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隼太からHAYATAへ 第10回 ミッションは企業の理念と未来を感じさせる写真、竪山隼太が若き起業家たちを撮る

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Revieの代表取締役CEOである中沢弘樹さん(左)と竪山隼太。(撮影:平岩享)

俳優の竪山隼太が、もう1つの夢であるカメラマンへの道を目指す本企画。プロカメラマン・平岩享の指導のもと、第1章では竪山と親交がある俳優たちが被写体となり、それぞれの魅力を引き出す撮影に挑んだ。第2章ではより実践に近い形で、竪山にとって初対面の相手、初めて訪れる場所での撮影に臨む。

今回の被写体は“起業家”。人物自体の魅力はもちろん、会社の理念や未来を感じさせるような写真はどうやったら撮れるのか? 取材当日、いつもより緊張気味の面持ちで現れた竪山と、品川の高層ビルにあるオフィスを訪ねた。なおこの日、師匠・平岩と竪山がどことなく“ふたごコーデ”なのは、「たまたま」だったらしい。

取材・文 / 熊井玲 

初めて出会う、スタートアップの人たち

「スタートアップの人たちを撮影したら面白いのでは?」と最初に提案したのは平岩だった。そもそも平岩は、これまでに雑誌連載や会社案内などで起業家の撮影を多く行っており、若い起業家や投資家たちとのつながりも深い。一般人ではあるが、まだ世にないものを生み出し、それをプレゼンする能力に長けた起業家たちとの仕事に、平岩はクリエイティブな刺激を感じ、竪山にもぜひ出会わせたいと思ったようだ。今回は、そんな新興企業の1つ、株式会社Revieのスタッフを被写体にした撮影に挑む。

ただ、相手は最先端のアイデアを形にしようとしている人たち。会社の公式サイトを見ると「すべてのお客さまに最高に“刺さる”顧客体験を」とあるが、実際にどんな仕事をしている会社なのだろうか。事前の打ち合わせで、竪山も平岩に「Revieさんって、どんな会社なんですか?」と質問するも、「世の中にあったら良いなというものを、テクノロジーを使って作ろうとしている人たちで……」と平岩の返答も少し歯切れが悪い。でも「とにかく気持ちのいい人たちだよ!」という平岩の推しの一言を頼りに、オフィスへ向かった。

仕事を楽しんでいる4人、その魅力をどう伝えるか?

Revieのオフィスは、品川駅前の高層ビルにあるスタートアップ企業を対象としたインキュベーションオフィス・SPROUND内にある。ここには常に20くらいの“企業の芽”が集っているそうで、総合受付に到着するとすぐにRevieの代表取締役CEOである中沢弘樹さんが現れ、竪山と平岩を迎え入れてくれた。中沢さんに続いて取締役COOの佐竹佑基さん、マネージャーの角隆一さん、テックリードの岸本陽大さんも現れた。“起業家”という言葉が与える固いイメージとは打って変わって、大学生のような爽やかな笑顔を見せるRevieの面々。竪山が緊張気味に自己紹介すると、中沢さんはさりげなくさまざまな話題を振って、竪山の緊張をほぐしてくれた。

中沢さんによれば、Revieは2021年に立ち上げられた会社で、「消費者向けにサービスを提供しているBtoC企業向けのサービスを展開しています。海外の最先端企業がやっているようなパーソナライゼーションを、ほかの企業さんでも簡単に実現できるようなソフトウエアを提供しています」とのこと。4人のメンバーがそれぞれの得意分野を生かして、理想を形にするため日夜奮闘している。

今回は、企業の公式サイトに使用される想定で、スタッフの集合写真と、各人のプロフィール写真の撮影に挑む。簡易スタジオを設営すべく、オフィスの片隅を間借りして、竪山と平岩は撮影の準備を始めた。時折、平岩の撮影現場でアシスタントをすることもある竪山は、慣れた手つきで準備を進め、ライティングの準備を慎重に始めた。その間、Revieの4人は打ち合わせスペースの一角で会議を始めた。が、近くのテーブルで淡々と打ち合わせしているほかの企業に比べて、打ち合わせと言いながらRevieのテーブルは笑顔が絶えない。まるでレジャーの計画を立てているような和やかな空気で、“仕事の話”をしている。その様子を見ていると、平岩が今回の被写体に彼らを推薦したのに納得がいった。

いよいよ撮影がスタート。「まずはソロカットから」という平岩の声に、4人はジャンケンで撮影の順番を決めた。ちなみにソロ撮影を待つ間、ほかのメンバーからその人のパーソナリティについてもこっそり教えてもらった。

まず撮影に臨んだのは岸本さん。寡黙な印象の岸本さんの笑顔を引き出そうと、竪山は「岸本さんは何が好きなんですか?」とシャッターを切りながら質問する。と「アイドルですかね……」と岸本さん。すかさず竪山が「誰が好きなんですか?」と問いかけると、「ももクロです」と言いながら岸本さんの表情が柔らかくなった。その瞬間をのがすまいと、竪山はすかさずシャッターを押す。また、着ていた黒のジャケットを一度脱いでもらうと、きっちりした印象がよりソフトに。ポーズも、腕組みを解いてよりラフな状態に変化していった。

そんな岸本さんを角さんは、「仕事の面では最強のエンジニア。パーソナリティの面で言うと、誰に対しても、水のように(笑)フェアな人ですね」と紹介する。中沢さんも「エンジニアとしてはトップオブトップ」と岸本さんを称賛しつつ「でも彼は、実はとても面白さを大事にする人(笑)。会社の雰囲気を明るくしてくれる良いメンバーです」と笑顔で語った。

