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『Grasshopper vol.13』ライブレポート トンボコープ×Hwyl×東京少年倶楽部、心の奥に届く熱い音を浴びた夜

音楽

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ぴあ

『Grasshopper vol.13』5月29日@下北沢CLUB Que Photo by 稲垣ルリコ

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2023年5月29日(月)、雨が降る中、多くの人々が下北沢CLUB Queに集まった。トンボコープ、Hwyl、東京少年倶楽部が三種三様の音楽を奏で、心に訴えかけるライブを披露した。

トンボコープ

しっとりとしたピアノのメロディと風の音がざわつくSEが流れ、それがすっと静まると、雪村りん(Gt/Vo)の弾き語りから『鼾』が始まる。じんわりと響くバラードで、雨の中を歩いて疲れた心を休めることができた。雪村はフロアを見渡し、その光景を噛み締めながら歌っていた。曲の最後、徐々にかき鳴らしの音が大きくなっていく中で、雪村は「雨でちょっと嫌な気持ちも一緒に飛ばしていきたいと思います!」と叫び、それに合わせてドラムの4カウントが勢いよく鳴った。

メンバー全員が満面の笑みで歌い出したのは『ストーリーモンスター』。観客もその勢いに引き寄せられ、拳を高く上げた。そらサンダー(Gt)が前に出て弾くギターソロに観客が手を伸ばす。元気良さが溢れ出す曲の疾走感に、前のめりになるような感情を引き出してくれた。次の曲『サクラ偽客』は林龍之介(Dr)のドラムによる軽快な繋ぎから始まった。キレのあるリズム、雪村とそらサンダーが息を合わせるギターリフ。正確に揃えて決める、かっこいい演奏に目を奪われる。

4曲目の『嘘だって』では、少し掠れた声と強弱のついたギターバッキングで雪村が感情を表現する。全体的にはゆったりとした優しいロックであるが、それぞれが鳴らす音はしっかりと芯があるものに聞こえた。終わるとそのまま『過呼吸愛』に入る。キャッチーなメロディを自然と口ずさんでしまう。ステージの両端にいるそらサンダーとでかそ(Ba)はお互いを見合って笑顔で演奏していた。曲が終わると、静かで綺麗なアルペジオが始まった。『信号花火』だ。ロックに歪んだ音の中にポップなメロディが鳴る彼らの音楽は聴く人の心を明るくした。笑顔を見せた観客は高く拳を上げた。

少しずつ歪んでいく音に次の曲を匂わせる。曲が始まると手拍子が自然と起こった。その曲は最近SNSでも話題になった『Now is the best!!!』だ。アップテンポで楽しげなリズムに乗っかって観客が飛び跳ねる。フロア全体が彼らの作り出す明るさに包まれた。最後の曲は『むかしむかし』。でかそとそらサンダーが自分の持つ楽器を高く持ち上げ、気持ちの昂りを見せる。スピード感のあるこの曲を駆け抜けるように演奏した。彼らは笑顔に溢れたステージを見せてくれた。

Hwyl

ベーシストのタケマトモヤが加入し、あきたりさ(Gt/Vo)、クマダノドカ(Gt)との3人体制となったHwyl。そこにサポートドラマーを加えてGrasshopperに臨んだ。彼女たちが登場した瞬間から指笛が高らかに鳴り、観客がメンバーを迎え入れたようだった。SEの後ろからギターのノイズがじわじわと存在感を表す。「Hwyl始めまーす、よろしくお願いします」と脱力感のある言い方であきたが挨拶をすると、それに応えて観客が声をあげる。

1曲目は『SIREN』。鳴り出す音楽に没入するように、体を動かしながらギターを弾くクマダのプレイに目を惹きつけられる。よく伸びる気持ち良い音、ぽろんと優しく鳴る音、ざらざらと歪んだ音。どれも非常に耳触りが良い。続くのは『オマエアレルギー』。あきたの感情をあらわにした、表現力ある歌声が目立った。

あきたが「毎日お疲れ様です。この曲をあげます」と声をかけると『暮らし』が始まった。ぽつぽつと静かに鳴る音に対して、耳の感度が高くなっていく。全体的に脱力した雰囲気が漂う音楽の中に、あきたの力強い歌声が浮いて響く。観客はそのコントラストに引き込まれ、食いつくようにステージを見つめた。

