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福士蒼汰が夢を叶えられた理由「運がめぐってきたとき掴める自分でいること」

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福士蒼汰 撮影:友野雄

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Huluオリジナル「THE HEAD」Season2が2023年6月17日よりHuluで独占配信される。
南極の科学研究基地を舞台にしたSeason1は2020年に世界公開され、放送・配信国が公開当初の3倍の世界90カ国と地域に拡大するなど好評を博した国際連続ドラマシリーズの最新作だ。

Season2は、太平洋に浮かぶ全長150mの巨大貨物船を装った秘密研究基地・アレクサンドリア号を舞台に、善と悪がぶつかり合う震撼の事件をスリリングに描写。ある日、首のない死体が見つかったことをきっかけに、極限状態に追い詰められる人たちが真相に迫っていくサバイバルスリラーだ。

今回、メインキャストのひとりとしてエンジニアのユウト・ナカムラ役を演じるのは、唯一の日本人キャストとなる、福士蒼汰。

5月30日に30歳を迎えた福士は「20代のうちに海外作品に挑戦したいという夢があったので、29歳でその夢が叶い、すごくうれしかった」と、20代最後に撮影した今作への出演と公開を喜ぶ。初の海外作品について話を聞いた。

とてもやりがいがあり安心して参加できた

ドラマや映画や舞台と、引っ張りだこの福士蒼汰。どの作品でもひときわ輝く存在なのは、端正な顔立ちと凛とした佇まいだけではなく、多忙を極めるなかでも自己鍛錬を怠らない努力家だからこそ培われた人間力を発揮するからだろう。そんな福士は「THE HEAD」Season2への出演経緯をこう振り返る。

「今回はオファーをいただいたのち、ホルヘ・ドラド監督やプロデューサーの方々とまずオンラインでお話をさせていただいて、とても緊張しました。僕は今まで独学で英語の勉強をしてきたので、どこまで通用するのか不安にも感じていましたが、ユウト役を僕に託してくれたことが嬉しかったです」

晴れて出演が決まった福士は、Season1に出演し1と2ともにエンディングテーマを担当している山下智久からも助言をもらったそうだ。

「Season1で海外作品に初挑戦された山下さんは日本人ひとりですごいな、いいなと観ていました。ストーリーもスリリングでとてもおもしろかった。まさか2年後に、自分自身が出演することになるとは思っていませんでした。当時恐ろしい展開にハラハラしながら見ていたのですが、自分もあの物語の続きが起こる船に乗らなくてはいけない運命に(笑)。とてもやりがいがあるなと感じましたし、山下さんからも『いい監督とプロデューサーさんだから、安心してやっていいよ』とお話を聞いていたので、安心して参加できました」

海外はリアリティ重視、嘘がないように演じる難しさ

福士蒼汰が演じているのは、優秀なコンピューター・エンジニアのユウト・ナカムラ。Season1から続投する、天才生物学者アーサー・ワイルド(ジョン・リンチ)の依頼を秘密裏に手伝う役柄だ。

「ユウトはコンピューターに精通している青年で、白黒問わず、さまざまな仕事を受けながら大金を稼いで休む、というようなキャラクターです。明るい性格で、普段はビデオゲームをしている設定もある彼が、リアルにデスゲームのような環境に追い込まれたらどうなるか、ということを監督やアクティングコーチらと話しながら役を作っていきました。

ユウトはロジカルな思考の持ち主なので、誰かが殺されたら犯人はこういう面があるのかもしれない、こんな理由で可能性があるのはこのメンバーだ、と論理的に考える人だと、演じていて思いました。ずっと恐怖に怯えていたり、暴力的になったりする登場人物がいる中、ユウトはいつも冷静でいる印象です」

太平洋を航海中の巨大貨物船で首のない死体が発見され、隔絶された場所で逃げ場もなく動揺する研究員や乗組員たちを前に、その様子を観察するユウト。海外作品で芝居をするなかで、ユウト役を演じるにあたって、苦労したこともあったようだ。

