Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > 全長90メートルに及ぶ大作でノルマンディーの四季をめぐる 『デイヴィッド・ホックニー展』レポート

全長90メートルに及ぶ大作でノルマンディーの四季をめぐる 『デイヴィッド・ホックニー展』レポート

アート

ニュース

ぴあ

《春の到来、イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年》2011年 ポンピドゥー・センター蔵  「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景、東京都現代美術館、2023年 (C)David Hockney

続きを読む

フォトギャラリー(12件)

すべて見る

現代を代表する画家のひとり、デイヴィッド・ホックニーの日本では27年ぶりとなる大規模個展『デイヴィッド・ホックニー展』が7月15日(土) より東京都現代美術館でスタートした。11月5日(日) まで開催されている。

1937年にイギリスで生まれたデイヴィッド・ホックニーは、ロンドンの王立芸術院在学中からその才能が注目されていたアーティスト。86歳の現在に至るまで60年以上、現代美術の第一線で活動を続けている。同展は彼の道のりを120点以上の作品で辿っていく、日本では実に27年ぶりとなる大規模個展だ。

展覧会はラッパスイセンを描いた2点の作品から始まる。エッチングで制作された作品は1969年、iPadで描かれた作品は2020年、2点には約60年の時間差がある、この展覧会の象徴的な作品だ。

左:《花瓶と花》1969年 東京都現代美術館蔵 右:《No.118、2020年3月16日 「春の到来 ノルマンディー 2020年」より》2020年 作家蔵 「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景、東京都現代美術館、2023年 (C)David Hockney

ロンドンで活動していたホックニーは、20代でロサンゼルスへ移住。当時普及し始めたアクリル絵の具を用いた明るい画風で一躍トップアーティストへの座へと駆け上がった。ふたりの人物で画面を構成した「ダブル・ポートレート」は彼の代表的シリーズのひとつ。単なる肖像画の枠を超え、静謐な画面のなかに恋人や家族、親子などの二人が構築した関係性や信頼関係なども描き出すことを試みている。

ほかにも、自画像を含めバラエティ豊かな人物の肖像画が展示されている。

左:《両親》1977年 テート蔵、右:《ジョージ・ローソンとウェイン・スリープ》1972〜75年 テート蔵 「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景、東京都現代美術館、2023年 (C)David Hockney
左:《クラーク夫妻とパーシー》1970〜71年 テート蔵、右:《2022年6月25日、(額に入った)花を見る》2022年 作家蔵 「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景、東京都現代美術館、2023年 (C)David Hockney
手前:《自画像、2021年12月10日》2021年 作家蔵 「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景、東京都現代美術館、2023年 (C)David Hockney

1980年代に入ると、ホックニーはピカソとキュビスムに強い関心を寄せ、複数の視点で画面を構成する手法を試み始める。

「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景、東京都現代美術館、2023年 (C)David Hockney

また、ホックニーは、同じ場所の写真を少しずつピントを合わせる位置を変えて何百枚も撮影し、大量の写真を用いたコラージュを制作することもあった。《スタジオにて、2017年12月》は、その延長線上とも考えられる作品で、室内を細かく撮影し、その画像を統合して制作したものだ。

手前:《スタジオにて、2017年12月》2017年 テート蔵 「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景、東京都現代美術館、2023年 (C)David Hockney

ホックニーは、近年になると戸外の風景も描くようになる。《ウォーター近郊の大きな木々またはポスト写真時代の戸外制作》はイギリスのヨークシャー地方の風景を描いたもの。また、《春の到来、イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年》は同じくヨークシャー地方を描いたもので、1枚の大型の油彩画と、iPad作品12点からなる大作。油彩であっても、iPadであってもその表現は揺らぐことのないことが見て取れる。

《ウォーター近郊の大きな木々またはポスト写真時代の戸外制作》2007年 テート蔵 「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景、東京都現代美術館、2023年 (C)David Hockney
《春の到来、イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年》2011年 ポンピドゥー・センター蔵 「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景、東京都現代美術館、2023年 (C)David Hockney
《春の到来、イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年》2011年 ポンピドゥー・センター蔵 「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景、東京都現代美術館、2023年 (C)David Hockney

展覧会は、全長90メートルにおよぶ超大作《ノルマンディーの12か月》でフィナーレを迎える。本作は、ホックニーが2019年に移住したフランス北西部、ノルマンディー地方の四季を、新型コロナウィルスによるロックダウンのなかで、iPadを駆使して描いた作品だ。観客は、その長い長い作品のまわりをぐるりと1周歩きながら、移ろいゆくノルマンディーの四季の風景に入り込むように鑑賞することができる。フランス最古にして全長70mに及ぶタペストリー《バイユーのタペストリー》にもインスパイアされているという。

《ノルマンディーの12か月》(部分) 2020〜21年 作家蔵 「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景、東京都現代美術館、2023年 (C)David Hockney
《ノルマンディーの12か月》(部分) 2020〜21年 作家蔵 「デイヴィッド・ホックニー展」展示風景、東京都現代美術館、2023年 (C)David Hockney

油絵や写真、版画、そしてiPadと手法を変えながらも、精力的に制作を続けているホックニー。彼の作品をまとめて見ることができる貴重な機会を見逃さないようにしよう。

取材・文=浦島茂世

<開催情報>
『デイヴィッド・ホックニー展』

2023年7月15日(土)~11月5日(日)、東京都現代美術館にて開催
https://www.mot-art-museum.jp/hockney

フォトギャラリー(12件)

すべて見る