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【おとなの映画ガイド】岡田将生が“残念なイケメン”に!台湾の大ヒット映画を宮藤官九郎脚本・山下敦弘監督の初タッグで日本の味にリメイク──『1秒先の彼』

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『1秒先の彼』 (C)2023『1秒先の彼』製作委員会

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台湾で大ヒットした奇跡のラブファンタジーを、宮藤官九郎があの抜群のセンスで脚本化し、『ハード・コア』の山下敦弘監督がリメイクした。タイトルは『1秒先の彼』。いよいよ7月7日(金) に公開される。何をやってもワンテンポ早くてうまくいかない彼と、何をやってもワンテンポ遅くてうまくいかない彼女、なんだかズレているこの男女に起きた奇妙なできごとと、思いもよらぬ恋の行方を、ちょっぴりコミカルに、なんだか壮大に、描く。実は、時をめぐる深~いイミがあるおとなの映画です。

『1秒先の彼』

あらすじは、こんなふう。

ハジメ(岡田将生)は、子どもの頃から、せっかち。何をやってもいつも1秒早い。50m走はフライングするし、お笑いをみても人よりワンテンポ早く笑い出す。タイミングがあわないのだ。だから写真も目をつむったものばかり。高校を卒業して郵便局につとめ、配達員になるが、ついたあだなは「ワイルドスピード」。度重なる信号無視とスピード違反で免許停止をくらい、いまは窓口業務の担当だ。恋愛は不得手。せっかちな性格が禍いしてか、例えば職場の新入社員から交際を申し込まれるが、26日間であっさりふられる。ひとことでいうと「残念なイケメン」クンだ。

そのハジメが勤める郵便局に、毎日のようにやってきて、切手を1枚だけ買い、私書箱宛の配送を依頼する生真面目そうな女子がいる。名前はレイカ(清原果耶)。彼女は何をやってもワンテンポ遅れる。テスト用紙に氏名を書き終わったころ、他の人は6問目ぐらいに進んでいる。結局大学もなかなか卒業できず7回生だ。趣味は父親の形見のカメラで写真を撮ること。バイト代は学費に消えるので、写真部の部室に住み込んでいる。どうみても、ちょっと変わっている彼女だ。

そんなふたりが、京都の町で遭遇する奇妙なアクシデント。そして、1日が消えてしまう謎……とくるのだが。これ以上はネタバレ、書きたいが書けない……。千年の古都なら起きてもおかしくない、それはそれはロマンチックでおかしみのあるファンタジー、だ。

元になった台湾映画の邦題は『1秒先の彼女』だけれど、このリメイク版は『1秒先の彼』。男女の設定を逆にしてしまったのだ。

宮藤官九郎によれば「台湾版のキャスティングは完璧すぎて、当たり前になぞっても新しいものは生まれないし、忠実なリメイクを作ってもしょうがないし、男女反転という強引な改変で、一気に世界が開けた気がします」。山下監督によれば「男女を反転させる、というアイデアが飛び出したとき、自然と“岡田将生”と“清原果耶”が頭に浮かびました」。せっかちで残念なイケメンのハジメくんに岡田を、ひたむきで芯があるけど不器用なレイカに清原を当てたことで、映画がうごきだした。

ほかのキャストも凝っていて。大人計画の荒川良々が謎のバス運転手役、伊勢志摩はいじわるな郵便局員。ハジメの両親役が羽野晶紀、加藤雅也。ラジオDJの声と写真屋の店主を演じたのは、この作品が遺作となってしまった笑福亭笑瓶。少年時代のハジメ役、どこかで見た顔だと思ったら『怪物』の子役、柊木陽太だ。

舞台を京都にしたことも、これまた魅力。監督によれば「京都人はせっかちなのにのんびり。その時間感覚も生かしたいと思った」とのこと。そんな日本ならではの特別な味付けと、随所にちりばめられた小ネタが、かなりおかしい。例えば、観たらクスリとする“パピコ”の使い方とか。氏名も漢字で書くと、ハジメ君は皇一(すめらぎ・はじめ)、レイカさんは長宗我部麗華(ちょうそかべ・れいか)。画数からして、それぞれのキャラが現われている。この「画数ネタ」も、いろいろでてくる。

「せっかく山下監督が撮るんだからと欲張って、人生の苦み、もどかしさ、おかしみなどのエッセンスを盛り込み、我ながらいい塩梅に変換できたと思います」と、宮藤は自信をのぞかせる。

台湾映画『1秒先の彼女』は配信などで観られるが、もしまだご覧になっていないのなら、この日本のリメイク版を先に観るのがオススメ。そのほうがオリジナルはこうだったのか、と種明かし的な楽しみがあるような気がしてマス。

文=坂口英明(ぴあ編集部)

(C)2023『1秒先の彼』製作委員会