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不良要素ゼロの細田佳央太がヤンキーだらけの『ドロップ』の世界へ「これは“異世界もの”だと思って」

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細田佳央太 撮影:源賀津己

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品川ヒロシの半自伝的小説で、2009年には品川自ら監督を務めて映画化し約20億円の大ヒットを記録した『ドロップ』が再び品川の監督・脚本で、新たなキャラクターやエピソードを加えた完全リブート版としてWOWOWにて連続ドラマ化される。

品川自身がモデルの、不良になるために私立中学から公立中に転校してきた主人公・信濃川ヒロシを演じるのは、ドラマ『ドラゴン桜』、現在放送中の大河ドラマ『どうする家康』など話題作への出演が続く若手実力派・細田佳央太。自他ともに認める“非ヤンキー”の男はどのような思いで本作に挑んだのか?

狛江北中に転校してきたヒロシの、不良グループのリーダー・達也(板垣瑞生)らと出会い、近隣中の面々とのハードな抗争の日々をコミカルに描き出す本作だが、最初にヒロシ役でオファーが届いたとき、細田の心をよぎったのは「自分にできるのか?」という不安だった。

「いわゆるヤンキー言葉とか口に出したこともないですし、メンチ切ったこともないし、基本的に争いごとはキライな性格なので、僕にできるのかな?と。ただ、ヒロシはヤンキーに憧れて、その世界に飛び込んでいくので、僕も同じような気持ちでいいのかなと。そこはやりやすかったです」

『クローズ ZERO』シリーズ、『ごくせん』から『今日から俺は!!』まで、ヤンキー学園ものはいつの時代も愛され続け、世代ごとの人気俳優を輩出する“登竜門”とも言える存在にもなってきた。その意味で、ヤンキー・不良作品への憧れはなかったのだろうか?

「あんまりなかったですね。今、“登竜門”という言葉を聞いて“たしかに”と気づきましたが、僕が子どもの頃、登竜門っていわゆる特撮シリーズか、『花より男子』のようなキラキラした作品、あとは学園ものかスポ根だったんですよね。だからそこまで“やってみたい!”と思ったこともなかったです」

プライベートでの“不良願望”、ヤンキーカルチャーへの憧れも一切なかったという。

「僕、“うらやましいね”と言われるくらい、直毛なんですよ(笑)。でも、染めちゃうと髪がダメージを受けるじゃないですか? だから(今回、役で染めてみて)新鮮でしたね。この役に出会えなかったら真っ赤にすることもないし、これが最初で最後の可能性もあるので、良いタイミングで、作品のおかげでできたと思います」

そんな、不良要素ゼロの細田が、どのようにヒロシという役を作り上げ、不良たちのケンカ上等な世界に身を委ねていったのか?

「最初に品川さんから言われたのは、映画や原作を参考にしないでほしい、ということ。それから“ヤンキーがいない世界から、ヤンキーが当たり前の世界に入っていく――つまり、これは異世界ものだと思ってもらえばいいよ”と。その言葉にはすごく納得しましたし、この世界観に対する違和感や距離がなくなって、吹っ切れて悩まなくなりましたね」

大ヒット作へのプレッシャーには「もう慣れてます」

そしてもうひとつ、品川監督から直接、伝授されたのが、劇中のヒロシが見せる芸人ばりのツッコミの技術である。劇中、ヒロシはとにかくよくしゃべり、個性あふれる仲間たちの言葉に鮮やかにツッコミを入れていく。

「僕自身、これまでも普通にコメディ作品は見てきたし、出演もしてきましたので、自分なりのセリフの読み方はなんとなくつかんでいたんですが、監督からは“テンポもいいし器用だけど、それだと印象に残らない”と言われました。例えば“なんでだよ”と言うとき、前に小さい“ン”を入れるような感じにしたり、いろんなスキルを教えていただきました。逆に今もクセになって残っているんじゃないかと心配です(笑)」

友情、ケンカに恋など、青春全開のエピソードが10話にわたり展開するが、細田がもうひとつ、本作の魅力として挙げるのは、不良たちの周りにいる大人たちの存在。少年課の刑事・荒牧(三浦誠己)、気性の荒い達也の父親(深水元基)、ヒロシの姉(佐津川愛美)にその恋人(SWAY(DOBERMAN INFINITY/劇団EXILE))など、大人たちも個性豊かな面々が顔を揃えている。

「ここに出てくる不良たちが、犯罪の一線を超えることなく、なんでケンカだけでとどまることができたのか? それは周りの大人たちが、不良たちが間違った方向に行かないようブレーキをかけてくれていたからだと思います。大人たちの気配りなしには、僕らもこんなに自由にやれなかっただろうし、もしかしたらヤンキーで収まらず、片桐(波岡一喜/元ヤクザ)みたいになっていたかもしれない。そう考えると、大人たちと子どもたちのつながりもこの作品の見どころだと思います」

