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加藤拓也「友達の話を聞きに行く感覚で観にきて」 新作『いつぞやは』執筆のきっかけは相手の死後も残るSNS上の会話への違和感

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今年岸田國士戯曲賞を受賞するなど、気鋭の劇作家・演出家として注目を集める加藤拓也。キャストには、加藤作品初参加となる窪田正孝ら実力派6人を迎え、新作オリジナル『いつぞやは』を上演する。癌を患い、死を意識せざるを得なくなった男・一戸。かつての劇団仲間である松坂のほか、友人や同級生たちと再会を果たしていく中で、一戸にある変化が……。間もなく開始される稽古を前に、作品にかける想いを加藤に語ってもらった。

亡くなった人の会話が残る。それが不思議な感覚だなと

――別のインタビューで、「ホンを書くもとになるのは自分の衝動」というお話をされていました。この『いつぞやは』に関しては、どんな衝動がもとになっているのでしょうか?

友人や知り合いが亡くなっても、SNSで繋がっているとその履歴って残るんですよね。フォローを外すのも難しいし、相手のアカウントが残っているのもちょっと辛い。亡くなってもういないはずの人の会話が、ある空間には生きている言葉として残っている。それが不思議な感覚だなと感じたからです。

『いつぞやは』チラシ

――本作の主人公である一戸はステージ4の癌患者ですが、死に直面する原因になぜ癌を選ばれたのでしょうか?

祖父も癌で亡くしていますし、亡くなるまでにいろんな意味でできることがある病気と思っていて、この作品で言えば一戸は、なにかを残してやろうって気持ちでもないですが、ステージ4だとわかったあとにSNSを始めます。

――死を前にしながらも、一戸の言動には常に淡々とした、自分の現状を客観視しているような印象を持ちました。そういう状況に置かれた場合、もう少しパニックになってしまう人もいるのではないかと思ったのですが……。

彼がやっていることは、いろんな理由をつけて、死を受け入れようとしていることで、心の奥底では、恐らく死ぬことを受け入れられていない。でもどうしても受け入れなきゃいけない状況に追い込まれた時、受け入れるための理由を全部自分で作っていかないと、それこそパニックになってしまうから、やりたいこともやったし、悪いこともやったし、もしかしたらみんなが70歳、80歳で経験するようなことすらも、自分はこの年齢で経験したんだと自分に言い聞かせています。ひとり分の人生はやり切ったんだと。

――セリフの中には「お金」というワードも多く見られます。病気、就職、結婚、妊娠など、この世代が抱える貧困の問題が、作品の底流に漂っていると感じました。

そうですね。現実的に癌と暮らしていくことってすごくお金がかかるものですし、それ以外にも僕らの前後の世代にはお金に困っていて、都内で子供を育てるとか、僕らの感覚だと無理だとも思うし、生きるのにお金がかかり過ぎやしないかと思います。

これからも健康的に演劇を続けていくことが目標

――主人公の一戸を演じるのは、加藤さん作品初参加の窪田正孝さんです。

窪田さんのひとつの作品に取り組む姿勢みたいなものを傍から眺めていると、ストイックで、ひとつの役を立ち上げる大変さを体現されていて、ご一緒できることをとても楽しみにしています。これは窪田さんだけでなく全員に言えることですが、ひとつの作品にちゃんと真摯に向かってくれる人たちが集まっていることが、非常に嬉しいし、ありがたいなと思います。

『いつぞやは』出演者(上段左から) 窪田正孝、橋本淳、鈴木杏 (下段左から)夏帆、今井隆文、豊田エリー

――窪田さん以外にも実力派ぞろいですが、中でもご一緒される機会が多いのが橋本淳さんです。役者としてどんなところに惹かれるのでしょうか?

良い意味で匿名性の高い俳優だと思っています。また、僕の書いてる本のせりふって簡単にしゃべれちゃうんですけれど、でもそうするとお客さんにとって大事な情報がスルスルと抜けていってしまうこともあって、でも橋本さんはそれをちゃんと伝えることができる。その時、その言葉を、どういう身体の状態でしゃべればいいのか、本当によく研究していますし、巧さがあると思います。

――ちなみに加藤さんの稽古場の雰囲気ってどんな感じなんですか?

始まるのも遅いし、終わるのも早い。好きなランチを食べに行ってから稽古ができるし、晩御飯をちゃんと食べに行ける時間までには終わります。

――加藤さんの作品は、のぞき見するような感覚が魅力でもあります。シアタートラム(※東京公演会場)サイズの劇場はまさにぴったりですね。

好きな大きさの劇場ですね。衣擦れの音とかがリアルに聞こえる空間は好きです。お客さんには変に身構えたりせず、友達の話を聞きに行く、くらいの感覚で観に来てほしいと思います。もちろんお話として真摯に受け止めてもらう部分も含めて、演劇を楽しんでもらえればいいなと思っています。

――今年節目の30歳を迎えられます。今後の展望は?

30という年齢には特になにもないですが、どうにか健康的に演劇を続けていきたいという想いはあります。先ほど言った稽古時間のこともそうです。40になっても健康でいたいっていうのがひとつの目標ですね。

――そんな40歳と言わず、もっと長く…。

じゃあ80ぐらいまで? 健康に、長く続けられるように頑張りたいです。

取材・文:野上瑠美子

<公演情報>
『いつぞやは』

【東京公演】
2023年8月26日(土)~2023年10月1日(日)
会場:シアタートラム

【大阪公演】
2023年10月4日~2023年10月9日(月・祝)
会場:森ノ宮ピロティホール

公式サイト
https://www.siscompany.com/produce/lineup/itsuzoya/

★7月1日(土) AM10:00より、【東京公演】チケットの一般発売直前先行を受付開始!
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2344244

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