松尾太陽、EIKUがスペシャルコラボで歌った『いとしのエリー』 『LIVE Meets Vol.3』レポート「みんなが笑顔になれる音楽をこれからも届けたい」

それぞれが音楽を楽しむ空間へようこそ

トップバッターで登場したのはONE N’ ONLYのEIKU。当イベントにはvol.1から出演しており、「皆勤賞」だ。
定刻になると、ギターを持ってステージに上がったEIKU。
「みなさんこんにちは、EIKUです」と挨拶をしたあと、「手拍子をして応援してください」と言い、まずはオリジナル曲『0〜100まで』を。柔らかに歌声で会場を魅了していく。
続いては『や・ま・な・し』。タイトルからしてなんだかほっこりするが、山梨出身のEIKUによる「山梨愛を歌った曲」だ。

山梨の四季、山梨ならではの景色を心地よいメロディで歌った楽曲。曲中には「I LOVE YOU山梨」とストレートに地元愛を伝える歌詞もあり、きっと山梨に住んだことがある人も、ない人もその景色を思い浮かべることができるはず。
MCでは「やばい、緊張する」とポツリ。時おり、両手を頬に当てる仕草も見られ、言葉どおり、その緊張が伝わってくる。

しかし、「このLIVE Meetsをきっかけに、ソロとしてもいろんなところでやらせてもうらことが多くなりました」と言うEIKU。
「小さい頃から音楽活動をしていまして、中学のときはストリートライブをギター一本で甲府駅でやっていて。まさかアイドルとして活動するとは全然思っていなかったんですけど、いろんなきっかけをもらってスターダストさんによくしてもらって、今はアイドル活動、アーティスト活動をやらせてもらってます。たくさんの方に集まっていただけるのも嬉しいですし、今後、ソロの活動も並行しながら皆さんに音楽を届けられていけたらな、と思っていますので応援よろしくお願いします」ととつとつと語り、「自分の気持ちをしっかりと伝えられるように最後まで届けられるように、このあとの出演者のみなさんにバトンをつなげるように、がんばりたいと思います」と意気込みを語った。

続いてはカバー曲を。「みなさんに愛を伝えたいと思います」と尾崎豊の『I LOVE YOU』と、Rakeの『100万回の「I love you」』のカバーを続けて披露。
繊細な歌声が響き渡り、客席も思わず聴き入っているのが空気から伝わってくる。透明感ある高音がぐっと心に染みる。

なかなか緊張がほぐれないらしいEIKU。
「3回目なんだけど慣れないもんですね。いつもは一曲二曲歌えばほぐれてくるんですけどギター持って歌うときだけめちゃめちゃ緊張するし、全然ほぐれないんですよね」と言い、「なんでですか？」と客席に問いかける場面も。「ひとりだから！」という声が飛ぶと「それか……」と笑顔で目を細めて頷いた。

グループでのときはMCもあまりしゃべらない、とEIKU。しかし、今回のような場ではもちろんMCも自分で回さなければならない。だからこそ、ぽつぽつと自分の想いを言葉でも紡いでいく。
「こういうときだから言えるんですけど」と前置きをした上で「自信がないときも最近多くて。今日声出るかな、とか、うまくパフォーマンスできるかな、とか、ライブを重ねていくにつれてどんどん大きくなっていて。自信をもってやろうと思っても、片隅に『うまくいかなそうだな』って思う気持ちも正直あります。だから今日も不安はあるんですけど、実際に僕のことを知って、ライブに足を運んでくれて、僕のパフォーマンスを見て1人でも、少しでも勇気や希望に変わってくれたら嬉しいなと思います」と語った。

ラストはONE N’ ONLYの楽曲『Destiny』と『Video Chat』。EIKUが弾き語りで自身のグループの楽曲を披露するのは初めてということもあって、曲名を告げると客席からは歓声があがった。
ワンエンの楽曲も、弾き語りとなるとまた違った側面を見せてくれるが、グループのときとは異なる声の色を聴かせてくれたのではないだろうか。

14歳のmona+、YouTubeの歌い手あたし、クリエイティブグループmonje

続いて登場したのはmona+。中学生だという彼女だが、1曲目はエルヴィス・プレスリーの『Jailhouse Rock』をキーボードの弾き語りと共に力強い歌声でカバーを。自然と会場からは手拍子が湧き起こり、会場のテンションを上げていく。トークでは得意だという英語で身振り手振りを交えつつご挨拶。
「ロックが大好き。ロックでみなさんをあっためていきたいと思います」と言い、続いての楽曲はオリジナルの『One And Only』を披露。
そして、キュートな楽曲『HoneyBee』 、真逆の魅力を見せるかのように大人っぽい『Stranger』を立て続けに歌い上げ、楽曲の幅広さを感じさせた。

ラストは初めて歌詞を書いたという『無礼King』。フレッシュでパワーのあるステージを展開した。

YouTube登録者数約6万人の歌い手として活動する「あたし」は『今回の炎上の件について』という印象的なタイトルの楽曲からスタート。そしてキャッチーなイントロにぐっと引き込まれる『AtoZ』を。
MCでは自己紹介をしたあと、「今日はキスの日なんですよ。知ってました？」と会場に向かって問いかける。実は明日リリースの「あした」の新曲のタイトルが『ちゅーして』なのだという。なんともタイムリーだ。『ちゅーして』にはキュートなフリもあり、会場も一緒にできるようにと振り付けレクチャータイムが設けられた。ポップなサビは振りだけでなく、自然と体が動くような楽曲だ。

