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1stアルバム『Intro』をリリース tonunインタビュー「今の時代にあった言葉の組み合わせ方は意識して作っているかも」

音楽

インタビュー

ぴあ

tonun Photo:中村力也

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「これを聴けばtonunがわかる、自分のいろんな魅力が詰められた名刺となる1枚ができた。アルバムができたことで、これからよりいろんなことができそうな気がします」。ついにリリースとなる1stアルバム『Intro』を愛おしそうに語るのは、シンガー・ソングライターtonun(トヌン)。

2020年10月、YouTubeに「最後の恋のMagic」を投稿したのをスタートに、楽曲の配信リリースを続け、2022年にはSpotifyが選ぶ次世代アーティスト「Spotify RADAR:Early Noise 2022」に選出され、リスナーを増やしていった。日常の温度にフィットする、またふとした日々のシーンを磨き上げて素敵なドラマに仕立ててくれるその音楽は、ソウルやR&B、ジャズをルーツに感じる。また、トム・ミッシュなどのジャズシーンからポップシーンも自在に行き来するアーティストの多彩で柔軟なセンスも感じられる。

アルバム『Intro』では地盤となるものができたと語る。心地よいグルーヴを軸とし、詩的にメロウに、また濃密なバンドアンサンブルを感じられる晴れやかでダンサブルな曲まで幅広い内容が揃った。アルバムのリリースパーティを6月24日(土) に控える中、軽やかに日常をグルーヴするこのシンガー・ソングライターtonunとはどんな人なのか、迫ってみた。

──2020年10月に初めてYouTubeに曲を投稿しtonunとして活動をスタートしてから、凄まじいスピードでリスナーを増やし、そしてデビューへと至っていますが。そもそものところで何がきっかけで、曲作りをはじめているんですか。

曲作りは大学生の頃からやっていて。地元・広島で、ギターと歌だけでやっていたんです。でも弾き語りだけだと、自分の中ではこういう感じの曲なんだよねというのがあるんですけど、その世界観が届きにくいなという感覚があって。そこで自分でトラックメイクやミックスを学んで、ようやくひとつ、自分が表現できる作品ができたので。じゃあYouTubeに気軽にあげてみようというのが「最後の恋のMagic」だったんです。

──そこに反響があったわけですね。頭の中の音を再現するということでは、ひとつの手段としてバンドで誰かと一緒に作ることもできるじゃないですか。そういう選択肢はなかったんですか。

高校が軽音部で、大学時代もフォークソング部に所属していて一緒にやる仲間はいたんですけど。やってみるんですけど、どうしても自分の頭のなかにある音像とはちがうというか(笑)。それもあって、正式なバンドが組めなかったんです。

──それなら、この頭の中にあるものを自分でそのまま抽出しようと。

そうですね。やっぱり自分が納得したものでないと。もしバンドを組んだとしたら、一生続けないといけないじゃないですか。

──できれば長く続けたいですよね(笑)。

ずっと音楽をやっていきたいというビジョンは高校生のときから持っていたので。ただ、元々はギタリストになりたいなと思っていたんです。

──そうだったんですね。でも、その片鱗は作品から感じます。

でもギタリストとなると、いろんなアーティストのサポートをすることになってくると思うんですけど、そこは自分に向いてないなっていう。自分がやりたい音楽が強すぎるので。アーティスト、シンガー・ソングライターになればギターソロも弾けるし、そっちの方がいいんじゃないかなって思って(笑)。ジョン・メイヤーはギターめっちゃうまいけど、シンガー・ソングライターとしてデビューしてギターソロも弾いているし。こういう形でもギターは弾けるんだなって。何よりステージでソロを弾くのがいちばん好きなんです。

──シンガー・ソングライターとしては歌というのも必要になりますが、そちらはどうだったのでしょう。

歌は、遡れば小学生の頃からずっと好きでしたね。教室でよくみんなの前で歌ってました。あの頃は学校に携帯を持っていっちゃいけないから、紙に歌詞を書いて、それを持ってひとり、教室で歌って、みんなに聴かせていたんです(笑)。歌を歌うのがかっこいいっていうのは当時から思っていたんですよね。

