TETSUYA Billboard Live TOKYO 1日目2nd STAGEライヴレポート「本当に今、音楽が楽しい!」
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『TETSUYA Billboard Live 2023』 撮影:緒車寿一
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すべて見るL’Arc〜en〜Cielのリーダー&ベーシストであるtetsuyaが、TETSUYAとして1人でステージに立ち、歌唱を繰り広げる<TETSUYA Billboard Live 2023>。東京 Billboard Live TOKYOにて、7月1日から2日間に渡り4公演開催された中から、1日目の2nd STAGEの模様をお届けする。
TETSUYAは現在、ラルクの他に自身のソロワークにおいて、tetsuya名義でベーシストとして活動するラルクのコピーバンド Like〜an〜Angel(ライク アン エンジェル)と、TETSUYA名義でヴォーカリストとして活動するTETSUYA & The Juicy-Bananasという従来のバンド編成のほか、昨年から本人が単体で行うスタイルを加えて活動している。きっかけは、昨年Xmasシーズンに行なった<TETSUYA Billboard Live Tour 2022>公演だった。こちらは、Billboardという特別感のある大人空間に合わせて、事前にアコースティックアレンジでレコーディングしたサウンドをバックに、ライヴ当日はTETSUYAが1人でステージに立ち、生歌をパフォーマンスするというものだった。観客は全員着席し、飲食をしながらライヴを楽しむという新しいソロのチャレンジは、大成功をおさめた。本公演は、その第2弾となる。
前回同様、ステージではフランスからやってきたアンティークの譜面台と、前回とは違う3脚の椅子がTETSUYAの登場を待ち構えている。ステージに用意されたこれらのものは、すべて本人こだわりの私物。いつものライヴでは絶対見られない本人の私物を、こうして間近に目にできるのは、ファンにとってこのライヴの楽しみの一つとなっている。それと同時に、アコースティックだからこそ、自分の部屋にみんなを招いて、お酒でも飲みながら歌を聞いてもらう……そんなホームパーティーのような温かい空間でありたいという本人の強い思いが感じられる演出でもある。
クラシカルなSEが流れると、観客たちはコロナ禍の産物として生まれたマラカスライトを灯し、シャカシャカと音を響かせる。「LOOKING FOR LIGHT」のイントロが聴こえてくると、そのライトが一斉にイエローに変わり、TETSUYAが手を叩きながら客席を走り抜けて登壇。いきなりポップテイスト満載のアップチューンを正確なピッチでとらえて歌い、そのなんとも心地いいストレートな歌声の抜け感で、観客の心を掴んでその場の空気を楽しく揺らしていく。ベースも最高に上手いTETSUYAだが、歌も本業がベーシストとは思えないほど本格的。歌になると、ベースとは違ってTETSUYAがもつ“人間性”までも伝わってくるところがたまらない。曲中、ステージ両サイドの上階フロアまでを順番に見上げて「お元気?」とでもいうように、かわいく手を振って挨拶をするTETSUYA。こんな素敵な煽り方をされてしまったら、声出しを躊躇していたお客さんもたまらず手を振りながら「てっちゃーん!!」と叫んでしまう。
こうして客席の緊張感がほぐれたところに「Can’t stop believing」をドロップ。ぴょんぴょんステージで跳ねるTETSUYAとともに、腰につけたスカーフが揺れる。“眠れない夜は”と歌った後、レイヤーで入るコーラスパートを客席にマイクを向け、シンガロングを即すTETSUYA。こうして、夜空に輝く星座のようにきらめくメロディーを会場に降らせていくと、マイクスタンドのスタンドの中では、流れ星のようにLEDライトが流れ、場内には観客のマラカスライトで夜空のようなブルーライトが広がった。アコースティックアレンジではTETSUYAの生み出すメロディー、希望溢れるワード、歌がより際立ち、それを聴いているだけでポジティブな未来しかないような気持ちになって心がどんどん開放的になり、高揚していく。これこそ、TETSUYAの人間性のパワーであり、彼の音楽の、歌の最大のマジックなのだ。
この日は、さらにその気持ちを「wonderful world」で後押し。夏を呼び込むシティポップテイストなこの曲では、TETSUYAの声がステージから風のようにふわりとただよってきて、この広い世界で巡り会えた自分たちには“素晴らしい世界が待ってるんだろう”と歌い、観客全員をワクワクするような気分で満たしていく。これをステージでパフォーマンスする本人は、いつ見ても若々しくてカッコよくて、仕草がたまに子供のように可愛くなるのに、振る舞いは上品でファッショナブル。その姿は、眼福そのもの。ここまでで目も耳も幸せに満たされた観客たちは、曲が終わると同時に「てっちゃーん!!」と黄色い声援をステージ向けてバンバンおくる。それに対して「はーい! てっちゃんでーす!」とアイドルのような溌剌(はつらつ)とした声と笑顔で挨拶したTETSUYAは、一呼吸置いて「なんだそれ」と自らに突っ込む(微笑)。みんなの声が再び聴けるようになったのが相当嬉しかったのか、このあとは「ふっふー!」、「わっしょーい!」という他ではあまり聞かないようなコール&レスポンスを満喫していた。
