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金森穣が書籍「闘う舞踊団」に込めた思い語る、「社会からこぼれ落ちていくものを提示したい」

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金森穣

今年1月に夕書房より発売された書籍「闘う舞踊団」について、著者である舞踊家・振付家の金森穣が東京・日本記者クラブで記者会見を行った。

「闘う舞踊団」は、2004年に新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館で日本初の劇場専属舞踊団Noism Company Niigata(以下Noism)を立ち上げた金森が、劇場文化のために奮闘した軌跡を記した回顧録。金森は、17歳で渡欧し、海外で活動したあと、日本でNoismを設立。カンパニー存続の危機を乗り越え、昨年9月からは新たなレジデンシャル制度に基づき、5年任期の芸術総監督に就任した。本書では劇場のあるべき姿や団体としての行方がつづられている。

今回の書籍発表の発端は、金森が参加した、とある勉強会にさかのぼる。「その勉強会で、文化政策に関わっている方たちでさえ、Noism発足の経緯や、どれほど大変だったかという内実を知らなかったということに驚いたんです。私が方々で語ってきたことが浸透していないなら、書籍化したほうがいいと思った」と話し、劇場の専属集団を作り、運営していくことが、「“金森穣だからできた”と言われるのが嫌でした。社会に劇場文化という制度があり、そこに課題を見つけて、どう変えていったら成熟するか。時にぶつかり合い、時に協力し合いながら歩んできました。その葛藤の記録を詳細に残すことで、(後進に向けても)貴重な資料となることができたら。前を向くために忘れていたことと対面する半年間は、しんどかったですが、よくがんばったなと思います(笑)」と明かす。

また、非言語表現を探求する舞踊家の金森は、書籍を発表することで「劇場に足を運ばないような人たちも、本を好きだからという理由で手に取り、劇場文化やこの国での舞踊家の生き方を知ってくれた」と、“言葉の力”を実感。執筆を通して、若い頃には気付けなかった「先生たちの闘いの価値にも気付くことができた」と語る。そんな自身の歩みを、金森は「日本では孤軍奮闘かもしれませんが、偉大な芸術家たちは皆、闘っている。恩師である(モーリス・)ベジャールさんも、(イリ・)キリアンさんも、鈴木忠志さんも、芸術活動だけでなく社会変化や政治的な思惑に翻弄されながら活動してきた。目の前にたくさんの偉大な先人たちがいたので、決して孤独ではなかったと思います」と振り返った。

現代社会で舞踊家が存在することの価値を問われた金森は、「“身体”は誰もが生まれ持つものですが、実はその可能性を使い切れてはいない。社会が近代化するにつれ、より身体を必要としなくなる生活様式になっていくけれど、そんな中でも、人間は身体を持って生まれてくる」と言い、「あらゆるテクノロジーは身体のアウトプットにすぎず、身体を使わなくなればなるほど、本来の身体に触れられる場所として、劇場文化が機能していくと信じています」とコメント。さらに「アーティストとして、社会が動いていく方向からこぼれ落ちていくもの、失われていくものを、社会に対して提示していきたい」と創作の姿勢を語った。

最後に、会見前に求められた揮毫で、「志」と書いた金森。「自分の人生を何にかけるかと考えたときに、“自分を超えたもの”にかけるために必要なのが、“志”。これからも一瞬一瞬、自分を超えたもののために闘っていきたい」と答えた。