「今回の作品を通して日本と違うかなと感じたことは、そのキャラクターにリアリティを求めるか、求めないか。日本はリアリティより、どちらかというと少し誇張したわかりやすいお芝居を要求されることもあるのですが、海外ではとにかくリアリティ重視なので、役作りをするうえで嘘がないように演じないといけない難しさがありました。

アクティングコーチとセッションして、いろいろなアプローチの仕方を教えてもらいました。たとえば、部屋の鍵を見つけてください、警備員役が見回りに来るので絶対にバレないように探してください、というお題のレッスンを受けました。リアル脱出ゲームのように恐怖を感じるアクティングレッスンをさせていただき、あまり日本にはないアプローチだと思いましたし、演じるうえでもその体験に助けられました」

役への新鮮なアプローチを重ねて、ユウトが形作られ、福士なりにプラスしたニュアンスもあったと言う。

「日本人のアイデンティティとして、僕にしかできない表現を自由に入れてほしい、と言われていました。1話でパソコンに向かってひとりごとを言うシーンでは、あえてユウトが日本語でつぶやいていますし、監督からの感情的になっているシーンだから日本語のほうがいいのではという提案を受けて、日本語で話している場面もあります」

お互いを知るコミュニケーションが楽しかった

海外作品ゆえに、現場では英語が主体となる。10カ国以上から参加した共演者たちとは、どのようにコミュニケーションを取っていたのだろうか。

「みなさん、いろいろな国から来ていました。スペイン人も、フランス人も、スウェーデン人も、イギリス人も、それぞれ何人かいて。でも、ひとりで来たのは、日本人の僕だけでした。みんな母国語で話す相手がいて、もちろん英語で話せる人もいますが、日本語が話せる人がいなくて、とくに最初の1カ月は孤独に感じることもありました。ただ、2カ月目に入りマドリードで撮影するようになった頃から、状況は変化していって。だんだんお互いの人柄がわかってくるので、よく会う人もいれば、たまにみんなでも会うといった感じで、少しずつチームができていきました」

孤独を耐えた先に待っていたのは、言葉の壁を超えた心の触れ合いだった。日本語が話せない共演者とは、工夫をしながら、心の距離を縮めていったようだ。

「英語がネイティブの方もいれば、そうではない方もいて、僕は後者のキャストと仲良くなることが多かったように思います。たとえば、ルノー船長役のティリエ・ゴダールさんはフランス人で、英語が得意ではないと言っていて、お互いに翻訳アプリを使いがら会話したり。この方は、渡部篤郎さんとフランスの舞台で共演したことがあるそうで、日本にも奥様と来たことあると聞いて。僕もパリ行ったことあるという話をするなど、たどたどしいながらもお互いを知ろうとするコミュニケーションを取ること自体が楽しかったです」

まるでくじらの中にいるような大型貨物船

Season2では、実際に本物の貨物船のほか、1200平米に及ぶ船内のセットなどでも撮影が行われた。大型作品だからこその印象的なところはあったのだろうか。

「アレクサンドリア号の屋外シーンは、スペインのテネリフェ島で、実際にある貨物船で撮影しましたが、驚くほど大きい船なんです。その貨物船に車が入る入口があるのですが、閉開する際ものすごく大きな音がして。まるでくじらが口を閉じたり開けたりするような、くじらの中にいる感覚になるほどでした。その貨物船を2カ月ほど借りて撮影していたのは、日本で僕は経験がなくて、スケールの大きさが印象的。しかも、実際の船を使っているので、オイルがたれているところがあって『触っちゃダメだよ』と言いながらも、みんなうっかりオイルが手についたことも(笑)」