先述のように、ヒロシという役が務まるかどうかについては「不安があった」という細田だが、一方で、10年以上前に劇場版が大ヒットを記録した作品をリブートするということへのプレッシャーの有無を尋ねると、落ち着いた表情で「もう慣れてますね」という答えが返ってきた。

「(2021年公開の細田も出演した映画)『子供はわかってあげない』で、主人公の女の子(上白石萌歌)が“何でもかんでも実写化すればいいってもんじゃないんですよ”と言うのがすごく好きなんですけど(笑)、漫画は漫画、映画は映画だなって教えてくれたのは『町田くんの世界』でした。やってみなきゃ分からない。慣れましたね」

ちなみに「不良のような」とまではいかないにせよ、ケンカをした経験は?

「母とは結構、ケンカしますよ(笑)。最近はあんまりないけど、口ゲンカすることは多かったです。どうしても、撮影でストレスがたまりやすいところもあって、申し訳ないと思いつつも、家で雰囲気が悪かったり。特に『町田くんの世界』では、それ以前にあんなに大きな作品をやることもなかったので、プレッシャーも抱えてマイナス思考になってて、そうすると“じゃあ、やんなきゃいいじゃない”とか言ってくるんですけど、それもまたムカつくんですよ(笑)。“何言ってんの? こっちの立場も分からずに”とか……。反抗期はなかったけど、撮影の期間中にピリピリして気を使わせてしまったことはありましたね」

「何でもやってみて引き出しを増やしていきたい」

小学生の頃から事務所に所属して活動してきたが、芸能界からドロップアウトして、普通の生活を送りたいと望んだことはなかったのだろうか?

「辞めたいと思ったことはないけど、今でも考えてしまうのは、小さい頃からお芝居を続けてきた人と、18~20歳くらいでこの仕事を始める人と、どちらの方がいいのかな?ということ。部活や勉強に打ち込んだり、恋愛をしたりして学生生活を送った方が、経験値という意味で優れているのかもしれないし、どっちが良かったんだろう?と今でも思います。だからといって、小さい頃からこの仕事を始めたことを後悔はしていないし、辞めたいと思ったこともないので、他の仕事に就こうと考えたこともなかったですが……」

21歳にして、途切れることなく次々と話題の作品に出演し、存在感を発揮しているが、夢は“俳優”という仕事だけにとどまらない。

「自分で作品を撮ってみたいというのはずっと思っています。何を撮りたいかというと、僕は沖田修一監督の作品が好きで、特に『キツツキと雨』が大好きなんです。ああいうちょっと難しい笑い――ちょっとしたテンポのずれや表情で笑わせたり、クスっとさせられたりする笑いを自分の作品にも取り入れたいです。最近、iPadを買いまして、(ネタのための)日記を書き始めました。いつか本も書いてみたいなと思ってるんです」

世間でいうところの“Z世代”のど真ん中にいる細田。俳優としてまだ「○○世代」という呼び名で呼ばれることはないが、作り手たちも見る側も、誰が頭ひとつ飛び出してくるか? 誰がこの世代を引っ張るか? 楽しみに見守っている。そんな周囲の思惑をもちろん、本人も理解している。

「同世代へのライバル意識はありますね。この仕事をしていると、得意なスタイルだったりジャンルや路線の違いってなんとなく見えてくるんですけど、だからこそまず、自分と同じレーンを走っている人たちに負けたくないという思いは強いです。自分も他の人たちに負けないように頑張っていかなきゃと思っています」

現在21歳。「20代になったことで現場でもある程度、できて当たり前と見られるし、ありがたいことにオーディションを経ずに直接お話をいただける機会も多くなって、なおさら責任を感じます」と語り、さらに先を見据える。

「今は失うものもないし、新しいことに挑戦しやすい年齢だと思うので、20代は筋トレのつもりで、“どんな役でもやれます!”と言えるように、何でもやってみて引き出しを増やしていきたいです。それで30代になったとき、自分がやりたいことをできるようになっていたらいいですね」



取材・文:黒豆直樹
撮影:源賀津己
ヘアメイク:菅野綾香
スタイリスト:岡本健太郎

連続ドラマW-30『ドロップ』
WOWOWにて6月2日(金)スタート(全10話)
毎週金曜午後11時放送・配信
第1話無料放送【WOWOWプライム】【WOWOW4K】
無料トライアル実施中【WOWOWオンデマンド】
出演:細田佳央太 板垣瑞生
森永悠希 林カラス 大友一生 田鍋梨々花 中村里帆
佐津川愛美 SWAY(DOBERMAN INFINITY/劇団EXILE)/佐田正樹(バッドボーイズ)
金城碧海(JO1)/波岡一喜
三浦誠己 深水元基 ほか

ぴあアプリでは細田佳央太のアプリ限定カットをご覧いただけます。ぴあアプリをダウンロードすると、この記事内に掲載されています。

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