デヴィッド・クローネンバーグが新作のテーマ語る「有害で制御されるべき人体を探求したい」
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デヴィッド・クローネンバーグ(Photo: Caitlin Cronenberg)
デヴィッド・クローネンバーグが監督作「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」について語ったコメントが到着した。
ヴィゴ・モーテンセン、レア・セドゥ、クリステン・スチュワートらが出演した本作の舞台は、そう遠くない未来。人類は生物学的構造の変容を遂げ、痛みの感覚を失っていた。“加速進化症候群”のアーティスト・ソールが体内に生み出す新たな臓器にパートナーのカプリースがタトゥーを施し摘出する前衛ショーは、チケットが完売するほどの人気を博している。そんな中、政府は人類の誤った進化と暴走を監視するため“臓器登録所”を設立。そしてソールのもとに、生前プラスチックを食べていたという遺体が持ち込まれる。
クローネンバーグは本作のタイトルについて「技術や社会の変化によってもたらされる構造の変化や危機、その犯罪性と抑制の結果の“未来の犯罪”です。例えば30年前は電子メールが発達しておらず、ハッキング行為はありませんでしたが、現在では犯罪として存在しています」と解説する。
そして「この事実に刺激され、私はいつものように、人間の体について考え始めました。というのも、常々、人間の体こそが人間とは何かを定義し、私たちの根底にあるものだと考えてきたからです」と述懐。「生活や技術が原因となって、人体は繊細に、時に大胆に変化を遂げています。そして、進化する人体と、それに伴う犯罪を描くことができると確信し、危険性をはらむ人体に対する社会の反応を描きたいと思いました。有害で制御されるべき人間の体を探求したい、これが本作のテーマです」と語った。
また「本作でも、現在進行中の気候変動などの地球の変化とその対処法が根底にあります。プラスチックを問題視し解決しようと熱心になるキャラクターもいますが、映画の本質ではありません。現在を起点にする考えはキャリア当初から変わっていませんし、芸術とは何かという見解にもつながります。ですから『危険なメソッド』のように100年以上前の設定でも、メインテーマは『今』と『人間の現状』に関連しています」と説明する。
「作品で扱う問題の解決策があるかないかは関係ありません」と話すクローネンバーグ。「現状を見ながら、人間とは何か、その知覚や限られた命について理解しようとしています。映画を通して観客に問いかけるのは、海岸で貝殻を拾って『これを見てみて! すごいでしょう』と見せることと似ています。その生物がどうやって生まれたかの答えはわからないけれど、好奇心があるんです。ほかの人が研究する時間がなかったり、研究しようと思わないことを、私は追求し作品にしています」と明かした。
「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」は8月18日に東京・新宿バルト9ほか全国で公開。
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