福間健二の遺作が今秋公開、中学生と妻を亡くした老人が心を通わせる
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「きのう生まれたわけじゃない」場面写真
「パラダイス・ロスト」などで知られる福間健二監督作「きのう生まれたわけじゃない」が、11月11日より東京・ポレポレ東中野ほか全国で順次公開される。
詩人としても活動し、肺炎により4月26日に74歳で死去した福間。遺作となった「きのう生まれたわけじゃない」では、学校に行かない中学2年生の七海と、妻を亡くした元船乗りの老人・寺田の心の交流が描かれる。七海役で映画初出演のくるみ、寺田役で福間が出演。正木佐和が、七海が心を許せる女性・岬と寺田の妻・綾子の亡霊を演じた。そのほか安部智凛、守屋文雄、蕪木虎太郎、住本尚子、谷川俊之、黒田武士、高平よしあき、常本琢招らがキャストに名を連ねる。
福間は映画制作時に「いままでの殻を破るような映画表現を追求し、そのなかに人々を招くような『対話』を実現したい」とつづった。福間の妻であり、本作のプロデューサー・福間恵子は「『主演作が遺作になるなんてカッコよすぎるよ、監督』とスタッフのひとりが言ったが、果たしてそうなのである」とコメントしている。
福間健二 コメント
いま、人々は、とりわけ弱い立場にある老人と少年少女は、生き方を見失っている者が多い。これから何をすればいいのか、展望が見いだせない。けれども、人は人に出会い、なにかを受け取り、与えあうことで、小さな希望をつかむことはできる。
東京郊外を舞台にした、近過去でも近未来でもあるような物語を通して、そういう主題を訴えるとともに、いままでの殻を破るような映画表現を追求し、そのなかに人々を招くような「対話」を実現したい。
福間恵子 コメント
福間健二は、この地上にたしかな感触をもって生きることを底辺におきながら、詩と映画への冒険的な表現に果敢に挑戦してきた。本作では、探していた七海役のくるみに出会えた瞬間に、みずからが老人の寺田役を引き受けることを決めたのだと思う。20歳で若松孝二監督「通り魔の告白 現代性犯罪暗黒篇」の脚本を書き主演してから53年後の、大きな挑戦だった。「主演作が遺作になるなんてカッコよすぎるよ、監督」とスタッフのひとりが言ったが、果たしてそうなのである。
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