──子供の頃、誰か憧れの人はいたんですか。

小5とか小6の時に、4つ上の兄にRADWIMPSを教えてもらって。野田洋次郎さんがめっちゃ好きで、教室にあったラジカセにCDを入れて歌ってました。目立ちたがり屋だったんですよね、すごく。

──必然ですね、今の自分があるのは(笑)。

小学校の卒業文集では、将来バンドを組んで有名になりたいと書いていたので。今はバンドじゃないですけど、こうなっているのは自然だったと思います。

──文集に書いていた時思い描いていたのは、RADWIMPSのようなバンドで、ロックバンドじゃないですか。今のtonunさんの音楽に通じる、ソウルやR&B、あるいはジャズというものが出てきたのはどの段階だったんですか。

中3のときかな? これもまた兄からだったんですけど東京事変を教えてもらったんです。はじめは難しすぎて理解できなかったんですけど、ずっと聴いているとかっこいいなと思ってきて。それでより音楽的にマニアックになっていったというか。長岡亮介さんのギターにめっちゃハマって、そこから歌よりもギターにのめりこんでいきました。
それで軽音楽部がある高校に入学したんですけど、そこの軽音楽部は入ったときにひとつ楽器を選ばないといけなくて。ギターボーカルをやりたい気持ちもあったけど、歌かギターどちらか選ばないといけなかったので、ギターに決めて、バンドでずっとギターをやっていたんです。
同時に楽器屋さんにギターを習いに行ったんですけど、その先生がバークリー(音楽大学)帰りのジャズやブルースが好きな人で。「どんな音楽をやるにもブルースとジャズは基本だから絶対やっておいたほうがいいよ」って言われて。それで、そういうものがどんどん好きになって。ブルース、ジャズ、ファンク、かっこよすぎる!っていう。

──どんどん同級生たちとはちがう方向に(笑)。

みんないわゆるロックサウンドが好きで、それこそRADWIMPSやELLEGARDENをコピーしていたので。そこで温度差を感じて、ずっと家でギターを練習してましたね。そこからですね、ずっとひとりが続いたかもしれないです。

──実際、そのジャズやブルースというのはやってみて自分の肌に合うなっていう感じもあったんですか。

そうですね、なんか気持ちよさが抜群に違うというか。ロックもロックで歪んだギターでジャーン!っていう、あれも、楽しいし気持ちがいいんですけど。ジャズやブルースのリズムの気持ちよさに気づいてしまったんでしょうね。
そこから、グルーヴとかを大事にした方がいいのかなって。ジョン・メイヤーもバークリー出身で、あの人が弾き語りをする時はやっぱりグルーヴが出ているんですよね。押さえるコードもジャジーだし。高校3年の時にジョン・メイヤーの弾き語りの感じにはまって、いかにひとりでグルーヴを出すかを大学時代もひたすら突き詰めていって。
というのをやっていたんですけど、あそこまでたどり着くのは難しいし、日本人にこういうのをやりたいんだって弾き語りでやっても、なかなか伝わらないのもあって。これは、ほかの楽器も混ぜた方がより伝わるのかなっていう。
その頃にちょうどトム・ミッシュとかケシ(Keshi)とか、ひとりでトラックメイキングする人が出てきたんですよね。時代はトラックメイキングだ!って。そこでまたシフトチェンジをしたんです。

──でもそういったルーツをただトレースするだけではなく、日本人がやる日本語でのグルーヴが意識されていたり、日本人が聴いても馴染みある世界観や身近な物語が浮かぶ感じがあるものになっていますよね。

そこはすごく意識していますね。今はネットでいろんな音楽が聴けるし、日本でもR&Bやネオソウルが好きで音楽に詳しい人がめちゃくちゃいる中で、ここに入ってもダメだなっていうか。人と同じことをしたくないなっていうのは昔からあったので。コアな音楽好きの人って、それをポップスに消化するのが苦手というか。

──ただマニアックになってしまうのは意味がないわけですね。

子供の頃に聴いていたRADWIMPSとかJ-POPの感覚を呼び戻しつつ、それをいい具合にミクスチャーしたら、聴いてくれる人も増えたんですよね。マニアックな音楽を、あまりそういうのを聴いたことがない人に伝えるというのは、自分的にもうれしくて。少し入口をわかりやすくするだけで、その気持ちよさやグルーヴを感じてくれるのはあると思うんです。とくに今の若い子とかはよりこういう音楽を新鮮に感じてくれるのかなって思うので。今はtonunの、誰にもできない音楽を突き詰めていってるところです。

