夭折の映画作家ジャン・ヴィゴの全作品を4K修復版で公開中
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『アタラント号』 (C)1934Gaumont
29歳で3つの短編と1本の長編映画だけを遺してこの世を去るも、後世の映画作家たちに多大な影響を与え続けている伝説の映画作家ジャン・ヴィゴのすべての作品が現在、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで上映されている。すべて4K修復された素材による上映で、年末年始に時間のある映画ファン必見のプログラムになっている。
1905年に反政府運動の闘士の息子としてパリで生まれたジャン・ヴィゴは、当時は“不治に近い病”と考えられていた肺結核を患い、サナトリウムで療養生活を送るなどして過ごすも、映画づくりを志すようになり、パリの病院で知り合った撮影監督ボリス・カウフマンとコンビを組んで、1930年に初の短編『ニースについて』を完成させる。
翌年には短編『競泳選手ジャン・タリス』を手がけ、1933年には傑作短編『新学期 操行ゼロ』を製作。『…操行ゼロ』はフランス文化省の検閲で上映禁止になり(12年後に解除された。)、自身の体調も悪化していたが、初の長編映画『アタラント号』に着手する。ル・アーヴルと田舎町を結ぶアタラント号を舞台に、船長のジャンとジュリエットの揺れ動く心模様を描いた作品で、ヴィゴは撮影後に容態が悪化。同年にこの世を去った。
ヴィゴの生涯は短く、彼が遺した映画は4作品しかないが、情緒あふれる映像とユーモアのある展開が綴られるヴィゴ作品は映画ファンを魅了し続け、フランソワ・トリュフォーやエミール・クストリッツァ、アキ・カウリスマキ、ミシェル・ゴンドリーら多くの映画作家たちがヴィゴ作品への愛を語っている。
今回の特集はヴィゴの全作品をすべて4Kレストア版で上映するもの。どのフィルムもフランス国立映画センターの支援を受けてゴーモン社が修復を行なった。『アタラント号』は英国映画協会所有の35ミリプリントを参照しながら、チネテカ・イタリアーナ(ミラノにあるフィルム・アーカイブ)、ベルギー王立シネマテーク及びシネマテーク・フランセーズ(仏政府が支援する文化施設)にある素材で補完。短編3作品もゴーモン社が保有しているものだけでなく、欧州各国にある状態の良いプリントを集め、修復が行われている。
この世を去ってから80余年を経てもなお、映画ファンを魅了し続ける作品群は、全映画ファン必見といってよいだろう。
『アタラント号』
『ニースについて』
『競泳選手ジャン・タリス』
『新学期操行ゼロ』
シアター・イメージフォーラムで公開中
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