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【ライブレポート】NakamuraEmiをゲストに迎えた『佐々木亮介弾き語り興行 “雷よ静かに轟け” 第二夜』

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『佐々木亮介弾き語り興行 “雷よ静かに轟け” 第二夜』2023年6月24日(土) 浅草フランス座演芸場東洋館 Photo:新保勇樹

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a flood of circle 佐々木亮介(Vo/Gt)による弾き語り興行"雷よ静かに轟け"。昭和26年開業され、映画「浅草キッド」の舞台にもなった『浅草フランス座演芸場東洋館』で行われる同イベントの“第二夜”のゲストは、シンガーソングライターのNakamuraEmi。お互いのリスペクトと対決感がせめぎ合う、豊かで生々しいステージが繰り広げられた。

梅雨の合間の晴れ間も広がったこの日、浅草は国内外の観光客でごった返していた。そんななか、「浅草フランス座演芸場東洋館」に足を運んだ観客のなかには、浴衣姿の女性も。会場内の少し湿った空気、会場のなかに貼られた歴代の芸人たちの写真を含め、独特の風情がたっぷりと感じられた。

最初に登場したのは、NakamuraEmi。ギタリストのカワムラヒロシ(Nakamuraの楽曲のアレンジやトラックメイクなども手掛けている)とともに真っ白な衣装でステージに上がった彼女は、まるで落語家のように正座で挨拶。自らの半生と〈なりたい自分〉になろうとする姿勢を刻んだ「Rebirth」からライブをスタートさせた。〈私の心の景色をここで叫ぶんだ。佐々木亮介と叫ぶんだ〉というフレーズに対し、客席から大きな拍手が送られた。

NakamuraEmi

さらに「小さなお子様から見たら私は大人ですが、まだまだ大先輩がいて。そんな“中間”な私が書いた曲です」という言葉から「大人の言うことを聞け」、「次の曲は佐々木さんが“好きなんです”と言ってくれた曲です」という「1の次は」などを披露。シェイカーやタンバリン、ウィンドチャイムを鳴らしながら、歌詞に濃密なグルーヴを与えるNakamuraの歌にグイグイ引き込まれる。

ライブ中盤では、ニューシングル「究極の休日」(7月8日リリース/8cm CD&デジタル)にも収録される「WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント~」(H Jungle with t)」のカバーも。アコギと歌によるアレンジ、自らの経験や感情を織り込んだボーカルによって、原曲とはまったく違った印象が伝わってきた。手を挙げ、体を揺らし、手拍子しながら聴き入っていたオーディエンスも、“シンガー・NakamuraEmi”の魅力を実感したはずだ。

エモーショナルにして抒情的な歌声とともに“明日と自分を信じて、己の山道を登っていけ”と聴く者を鼓舞する「YAMABIKO」で大きな感動を生み出した後は、未発表曲「一円なり」。小さい頃に習っていたソロバン(の先生)の思い出、今現在の自分を対比させたこの歌は、“極めて私的な経験を刻んだ歌が、幅広いリスナーの心を捉える”彼女の音楽性を改めて示していたと思う。エンディングで本物のソロバンを取り出し、玉を弾いてみせるパフォーマンスも心に残った。

「これからどんなふうに世の中が変わっていっても、今回、佐々木さんが思いを込めて誘ってくれたみたいに、人間の心同士がいちばん大事だなって思います」というMCに導かれたのは「投げキッス」。曲の後半でa flood of circleの「月夜の道を俺が行く」の一節を歌い上げ、観客は大歓声と大きな拍手で応えた。

そして、佐々木亮介。アコギをかき鳴らし、“Oh!Yeah!”と一声。「どこにも故郷のない俺はーー佐々木亮介です、よろしくどうぞ。どこにも故郷のない人は 土に還るまでが遠足です」という歌い上げる。「花」。冗談にもならないような出来事ばかりが起こる世界のなかで、生きること意味、歌うことの意義とは? そんな根源的なテーゼと向き合いながら、それでも世界は素晴らしいと叫び、「命がけで生きていくだけ」と誓う。佐々木亮介というミュージシャンの本質をダイレクトにぶつけるようなステージに心と目を奪われる。

佐々木亮介

ギターを響かせながら、自由に発せられる言葉はトーキング・ブルース、もしくはヒップホップのフリースタイルのよう。「"雷よ静かに轟け"第二夜がはじまってる。アイム佐々木亮介。挑戦者のタームがはじまる」「あんたが何人でもいい、宇宙人でもいい。俺があんたをぶち上げる」「声とギターだけの勝負してえ」「楽屋で3人でサクランボ食べました。うれしいぜ美味しいぜ楽しいぜ」というラインを重ねながら、「だけど俺は挑戦者。紹介します。ギター俺!」とギターソロへ。この瞬間、この場所でしか生まれない“歌”はまさにライブそのものだ。