“君に出会うために僕は生まれて来たよ”
そうして、曲は「魔法の言葉」へと展開。“君に出会うために僕は生まれて来たよ”というファンにはたまらない最強のラインを歌い込んだこの曲で、TETSUYAの音楽と出会ったみんなをどこまでも祝福。さらに、その気持ちをもっともっと観客の中で加速させるように、甘い歌声を滑り込ませて「In My HEART」へとつないでいったところは、たまらなかった。ゆったりと弾むテンポにのせ、メリハリのきいたメロディーの中に“虹”という大切なワードを綴ったこの曲の“全てはうまくいく”というフレーズは、TETSUYAという人間そのものの本質。それが、彼の音楽の源となっている。そのTETSUYAが、曲の最後に優しい声で“君の大好きな歌うたうよ永遠”と歌ったとき、観客たちはそっと胸の前で手を握りしめ、ステージを見つめていた。そうして、そのあとはせつない音像とともに、夏の終わりを滲ませるようにサビでは透き通るようなフェイクを使って「WHITE OUT」を哀愁たっぷりに届けていった。
その後は「はーい! てっちゃんですパート2!」といって、まずは場内のしっとりムードをこれで一撃。今回のライヴのために1人で小さなリハーサルスタジオに入って、歌やスタジオにあったドラムを(スティックを貸りに行くのがめんどくさくて)手で叩いて練習していたことを明かし、「最近、高校生に戻った気分。あれ? さすがに高校生は厳しい?」というTETSUYAなりのおもてなしトークで観客を笑わせ、特に“ライク”をやりだして以降、小さなスタジオでリハをやっていると「高校生の頃みたいで、本当に音楽が楽しくて」と続けた。そうして「音楽って、いいよね。みなさんのおかげで好きな音楽がやれています」とMCを締めくくった。
観客を笑わせ和ませてからは、おもむろに脱いだジャケットを下手サイドの椅子の背に丁寧にかけて、「Fantastic Wonders」、さらには「Roulette」と疾走感たっぷりの煌めきのキラーチューン2曲を全力で披露。TETSUYA自身が“音楽”を楽しんでいることが、音符や歌をさらに光り輝かせ、なんともいえないピースフルな空間を作り上げた。
アンコールで観客に呼ばれて、ふいに2階席から姿を表したTETSUYA。観客の「ウソぉー!!」という悲鳴を真似しながら、お茶目な表情を浮かべてステージへ。Billboardという会場に合わせて、ドレスアップした装いで訪れる観客について「前回はクリスマスっぽい雰囲気やったけど、今回は浴衣の人とかもいて。俺も浴衣?」までTETSUYAが語ったところで、客席は興奮して前のめりぎみに「着て着てー!」と大騒ぎ。「無理無理。俺、和な雰囲気ないし」と断りながらも「そのときはステージは畳で、正座して歌うの」と満更でもない様子。そうして「わかった! 健康ランドみたいなところで僕のこと知らない人の前でやってみたいからシークレットでやるわ。みんなには事後報告する」というと「やだぁ〜」ととたんに駄々をこねるファン。こうしてTETSUYAとファンは絶妙な掛け合いを楽しんだあとは「みんなに会える機会がこのあと、1回でも多くあるといいなと思ってます」といって、「Eureka」を歌い出すと、“Open your heart”というフレーズとシンクロするように、ステージバックのカーテンがじょじょに開いていき、ガラス張りの窓の外に六本木のきらびやかな夜景が広がる。
こうして、みんなの迷いを目の前から拭い去ったあと、最後はミラーボールの光が降り注ぐ中、ずっと歌い続けてきたバラード「15 1/2フィフティーンハーフ」を夜空の彼方まで届きそうなほど伸びやかな歌唱で、真摯に自らの言葉とサウンド、想いを届けてこの日のライヴはフィニッシュ。歌い終えたTETUSYAは「ありがとう。まったねー!」と手を振りながらステージを後にした。
翌日開催したライヴの2nd STAGEの中で、インスタライヴを通して、12月のXmasシーズンに3都市を回るBillboard Liveツアー<TETESUYA Billboard Live Tour 2023>開催をいち早くファンに伝えたTETSUYA。10月7日にはLike〜an〜Angelとしてコピーバンド史上初の東京 日比谷野外大音楽堂でのワンマンライヴ<Like〜an〜Angel“PARALLEL WORLD 2023”>開催も決定しているので、今年の下半期は様々な場所、様々なスタイルで開催するTETSUYAのライヴにぜひとも駆けつけて欲しい。きっと、ポジティブな未来を見せてくれるはずだから。
取材・文:東條祥恵、撮影:緒車寿一
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