ラストは『うぉーしゃんだんす』。ここでは「あたし」の呼びかけもあり、ファンも席から立ち上がり、体を動かし楽曲を楽しんだ。

続いては東京藝大の同級生3人によるクリエティブグループ・monjeが登場。ボーカルと作詞を担当している小牧果南と作曲を担当する森山瞬が独自の空間をステージ上に繰り広げた。まずは壮大さを感じさせるイントロで始まる『rush』からスタート。小牧が楽しげに体を動かし、歌う様子は見ているこちらも自然と口角が上がる。さらに、リズムが心地よい『Spice』は物語性を感じる歌詞には思わず耳を傾けたくなる。雰囲気のある楽曲『madobe』。伸びやかな歌声、メロウな音にゆらりと体を委ねたくなる。楽曲によってガラッと世界観が変わっていくようで、興味深い。
ラストは新曲『Post-it』を初披露。ボップなメロディでまた異なる魅力を見せた。

松尾太陽の優しい世界に酔いしれる　スペシャルコラボも

そして、トリを務めるのは松尾太陽。
ギターの音色に呼ばれるようにして黒のオールインワンの衣装で登場した。客席ではあちこちで白のペンライトがきらめく。1曲目はミニアルバム「うたうたい」より『Sorrow』。のびやかな歌声が響き渡り、一気に空気を自分のものにしていく。

そして椅子に腰掛け、『掌』へ。感情表現豊かな歌唱。語りかけるように歌い、メロディが、言葉が、会場に染み込んでいくようだ。
2曲を歌い終え、改めて自己紹介をしたあと、「本当に寒い中、来てくださって本当にありがとうございます。寒かったやろ、ほんまに」と言い、ファンの体調をねぎらった。
さらに、みんなどこから来てくれました？　と客席に向かって問いかける場面も。神戸や大阪から来たというファンに大阪出身の松尾も顔をほころばせ、「も～みんな関西大好きやな！」。トークでもしっかり会場の心を掴んでいく。

「こうやって松尾太陽として本名でソロ活動もさせてもらっていまして。ちょっといろんな時期とかぶってしまって、楽曲を披露できていないこともあって」と近年のソロ活動について振り返った。「そういった苦しい状況っていうものを、ほかのアーティストの方も経験した方もたくさんいると思うんですけど、そんなフラストレーションを存分に発散できるようなライブにできたらいいな」と意気込みを語った。
初めて参加するLive meets。「温度感がわからなくて。ちょっと……砕けすぎてたらごめんね」と笑顔を見せた。

続いての楽曲は1stアルバム「ものがたり」より『橙』。会場も手拍子で盛り上げていく。ノスタルジックな印象のギターの音色から始まった『体温』。冒頭は松尾がアカペラで歌い、そこにギターの音色が重なっていく。歌の表現力ももちろんだが、表情、指先からひしひしと想いが伝えられていくよう。まるで一人一人に歌いかけているようにも見える姿に息を呑む。

そして、雰囲気がガラリと変わる『マンションＡ棟』では松尾も立ち上がり、楽し気に体を揺らしながら歌う。ポケットに手を入れ歌う姿、片膝をつき歌う姿など、一瞬の仕草が絵になりすぎてハッとさせられる。同時に物語性の強い楽曲の世界観にも惹きつけられてしまう。

あっという間に松尾の持ち時間も残りわずかに。
「ライブっていうのは本当に楽しいモノだなと思えた時間だった」と言い、LIVE Meetsについて「これからもずっと続いていくようなそんな予感もしていますし、むしろ続けていきたいな、と思っていますし」とこれからに期待を感じさせる言葉も。

そして「みんなが笑顔になれるような、そんな音楽をこれからも届けていけたらな、と思っています。なので、今日の帰り道とか、そういえば、こんなこと言うてた人おったな、とかそんなことを少しでも思い出しながら曲を改めて聴いてもらえると嬉しいな、と思います」さらに、「これから僕たちもいろんなことしていきたいなあ、と思っていますので、またみなさんと会える機会があれば、楽しいことをやりたいな、と思います」と語りかけたあと、『起承転々』へ。ひとつひとつの音、ことばを丁寧に歌い、届けていく。松尾の歌声に乗って、言葉が背中を押してくれる。

「皆さんがまたこうやって楽しんで笑って過ごせる空間に出会えますように」という言葉と共にラストに届けたのは「ハルの花」。優しい歌声が心に寄り添う。そんな力を持っているかのように思わせてくれる松尾太陽の歌声。さらに幸せそうに歌う表情に、気持ちが伝染する。この日、会場を訪れた多くの人の心を温かくしたのではないだろうか。

さらに、アンコールでは、「このLive Meetsでしかできないことができたらいいな、と思って」ということで、松尾太陽とEIKUによるスペシャルコラボが実現。
松尾に呼びこまれると、緊張した面持ちで登場したEIKU。
グループで会うことはもちろんあったが、実は面と向かって話したのは初めてだという2人。
「すっごく嬉しい」と笑顔をこぼす松尾にEIKUも「光栄です！」と答える。
そんなふたりが歌うのは「いろんな世代の方に楽しんでいただける曲を選びました」（松尾）ということでサザンオールスターズの『いとしのエリー』。違う甘さを持つ2人の声が重なる瞬間はまさに至極。EIKUの新たな魅力も引き出されているように感じられた。

歌割りやハモリについてはリハーサルで決めたということだったが、直前に打ち合わせたことを感じさせないようなスペシャルステージだった。
ラストは松尾とEIKUが一緒に客席に向かって手を振りご挨拶。
「（ふたりで）一緒に手を振ってる」と感動しているEIKUのキュートな表情もLIVE Meetsならでは。

ライブを心から楽しめる時間は、代えがたい大切なもの。それを改めて多くの人が実感しているはず。今後のLIVE Meetsではどのような楽しい空間が作られていくのか、今後も期待したい。

取材・文：ふくだりょうこ　撮影：武石早代