「これまでの人生で感じたことのない喜び」尾上松也演出の新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』上演中
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新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』より、足利義輝(尾上右近)、三日月宗近(尾上松也)
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すべて見る「刀ミュ」という呼称のミュージカル『刀剣乱舞』、あるいは「刀ステ」という愛称のストレートプレイの舞台『刀剣乱舞』など数多のファンに親しまれ愛されているコンテンツ「刀剣乱舞」が、今度は新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』となって、7月2日(日) より東京・新橋演舞場にて上演中だ。その初日前に、尾上松也、尾上右近、中村鷹之資、中村莟玉、上村吉太朗、河合雪之丞が登壇した会見と公開舞台稽古が報道陣に公開された。
歌舞伎版の「刀剣乱舞」も「刀ミュ」や「刀ステ」と同様に、刀剣に宿る付喪神が刀剣男士となり歴史の改変を企てる「時間遡行軍」という敵と戦う大人気シミュレーションゲーム『刀剣乱舞ONLINE』を原案としている。歌舞伎化にあたっては、それを下敷きに、室町幕府の13代将軍の足利義輝が討たれた事件“永禄の変”を大胆に脚色し、三日月宗近、小狐丸、同田貫正国、髭切、膝丸、小烏丸の六振りの刀剣男士の存在が足利義輝の人生に如何に影響を与えたのかを史実に寄り添いながら、時にはダークに、時には煌びやかなファンタジーに仕立て上げている。
そんな舞台の初日前会見で初演出も務めた三日月宗近役の松也は「1ヶ月間お稽古をしてきて、みなさんに僕の考えていることを稽古場で具現化していただきながら、徐々に立体的なシーンになっていく喜びは、これまでの俳優人生で感じたことがありませんでした。俳優として板の上に立った時には気づかなかったことが学びとなって、得るものがたくさんありましたね。出演者とスタッフのみなさんに感謝したいです」と感想を述べた。その言葉を受けて足利義輝/小狐丸役の右近は「ご自身が俳優でもあるので、僕ら俳優を信じてしっかりした関係を築いた上で演出して下さる素敵な演出家だと思いました」と松也への信頼を寄せ、小烏丸役の雪之丞は「松也さんは歌舞伎以外にストレートプレイやミュージカルにも出演されて、そういった経験を活かした演出をされたと思います」と語った。
歌舞伎の「時代物」といった古典の要素を感じさせながら、三味線を使った義太夫や「ツケ」を入れた立廻りなど歌舞伎の手法と「刀ミュ」や「刀ステ」の世界観のエッセンスを上手にミックスして、古典と現代という時代を行き来しながら、テンポよく丁寧にシーンを見せていく演出は見応え十分で、松也の演出家としての才能の片鱗が伺える。
演劇の新時代の幕開けを告げるような本作には、歌舞伎のテーマのモメントになる、男と女、親子や主従関係、階級と個人、それらの「間」に流れる運命の悲劇と儚さや、日本の伝統芸能に内在する無常観や独特の美意識だけでなく、この広い世界の未来を愛でようという現代的で世界共通のポジティブなメッセージが綺麗なグラデーションを描きながら通底している。歌舞伎の様式をビジョンとして表出させるだけでなく、現代演劇の本質をも射抜き、今を生きる我々の揺れ動く内面がきちんとフォーカスされているので、どのキャラクターにも感情移入しやすい。
映画やTVドラマは観慣れているが、初めて舞台を観劇する人にとっても、演劇でしか味わえない感動を覚えるはず。もちろん、フレッシュな俳優陣が織りなす緻密に構築されながらも熱量の高い芝居のおかげで、「刀ミュ」や「刀ステ」にあまり触れてこなかったけれど、歌舞伎を頻繁に観劇する演劇のファン、または歌舞伎を観劇したことがなくても、舞台版の『刀剣乱舞』や漫画などが大好きな方にとっても十分に楽しめる窓口の広いウェルメイドな舞台に仕上がっている。
本公演は、7月27日(木) まで新橋演舞場にて上演。千穐楽公演はライブ配信も予定している。
取材・文・撮影:竹下力
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対象公演:7月6日(木) 16:30開演 詳細はこちらから
その他チケット情報はこちら
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2343243
ライブ配信情報
https://www.dmm.com/digital/stage/-/theater/=/name=kabuki-toukenranbu/
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