──YouTubeのコメントを見ていても、聴いている方は自分の日常の中で聴いてくれている感じですよね。

自然と日常に溶け込んでくれているというのは、うれしいですよね。

──ひとりの制作を重ねながら、ポップで、でもいかにマニアックな音楽団の心もくすぐるかという塩梅を見つけていった曲はもちろんですが、一方でバンド形態でのライブも増えて、昨年2本のツアーを行いました。バンドでのミュージシャンとの関わりやアンサンブルの面白さや、ライブでの熱量を体感した影響というのも、今回のアルバムではいい反応として出ているなと感じます。

ベッドルームミュージックとして、自分の部屋で作っていたんですけど。いざ、ライブをやろうという時にさすがにベッドルームミュージックだけ10数曲をやるのは、自分もテンションが上がらないし(笑)。グルーヴィといっても、メロウなものからアッパーなものまであって。ブルーノ・マーズやジャミロクワイとか、アップテンポでグルーヴィなものも元々好きだったんですけど、それをひとりで作るのは難しいんですよね。

だから、必然的にベッドルームミュージックになっていたというのもあったんです。でも今はライブで、各楽器のプロフェショナルがいるバンドがあって、これなら再現できるっていう感覚があったんですよね。それで、バンドのみなさんの力をもらいながら徐々に進化をしていってるというところですね。
といっても、tonunとしてのわかりやすさのバランスは保ちつつ、ポップスとしても保ちつつという感じで。

──ツアーやライブをすることによって生まれてきた曲もあるんですか。

本当に最近の「Sugar Magic」「Friday Night」「merry-go-round」はまさにそうですね。自分の曲は基本的に横ノリなものだったんですけど。「Friday Night」とかは4つ打ちで、手拍子で乗ってくれたり、ハンズアップしてくれたり、そういうノリの曲もほしいなと思ってできた曲だったんです。

──躍動感がいいノリですよね。「Friday Night」などはバンド感、グルーヴ感がまさにダイレクトに感じられる曲で。

こういう曲はノリやすいんだろうなっていうのは、お客さんの手の上がり方とかを見ても感じましたね。最初はこういう曲をやろうと思ってなかったので冒険でしたけど、でもみんな応えてくれるからありだなっていうのは思いましたね。いろんなプレイヤーとやる中で、進化の過程を経てできたグルーヴ感だなって思います。

──ギターの話がありましたけど、この「Friday Night」ではギタリストなんだなっていうのを認識させてくれる曲でもある。

そうなんです。元々あんなにギターは入っていなくて。プロデューサーの方と一緒にやっていくなかで、2サビの後くらいにカッティングが入っていたんですけど、これをメインにしたほうがいいかもって思ったので。それでイントロからずっとそのカッティングを引っ張っていく形にしたんです。それが意外とハマって、よりディスコっぽさが出ましたね。最初はもう少しEDMとかエレクトロっぽいイメージだったんですけど。あのカッティングのギターで一気にディスコサウンドになって。めちゃくちゃハマりましたね。

──生音の良さが際立ってます。

そうですね、打ち込みと生音のバランスがいい感じになったなと。

──その打ち込みと生音のバランスは、意識的に作っているところですか。

意識的ですね。どちらかに偏ってしまうと、本物になりすぎるというか。ドラムも、生ドラムだと本物のソウルミュージックになりすぎてしまうから。より現代的にするにはベースかドラムを打ち込みにしていますね。今回のアルバムでは、割合的にはドラムは打ち込みの方が多いですね。生のドラムは2曲くらいで。ベースは生のものが多いかな。生のベースの方がグルーヴを出しやすいし、ちょっとスウィングしてる感じとか、スラップの感じがあるものがいいなっていう。

──今回新曲もたくさん入っていますが、「how many times」などもいいですね、この高揚感っていうのはこれまでの中でも初めてのパターンかもしれない。

この曲は隙間が多い中に歌が入っているという感じで。こういう隙間、空白があるグルーヴが好きなんですよね。「Friday Night」ほどわかりやすくないですけど、より日常に溶け込むグルーヴ感があるなと思います。

