監督は「初めて(台本の)読み合わせをしたときに並んだ女優3人(筒井真理子、キムラ緑子、木野花)を見て、この映画は狂った女たちの話なんだ、と改めて気付きました。それだけ、迫力があり、怖かったのです」と語る。うんうん、たしかに。

文=坂口英明(ぴあ編集部)

(C)2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ

フォトギャラリー(7件)

すべて見る