続けてカメラの前に立ったのは中沢さん。「何が好き?」という竪山の質問に、「『ワンピース』のルフィが好き。『ワンピース』がやりたくて起業しました!(笑)」と即答し、中沢さんはその後もずっと笑顔を絶やさない。柔らかな表情のカットを抑えた後、今度は代表取締役CEOとしてのキリッとした表情のカットも撮影。

笑顔のときに比べて、聡明な印象がグッと強まった。大学時代からの付き合いだという佐竹さんは、中沢さんについて「ビジネス側もエンジニア側も両方できて、バランスが取れている。引っ張っていってくれる、情熱を持っている人ですね」と熱く語る。角さんは「本気で社会を変えたいと思っている人。自分の考えを伝えてくれるし、でも相手の話も聞いてくれる、とてもリーダーシップがある人です」と信頼を寄せた。

3番目は角さん。少し照れながらカメラの前に立つ角さんに、竪山の背後から他3人が野次を飛ばす。「やりにくいよ!」と照れながらも、角さんの表情がどんどん和やかに変化していく様を竪山はしっかりと抑えた。

そんな角さんの印象を、「ピュアなところが魅力。そこが僕らからもお客さんからも愛される存在ですね」と佐竹さん。岸本さんもそれに頷きつつ「自分が思ったことに対して嘘をつかず、『違う』と言える勇気がある人です」と続けた。

最後は佐竹さんが登場。「目力がありますね!」と、カメラを構えた竪山がまず印象を述べると、その目尻がキュッと下がりさらに柔らかい印象になる。しかし「次はキリッとした感じで」と竪山がリクエストすると、寛容さを感じさせる深い表情でそれに応えた。

佐竹さんに対し中沢さんは、「ビジネス面で頼りになる、背中を預けられる存在」と全幅の信頼を置く。また彼の明るさは会社にとっても重要なポイントだそうで、その点については角さんも「非常に明るくて人をニコニコさせる人。のびのびと仕事ができる環境を作ってくれます」と太鼓判を押した。確かに佐竹さんには何か人をリラックスさせる力がある人で、そんな懐の深さが、たった数分の撮影時間にも伝わってきた。

ソロ撮影を終えた竪山は、今撮ったものをカメラ上で確認しながら、「撮れている、とは思います……」と少しだけ不安げな様子を見せる。これまでのように、被写体の動きや空間の面白さを生かす撮影と違い、真っ白な背景、限られたポーズで撮るポートレートに、難しさを感じたようだ。

構図の違いで、ストーリーが見えてくる

続けて4ショットの撮影へ。4ショットはオフィス内のいくつかの場所で撮影された。まずはガラス扉が印象的な空間で、全員ジャケットを脱ぎ、白シャツで撮影。全員が同じ、ポケットに手を入れたポーズから、竪山の指示でそれぞれ異なるポーズへと変化していく。その後、平岩のアドバイスで4人が少し間を空けて立つ構図に。すると、先程の集合カットとは異なり、4人それぞれのスタンスがはっきり浮き立つように感じられた。ここで竪山から(撮影にノッてくると恒例の)「うおー! 楽しい!」の一言が出て、「めちゃくちゃカッコいい!」と言いながら、竪山はシャッターを切っていった。

そして次の場所へ移動しようとしたとき、「ちょっと待って! この扉の枠にぎゅっと入ってもらうと……」と平岩がアドバイスし、扉の枠に4人が収まるような構図を試すことに。すると、扉の外へ飛び出そうとしているかのような、物語の始まりのような印象的なカットが撮影できた。撮影中、常に楽しげな4人に「本当に皆さん、仲良いんですね」と、レンズを覗き込みながら竪山も思わず微笑んだほど、終始和やかな雰囲気で撮影は進行した。

さらにバーカウンターや先程の打ち合わせスペースなど、場所を変えながら撮影は進む。その間、平岩は特に口を挟まず、竪山のそばで見守っていたが、打ち合わせスペースを使った撮影のときに一言、「上から撮ると良いと思うよ」と、段差をつけて撮影するようにアドバイス。それで出来上がったのがこの1枚だ。

確かに真横から撮ったときより、それぞれの手元が見えたほうが場の雰囲気が伝わってくるし、何よりそれぞれの表情が見えて面白い。「仕事を楽しみつつ、それぞれアツい!っていう感じが伝わってきますね!」と竪山も納得のカットが撮れ、撮影は無事終了した。Revieの面々は撮影の感想を竪山に伝えつつ、5人は部活帰りの高校生のような朗らかさで、しばしの間、団欒を楽しんだ。

プロフィール

竪山隼太(タテヤマハヤタ)

1990年、大阪府生まれ。2000年に劇団四季ミュージカル「ライオンキング」ヤングシンバ役でデビュー後、「天才てれびくんワイド」にレギュラー出演し子役として活動。2009年に蜷川幸雄率いる演劇集団さいたまネクスト・シアターで活動。最近の出演作に「Take Me Out 2018」「ガラスの動物園」(上村聡史演出)、さいたまネクスト・シアター最終公演「雨花のけもの」(細川洋平作、岩松了演出)、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」ロン・ウィーズリー役など。8月から9月にかけてPARCO劇場開場50周年記念シリーズ「桜の園」に出演。

平岩享(ヒライワトオル)

1974年、愛知県生まれ。フォトグラファー。時代の顔となるポートレートを数多く撮影。岩井秀人が代表を務める株式会社WAREのサポートメンバー。近年はドローンを使った動画など、新しい手法にも取り組んでいる。