──一転して「rendez-vous」は華やかで、リズミカルなトランペットが印象的です。

「rendez-vous」は一緒にやっているプロデューサーのknoak(Nobuaki Tanaka)さんがブラス好きで。ブラスの使い方に関しては、knoakさんから学んだところが大きいですね。最近はリモートでの作業も多いですけど、最初の頃はknoakさんのスタジオで昼から夜まで一緒に組み立てていく曲もありましたね。knoakさんとは昨年の4月に出会ったんですけど、だいぶお互いの好みもわかってきて、音の足し算引き算にしてもいいところができるようになっています。

──思ったものがちゃんと形になっているんですね。物語的だったり映像的に想像できるような歌詞が多いですが、歌詞についてはどのように考えていますか。

歌詞は、最初は苦手でした──今でもそんなに得意じゃないですけど。作り出した頃は、メロディを考えるときに出てきた言葉を適当につけていたんです。言葉を音的に捉えていた感じで。でもそれだと全然、聴いている人に響かないんですよね。最初の「最後の恋のMagic」という曲を出した時、それまではあまり恋愛の曲を書いてなかったんですけど、恋愛にフォーカスをしたものを書いて、タイトルもわかりやすいものにしたら、たくさんの人が聴いてくれて、反響が大きくて。ああ、歌詞って、大事なんだなと(笑)。そこからは、恋愛模様とかよりわかりやすい言葉を使うようになりました。今の時代にあった言葉の組み合わせ方は意識して作っているかもしれないですね。

──そのいまの時代ならではっていうと、どういう感覚ですか。

いわゆる、“エモい”っていうものですよね(笑)。キュンとくる感じというか。その感覚は大事に世界観を作り込んでいるかもしれないです。

──話を聞いていると、音楽にしてもそうですが、客観的に世界観を作りあげるプロデューサー的な目線がありますね。

ちょっと自分の音楽を俯瞰的に見ているかもしれないですね。ソロ・プロジェクトとして、tonunというアーティスト像を自分で作っているというか。でも恋愛の曲ということで言えば、学生時代から恋愛ドラマや映画も好きだったので。シチュエーションがいろいろ頭にあるんです(笑)。それを書き出してるのかもしれないですね。自分のことじゃなくても、こういう恋愛いいよねみたいな。だから、それに共感してキュンとしてくれる人がいるのかなっていうか。

──6月24日(土) には、Zepp Shinjukuでアルバムのリリースパーティとなるワンマンライブが決定しています。どんなライブにしたいですか。

みなさんアルバムを聴いてきてくれると思うんですけど、今考えているのはその再現性というか。やっぱり音源のまま聴きたいという人もいると思うんですけど、それだと個人的には面白くないなとも思うので。その再現性とアドリブのバランスを突き詰めているところですね。トランペットとかもシーケンスで出したりしているんですけど。いかに、再現しつつ、生のグルーヴを生かしつつ、というのを表現できたらなというのはありますね。

──ギターも思い切り弾きたいですしね。

そうですね(笑)。あとはいつかハンドマイクでも歌いたいなと思うんですよね。今はスタンドマイクで歌っているんですけど。ハンドマイクを持って、どれだけステージを動き回れるかという。そもそもtonunはそういうスタイルが合うのか?というのも、今後フェスやイベントでも確かめてみたいところですね。今後はライブに関しても試行錯誤しながら、いろんな形態で、いろんなステージでtonunを見せていきたいと思います。

Text:吉羽さおり Photo:中村力也

<ライブ情報>
tonun 1st フルアルバムリリースパーティー『One-man Live』

6月24日(土) 開場16:00/開演17:00
会場:Zepp Shinjuku
チケット料金:1,500円(税込)
※入場時ドリンク代が必要/特典付き
5月24日(水) 12:00より発売開始
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2342905

<リリース情報>
tonun ファーストアルバム『intro』

6月14日(水) リリース

【収録内容】
1. Sugar Magic
2. Friday Night
3. 嘘寝
4. 君は言うかな
5. how many times
6. rendez-vous
7. 真夏の恋は気まぐれ
8. eyes
9. merry-go-round
10. 気持ちの糸

Pre-add / Pre-save:
https://tonun1.lnk.to/Intro

公式サイト:
https://tonun.jp/

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