日本とは異なる撮り方やスケール感を実感したという福士。撮影現場では、とくに経験したことのない手法もあったようだ。

「スタッフが完全にAチーム・Bチームと分かれていました。Aチームは1話から6話のすべてを撮るのですが、短いシーンや細かいシーンなどはBチームが撮っていて。メイクさん、衣装さん、照明さん、音声さんなどの撮影に関わるスタッフの方がまったく別になっていて、お互いの撮影スケジュールも知らないんです。Bチームには『本編で使われるかはわからないけど、こういうものをやってほしい』と依頼されて、エキストラカットを撮影することも。それが実際に使われていたり、使われていなかったり。日本にはあまりない習慣だと思いました」

夢を叶えるために確実なのは準備をすること

海外での長期間に及んだ撮影だったが、オフの日もそれなりにあったと言う。作品はサバイバルスリラーだが、撮影以外の場所では、和やかに過ごしていたようだ。

「オフの日には、台本を読んで過ごしていました。とはいえ、いろいろな国の方がいるということで、みんなでご飯を食べに行くことも多かったです。ただ、最初の頃は、プライベートではどこにいていいかわからなくなることも。キャストは同じホテルに泊まっていたので、ホテルの中にあるプールやジムに行くと誰かしらがいて「Sota、come here!」などと誘ってくれるんです。でも、打ち解けるまでの間は少し困ってしまうことも(笑)。2カ月目はようやく慣れて来て、自然に楽しめるようになりました」

そうして手に入れたかけがえのない経験は、未来への思いをより強くしたようだ。福士にとって海外作品への参加とは、より俯瞰で役者という仕事を鑑みた結果、目指すもののひとつとなっていった。

「今まで独学で覚えてきた英語や体作りなど継続することを第一にしながら、この作品のみで留まることなく、海外作品にもっと参加していきたいです。僕が20代で海外作品に参加したいと思っていた理由のひとつには、日本人の20代でも海外に挑戦できるんだと、後輩の役者たちに思ってもらえたら、より海外に目が向く人も増えるのではないかと考えて。それは日本の役者にとっていいことだと思うので、僕がそのパイオニアのひとりになれたらいいなという夢もありました」

常に志を高く持ち続けるその姿勢は、すでに多くの後輩たちの目標となっているに違いない。では、次はどのようなジャンルの海外作品に参加したいのだろうか。

「一番興味があるのはアクション作品です。僕がずっと取り組んできた英語と体づくりの両方を表現できるかなと。『忍者です』と登場するのも面白そう、セリフが少なそうなので英語を話せないかもしれませんが(笑)」と、ユーモアも忘れない。そもそも独学で英語を覚えてきたのも、いつか海外の作品に出る夢があったのかとたずねてみた。

「最初、英語に興味を持ったのは、中学校の英語の先生に発音を褒められたことがきっかけでした。そこからずっと勉強を続けてきました。10代で役者の仕事を始めてからは、仕事を通して英語が役に立つかもしれないと考えて。それからはずっと海外作品に挑戦することが夢でした」

夢を叶える力がある人は、ほんのひと握り。誰もが何かに憧れ、成功する場合もあれば、方向転換することもあるだろう。どうすれば、夢を叶えられるのだろうか?

「夢を叶えるために、確実に言えるのは、準備をするということ。準備していなかったら、絶対に夢は叶わないし、絶対に運もつかめない。通常は、準備していても、夢が掴めないこともある。ですが、準備していなかったら、もう絶対に夢は掴めないので、日ごろからすべきだと僕は思っています。運というものは、きっといろいろな人のまわりをグルグルとまわっていると思うんです。その運が偶然、目の前に来たときに、見逃してしまう人もいれば、見つけても手が届かない人もいて。運がめぐって来たそのときに、ちゃんと手を伸ばしてその運をキャッチできる人間であるかどうかは、普段から準備しているかどうかだと思います」

取材・文:かわむら あみり 撮影:友野雄

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<作品情報>
Huluオリジナル「THE HEAD」Season2

6月17日(土) Huluにて独占配信スタート(全6話)

公式サイト:
https://www.hulu.jp/static/thehead/

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