のっちはゲームがしたい! 第14回(前編) どこまで楽しませやさんなの!コジマプロダクションの新スタジオを見学してきました
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のっちさん
ゲームが大好きなPerfumeののっちさんが、ゲームに関わるさまざまな人々に会いに行くこの連載。今回は「メタルギア」シリーズの生みの親であり、独立後に「DEATH STRANDING」を世界に送り出した、ゲームクリエイターの小島秀夫さんにお会いしてきました。
前編となるこの記事では、コジマプロダクションの新オフィスを訪問したのっちさんの見学レポートをたっぷりとお届け。後編では小島さんとの対談で、斬新なゲームを作り続ける秘密にのっちさんが迫ります。
取材 / 倉嶌孝彦・橋本尚平 文 / 橋本尚平 スチール撮影 / 上山陽介 ヘアメイク(のっち) / 大須賀昌子 動画撮影 / 桑田吏功 動画編集 / 森田哲史 動画ディレクション / 塚本真央・川口聡 題字 / のっち
えっ……、これが……スタジオ……?
昨年末にスタジオをリニューアルしたコジマプロダクション。その空間デザインは「Spaceship Transformation」をテーマに、機能性だけでなく遊び心や革新性も表現しているんだそうです。独創性あふれるゲームの数々を世に送り出し、世界中から注目を浴びている小島さんは、いったいどんなところで働いているんでしょうか?
当連載の開始前に行った企画会議でも「DEATH STRANDING」にハマっていると語っていたのっちさんは、この日もワクワクしながら現場に到着。さっそくコジマプロダクションが入る高層ビルの入り口で、スタジオのシンボルキャラクターであるルーデンスを発見しました。
エレベーターを降りると、床も壁も天井も黒一色の廊下が延びていて、早くも独特な雰囲気です。
床に引かれた一筋の光を頼りに廊下を進んでいくと、大きな鏡のある薄暗い部屋にたどり着きました。まるでテーマパークにあるアトラクションの待機場所のような空間ですが、ここにスタジオの入り口があるんだとか。
「えっ、ここがエントランスなんですか……?」と驚きの色を隠せないのっちさん。突き当たりの鏡の前に立つと、その鏡がゆっくりと両側に開き、真っ白なまぶしい光がのっちさんを照らします。
鏡の扉の先にあったのは、天井と床の全面が強い光を放ち、両サイドの壁も鏡張りという、まるでSF映画の中に入り込んだかのような空間。薄暗い部屋から一転して、慣れないうちは目を開けているのがつらいほどの明るさです。そしてその部屋の中央には、実物大のルーデンスが立っています。予想外の光景に、のっちさんは驚きを隠せない様子でした。
遊び心たっぷりなこのルーデンスの部屋ですが、驚きの仕掛けはそれだけで終わらず、どこかに隠し扉があるんだとか。それを聞いたのっちさんが奥の鏡を押してみると、新しい部屋が現れました。
隠し扉の先は、まるで小さな資料館。ガラスケースの中は「DEATH STRANDING」に関するさまざまな資料が展示されていました。そこには初期の原画や設定資料、3Dプリンタで作った模型などに加えて、ゲームのテーマソングを歌っているChvrchesのボーカリスト、ローレン・メイベリーさんにいただいたという、サイン入りのステージで着たTシャツなんてものも。のっちさんはたくさんの貴重な資料に囲まれて「すごい……! すごい……!」と興奮していました。
次に案内していただいたのはVIPルーム。ここでは来客との打ち合わせや、リモートミーティングも行われます。
「部屋のつくりが全体的に丸いのも、きっと何か意味があるんでしょうね……?」というのっちさんの推理は大当たりで、小島さんがこの部屋を作るときにイメージしたのは月面基地。リモートでつながった相手から見ると、丸いレイアウトによって、まるで小島さんが宇宙船の中にいるように見えるのだそうです。のっちさんは「どこまで楽しませやさんなの!」と、小島さんの徹底した遊び心に感服していました。
「うっそ! こんなところもあるの!?」と、部屋に入った瞬間のっちさんが声を上げたのはフレキシブルルーム。スタッフさんたちの間では、通称“ヨガスタジオ”とも呼ばれているそう。
このスタジオでは毎朝専属トレーナーが来て、スタッフさんたちが軽い運動やストレッチなどをしているそうで、のっちさんは「皆さんの心と体の健康まで考えているなんて、本当にいい職場ですね」とうらやましそうに話していました。ちなみにこの部屋では、簡単なモーションキャプチャーの収録も行われています。
廊下に出るとライトアップされたショーケースが。小島さんが国内外で受賞した数々のトロフィーや賞状などが飾られていました。