その後ドラムの4カウントから『わからないよな』が始まる。クマダが気持ちよさそうに上を向いて軽やかにギターを弾いた。ギターやドラムが軽やかな音が鳴らす中で、重みのあるベースの音はより存在感を増す。気持ちの良い歌声にサビでは拳が上がった。続く『現在地』は、静かでおしゃれな曲だ。張り詰める空気の中、クマダとタケマが向かい合い、息のピッタリとあった演奏を披露した。タケマはステージの前に出てベースのソロを気持ちよく弾き切った。

『i don’t know』はあきたの静かな歌から始まり、深く揺らぐような輪郭のない低音がフロアを包んだ。初めは感傷的な気分に浸らされたが、途中からテンポアップし、メンバーが動き回って楽しそうに演奏しているのを見て、観客も気分を上げる。そしてそのまま『戯れ言』になり、観客が自然と手拍子を起こす。あきたの顔には汗が滴っていた。前髪をかきあげ、ラストスパートに向けてより一層気持ちをこめて歌った。

そして、「最後に『Treasure』という曲を!」と叫んだ。あきたの歌とブリッジミュートに対して、観客が手拍子で応える。彼らは熱量を上げていき、サビでは高く拳を突き上げた。クマダがしゃがみ込んでギターをかき鳴らし、それに呼応してステージもフロアもグッと熱くなった。指笛が鳴り響いた空間に、最大限の「ありがとうございました」を叫んで、 Hwylはステージを終えた。

東京少年倶楽部

演劇の幕が上がるようなブザー音が鳴り響く。美しいピアノクラシックにノイズが加わった怪しげな音楽の中から東京少年倶楽部のメンバー3人が登場した。讃美歌のような合唱から始まったのは『mesmerism』だ。音なのか、ざわめきなのか。輪郭を失った不思議な音が空間を支配する。その中に少年のような高らかでクリアな歌声が確かに聴こえていた。歌を歌っているのは金髪に白シャツを着た松本幸太朗(Vo/Gt)だ。彼のオルタナティブな音楽性とキャッチーかつまっすぐなキャラに惹きつけられる。

次に演奏した曲は『Aventure』。ギター、ベース、ドラムそれぞれがズシンと重みのある音を鳴らす。一音一音が空間を揺らし、観客の身体を震わせた。叫びのようにも聞こえる歌声に惹き込まれた観客が高く拳を突き上げていた。照明で赤く染まった松本は両手を上げ、全身でステージを盛り上げた。

続いて弾き出したのは耳に残るギターリフ。三好空彌(Ba)は松本と背中を向け合い、情熱的なプレイを見せた。その曲は『夢中飛行』。徐々に疾走感が増していく曲構成にアウトロまで突き上げた観客の拳が下がらない。それくらい大きな熱気を生み出した。「ちょっと偏ってるけどこの音楽性で、既存のテンプレから脱したところで、ど真ん中のクリティカルヒットを打ちたい」そうまっすぐに語る彼の言葉を深く受け止めた。

その後の曲も彼らの語る音楽性を体現するものであり、『ばいばい』では今までで一番の爆音を轟かせた。どよめく音の中から、メンバーのまっすぐなシンガロングがしっかりと心に届いてくる。「一発頼む!」と大声で叫んだ松本に応えて、多くの観客が手を上げていた。

「誰も想像してなかったところに行こうと思っておりますんで、今後ともよろしくお願いします。ありがとうございました」と、自らが持つ夢を一つ一つ自分の言葉で紡ぎ出した松本の気持ちを、観客はじっと見つめて受け止める。細いギターの音が重なって幻想的な空気を生み出す。この『1998』という曲は少しずつ力強いバラードに変貌した。その熱さに応えて、ステージを見上げながら一緒に歌う観客の姿があった。その観客たちに対し、松本は両手を上げ、優しい言葉で感謝を伝えた。

アンコールには『踏切』を。松本が17歳の時に作曲したという。イントロから轟音が炸裂する曲だ。17歳の頃からずっと、まっすぐに自分自身の音楽性を信じて走ってきたのだろうかと思いを馳せる。松本はオレンジの照明に照らされながら、暖かさに溢れたこの曲を歌いきった。彼らのまっすぐさが曲に力強さと説得力を持たせ、鳴らす音楽に現れた熱さを証明していた。

Text by らいれいな
Photo by 稲垣ルリコ

<リリース情報>
トンボコープ New Digital Single「噓だって」

発売中

配信リンク:
https://tombocoop.lnk.to/Usodatte

トンボコープ – 嘘だって (Music Video)

『Grasshopper vol.14』 は6月26日(月)下北沢DaisyBarにて開催!

イベント公式サイト
https://fan.pia.jp/grasshopper/