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物語に関係ないシーンも秀逸 カルト人気を誇るロバート・アルトマン初期の傑作『ロング・グッドバイ』

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イラストレーション:高松啓二

映画・音楽・舞台など各ジャンルのエンタメ通=水先案内人が、いまみるべき公演を紹介します。

【水先案内人 高松啓二のおススメ】

ロバート・アルトマンは『コンバット』などのTVドラマの演出から『M★A★S★H マッシュ』で一躍ハリウッドの異端児と呼ばれた映画監督。本作はレイモンド・チャンドラーが生んだハードボイルド傑作小説の映画化。原作の1940年代から制作当時の1970年代に移し、かなり改変され原作ファンからひんしゅくをかったが、後にカルト人気になる。特にオープニングの腹を空かせた猫のために夜中にカレー印の猫缶を買いに行くのが本作の名シーンとなる。

主人公の私立探偵フィリップ・マーロウはハンフリー・ボガートのあたり役でタフガイのイメージがあるが、エリオット・グールドは飄々としている。それでも探偵映画らしく奇人変人が次々登場し、事件を煙にまく。中でもマーク・ライデル扮するギャングがマーロウを脅すために自分の愛人の顔をコーラ瓶で叩き割るのは、映画史上屈指の怖さ! また車に乗った依頼人のアイリーンを走って追いかけるマーロウと音楽がマッチしクール。物語に関係ないシーンなのに、これらが秀逸なので本作を愛せずにいられない。

マーロウは劇中やたらとタバコを吸う。アル中作家ウエイドからマルボローと呼ばれていたのでてっきりマルボローかと思って調べてみるとキャメルだった。ちなみにオリジナルポスターはパロディ雑誌MADの漫画家ジャック・デイビスのイラスト。アルトマンらしい遊び心だ。

<作品情報>
『ロング・グッドバイ』

5月26日(金)~6月15日(木)
角川シネマ有楽町「ロバート・アルトマン傑作選」にて上演

公式サイト:
http://altman2023.com/

「ロバート・アルトマン傑作選」予告編