「英国アカデミー賞」最高の栄誉であるフェローシップ賞や、ロサンゼルスで開催されている世界最大級のゲームの式典「The Game Awards」のインダストリーアイコン賞、そして「芸術選奨文部科学大臣賞」のメディア芸術部門など、そうそうたる受賞歴にのっちさんは思わずため息。その中で1つ、気になるトロフィーを発見しました。
「わっ! かわいいー! これだけ特に目立ちますね!(笑)」と思わず笑ってしまったのっちさんの目線の先にあったのは、パンダの形をした金のトロフィー。これは女性誌「anan」が時代を象徴するスターを表彰する「anan AWARD」の受賞者に贈られるもので、小島さんは2022年にカルチャー部門を受賞しました。ちなみに小島さんは今年5月に「anan」でエッセイの連載をスタートさせたばかり。Perfumeも「anan」で2013年から連載を持っているということで、のっちさんは「anan仲間じゃないですか!」と一気に親近感が湧いたようです。
「いいなあ……ここで働きたいです」と思わずため息
続いて案内していただいたのはレコーディングブース。ここでアフレコや歌入れ、ポッドキャストの収録などを行っています。入った瞬間にのっちさんは「おっきぃ……」と絶句。「こんなすごいスタジオ、声優さんの裏側に密着したドキュメンタリーとかでしか見たことないんですけど……」と驚いていました。
普段Perfumeのボーカルレコーディングは中田ヤスタカさんのプライベートスタジオで行われているため、複数人で同時録音できる大きなスタジオは、のっちさんにとって新鮮だったようです。「1個1個がむちゃくちゃいい機材だ……」「しかもデザインが全部おしゃれ……」と超小声でつぶやきつつ、「これは吸音材なのかな? 形的に、音を散らすためのものっぽい?」と珍しい設備に興味津々。ただのゲーム好きではない、アーティストらしい一面を垣間見せていました。
そしてその隣にあるのが、ミキシングなどの作業をするコントロールルーム。前面に大きな窓のようにスクリーンが設置されていて、まるで宇宙船のコクピットのようです。そのあまりのカッコよさに、のっちさんは思わずテンションが上がってしまいました。
編集部から「中田さんがいつも座ってるような感じで座ってみてください」と促され、おそるおそるミキサーの前に腰をかけたのっちさん。「いや、中田さんがこんなところで仕事してるの見たことない(笑)」と笑っていました。
目の前の大きなスクリーンを見上げて、のっちさんは「例えばムービーの編集をしてるときに『じゃあこれを大きい画面で観てみたいな』と思ったら、ちっちゃな映画館とか試写室を借りるじゃないですか。でもこれだけの設備があったら社内で全部できちゃいますよね」と感心。ここで作業をするクリエイターに思いを馳せながら、「景色が違うと気分も変わって、生まれるものも全然変わりそうだなー」と納得していました。
こちらは収録スタジオです。クロマキー撮影での番組収録などをするために作られました。のっちさんは部屋に入るや否や「わっ、超デッド(残響時間が短い)な部屋ですね。音の響きがなんにもない」「床が真っ白だから、反射した下からの光でとってもきれいに映りそう」と、この部屋の特長を察知。さらに「グリーンバックとブルーバックを簡単に変えられるのが最高! すごく便利!」と絶賛していました。
このほかコジマプロダクションには、複数台のカメラを使って3Dデータを撮るスキャンルームも完備しています。
主人公などのメインキャラクターはもっとたくさんのカメラが必要なので、海外まで撮影しに行くそうですが、ちょっとしたキャラクターやプロップ(ゲーム内に登場する小道具など)はここで撮影しているんだそう。
最後に連れてきていただいたのは、スタッフ用のカフェテリア。窓の外には東京タワーやオフィスビル群が広がります。ここではランチを食べるだけでなく、窓側の天井から大型スクリーンを下ろしてスタッフイベントをやったりもするんだとか。
カフェテリアの最奥にガチャガチャが置かれているのを発見したのっちさん。近付いてみると、「DEATH STRANDING」の主人公サムが身に着けている「Qpid」というアイテムを再現したメタルチャームが入っていました。さっそく回してみましょう。
この遊び心にあふれたカフェテリアに、のっちさんは「いいなあ……ここで働きたいです」と思わずため息をついていました。
いよいよ後編は小島さんとの対談です。「DEATH STRANDING」についての話はもちろん、小島さん独自のゲーム観、普段やっていること、そして現在開発中の「DEATH STRANDING 2(Working Title)」や実写映画化の話に至るまで、たっぷりのボリュームでお話ししてもらいました。
<後編に続く>