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長塚圭史ら『モグラが三千あつまって』稽古場に、新国立劇場バレエ団プリンシパル・米沢唯が潜入

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新国立劇場演劇『モグラが三千あつまって』稽古風景 撮影:田中亜紀

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長塚圭史が上演台本・演出を手がけ、夏休みシーズンに東京・新国立劇場にて上演される「こどもも大人も楽しめるシリーズ」の最新作、『モグラが三千あつまって』。長塚はこれまでも同劇場で『音のいない世界で』(2012年)、『かがみのかなたはたなかのなかに』(2015年・17年)、『イヌビト ~犬人~』(2020年)などで子どもと大人に向けた作品を発表してきたが、今回は武井博の児童文学を原作に、振付を近藤良平、音楽を阿部海太郎に託した。劇中では南の海に浮かぶ3つの島を舞台に、食料のタロイモをめぐって争いを繰り広げるモグラ族、イヌ族、ネコ族の姿が描かれる。

7月14日(金) の開幕を約20日後に控えた6月下旬、ぴあアプリ編集部は新国立劇場バレエ団プリンシパル・米沢唯による本作の稽古場訪問に同行した。『モグラ〜』と同じ7月に予定されている「新国立劇場 こどものためのバレエ劇場2023 エデュケーショナル・プログラム『白鳥の湖』」において主演のオデット(白鳥)・オディール(黒鳥)を務める米沢に、稽古からどんなインスピレーションを得たか尋ねてみると──。

新国立劇場バレエ団プリンシパル・米沢唯

長塚圭史・阿部海太郎が追求する、キャラクターとしての自然な反応

左から)音楽の阿部海太郎、振付の近藤良平、上演台本・演出の長塚圭史 撮影:田中亜紀

モグラが3000匹も登場する物語ながら、出演者はたったの4人──。観客を劇世界へいざなうキャストには吉田美月喜、富山えり子、小日向星一、栗原類が名を連ねる。稽古前には、ストレッチやウォーミングアップ、スタッフとの小道具確認、台本を熱心に読む者など、それぞれに稽古へと備える。

定刻になると、稽古は発声練習から始まった。唇を震わせながら行うリップロールや、動物の鳴き声を彷彿とさせる「ウォウウォウ」をはじめ、「フィー」「ぬぉんぬぉん」といった多様な音を用いる。表情筋を大きく動かしながら笑顔や泣き顔をつくったり、口の前に指を当て息の漏れ具合を確認したり、各自がそれぞれ「効果」を意識しながら基本動作を繰り返している様子が伝わってきた。

次に行われたのは、音楽の阿部海太郎による歌稽古だ。阿部はまず「動きなし」で各ナンバーを確認し、調整後に「動きあり」で同じナンバーを繰り返し稽古した。こだわっていたのは、キャラクターとしての自然な動きと歌声を両立させること。キャストがそれぞれ修正点を反映すると魅力的なシーンに変貌を遂げ、阿部も「すごくいいですね!」と褒め称えた。イヌ族を退治しようとするモグラ族の知恵者マチェック役の吉田は、戦果を澄んだ声でひたむきに歌い上げる。富山は落ち着きのある低音で、度胸あるモグラ族のバンゲラ親分を体現した。

新国立劇場演劇『モグラが三千あつまって』稽古風景 撮影:田中亜紀
新国立劇場演劇『モグラが三千あつまって』稽古風景 撮影:田中亜紀

特筆すべきは、四方の客席が中央にある円形ステージを取り囲む美術セットだろう。円形ステージの下もアクティングエリアになっており、ウクレレや小さなドラムセットなど楽器を仕込んだセンターステージの中でキャストが演奏する場面も見受けられた。イヌ族やネコ族の襲来から身を守るために「地下都市をつくろう」と提案するモグラ役の小日向は、はじくと高い音が出るハープのような楽器、鈴、吹き戻し(笛)を次々と繰り出しながらセットの中をかがんで駆け回る。

新国立劇場演劇『モグラが三千あつまって』稽古風景 撮影:田中亜紀
新国立劇場演劇『モグラが三千あつまって』稽古風景 撮影:田中亜紀

その後に行われた芝居稽古(小返し)では、長塚の演出が光った。論点は、イヌ族が掘り起こしたタロイモが無防備に積み上げられているのを「モグラ族の罠ではないか」と訝しく感じているネコ族の様子をどのように表現するか。長塚は「目の前で起こっている事態が都合が良すぎて怪しすぎる、と反応すればいい」とアドバイス。ネコ族ガンス隊長役の栗原は真摯に耳を傾けていた。

米沢唯「細部にこだわることで『白鳥の湖』にもリアリティを」

キャストと同じくらい、長塚の言葉に熱心に耳を傾けていた米沢。もともと演劇が好きで、所属する新国立劇場で上演された『音のいない世界で』『かがみのかなたはたなかのなかに』『イヌビト~犬人~』を見届けている長塚作品ファンでもある。演劇の稽古を見学したのはこれが初めてらしく、「すごく楽しかったです!」「ずっと観ていられる」「一日中、稽古場にいられると思いました」と興奮しきりだった。

新国立劇場演劇『モグラが三千あつまって』稽古場を訪れた米沢唯

「目線をどのタイミングでどのように動かすか、セリフをどんな間でどのように発するか、細部にこだわることでリアリティが生まれるのは、バレエにも通じます」と『モグラ〜』稽古見学を経ての気づきを口にする。今夏の『白鳥の湖』ではストーリーをまっすぐ受け止める子どもの観客やバレエ鑑賞初心者が多いぶん、「お客様を劇世界に没入させるだけのリアリティを追求しないと」と背筋を伸ばしていた。

取材・文:岡山朋代

■新国立劇場の演劇『モグラが三千あつまって』チケット情報
https://t.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=2306579&rlsCd=005&lotRlsCd=

■こどものためのバレエ劇場2023 エデュケーショナル・プログラム「白鳥の湖」チケット情報
https://t.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=2307873&rlsCd=002&lotRlsCd=

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