「俺が俺でしかいられないことにがっかりしてる暇はねえ!」とシャウトし、「I'M FREE」へ。社会的価値、自らの生き方、自由の意味につながる歌を鋭く突き刺すようなパフォーマンスは、観る者に「あんたはどうだ?」と問いかけているようだった。

続いては佐々木のソロ楽曲「We Alright feat.三船雅也」。「どんだけ間違っても/どんだけはみだしても/味方でいるぜ」というサビのフレーズはオフマイクで歌唱。どんだけ激しく叫んでも、豊かでしなやかな歌の魅力はまったく損なわれることがない。これもまた、佐々木亮介の磁力だろう。

緑茶ハイを飲みながら、徐々にリラックスしてきた佐々木。「これ、初めて弾いたギターなんですよ。じいちゃんがくれたんですけど」とステッカーだらけのアコギを持ち、「俺のギターが8000円でも80万円でも8000万円でも、誰にも売らねえ!」という言葉から「くたばれマイダーリン」。そのまま客席に降り、オーディエンスのすぐそばで「かわかわ」(THE KEBABS)をシェアする。(コロナによる規制もなくなる)きわめて近い距離で生歌――リアルな感情と生々しい肉体性が刻まれたーーを体感できるのも、“雷よ静かに轟け”の楽しさだ。

中島みゆきの「ファイト!」のカバーも強く心に残った。まるでポエトリー・リーディングのように歌詞のひとつひとつを丁寧に伝えるステージングは、どこか演劇的。あまりにも有名なサビの一節は、ロックンロールの力を信じ抜き、世界をが少しでも良い方向に動くことを願い続ける佐々木亮介の生き様と強く重なっていた。

もっとも強い衝動を感じたのは、「白状」だった。何も上手くいかない、先の展望も見えない。だけど俺は、くたばるまで歌い続けるんだ。全身全霊で“歌うこと”“生きること”を体現する佐々木の姿から目が離せない。ソングライター、シンガーとしての核をそのまま感じられるようなステージはまちがいなく、この興行以外では体感できないだろう。

「月夜の道を俺が行く」を披露した後、NakamuraEmiが登場。「すごくよかった。私もあんなふうにライブしてみたい」(Nakamura)「かっこよかったです。(Nakamuraのあとで)演奏したくなかったです」(佐々木)というトークを挟み、「かかってこいよ」(NakamuraEmi)をセッション。二人が声を合わせた〈人間らしい匂いのところは 決まって花が咲いてるんだ〉というラインは、人と人の思いが交差し、素晴らしい音楽につながるこのイベントの在り方を端的に示していたと思う。

鳴りやまない拍手に導かれ、再び佐々木が舞台へ。「Honey Moon Song」をロマンティックに響かせ、“第二夜”は終幕を迎えた。

"雷よ静かに轟け"第三夜は、同じく「浅草フランス座演芸場東洋館」で9月30日(土)に開催。情緒と情熱に溢れた唯一無二の舞台をぜひ、現地で味わってみてほしい。

Text:森朋之 Photo:新保勇樹

<公演情報>
佐々木亮介弾き語り興行 “雷よ静かに轟け” 第二夜

2023年6月24日(土) 浅草フランス座演芸場東洋館

セットリスト

■NakamuraEmi
01. Rebirth
02. 大人の言うことを聞け
03. 1の次は
04. スケボーマン
05. WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント〜 ※カバー曲
06. YAMABIKO
07. 一円なり ※未発表曲
08. 投げキッス

■佐々木亮介
01. 花(a flood of circle)
02. 浅草フランス座演芸場東洋館 Blues
03. I'M FREE(a flood of circle)
04. We Alright(佐々木亮介)
05. くたばれマイダーリン(a flood of circle)
06. かわかわ(THE KEBABS)
07. セイントエルモ(a flood of circle)
08. ファイト!(中島みゆき)
09. 白状(a flood of circle)
10. 月夜の道を俺が行く(a flood of circle)

■Session
かかってこいよ(NakamuraEmi)

■アンコール
Honey Moon Song(a flood of circle)

<ライブ情報>
佐々木亮介弾き語り興行 “雷よ静かに轟け” 第三夜

2023年9月30日(土) 浅草フランス座演芸場東洋館
OPEN19:00 / START19:30

出演:佐々木亮介(a flood of circle)ほか

★7月2日(日) 23:59までファンクラブ先行実施中
http://sp.arena.emtg.jp/afloodofcircle/

関連リンク

a flood of circle公式サイト:
http://afloodofcircle.com/

Nakamura Emi公式サイト:
https://www.office-augusta.com/nakamuraemi/

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