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Ryu Matsuyama、SennaRin、ヒグチアイによる3組3様のステージ 『CLAPPERBOARD』第12弾のオフィシャルレポート到着

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『CLAPPERBOARD -Enjoy the Weekend!- vol.12』 Photo:新保勇樹

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今のシーン、次のシーンを切り取るオムニバスライブイベント『CLAPPERBOARD -Enjoy the weekend-』の第12回が、7月25日渋谷WWWXで開催された。今回の出演は、Ryu Matsuyama、SennaRin、ヒグチアイの3組。バンドで、ソロでと形はちがえども各自の音楽を追求する3組の共演は、それぞれのファンにとって新しい発見にもなった。各ステージ短い時間ではあったが、その魅力を伝える一夜になった。

トップバッターとして登場したのは、まるで個人名のようだが、イタリア生まれイタリア育ちのRyu(Piano/Vo)、Tsuru(Ba/Cho)、Jackson(Ds/Cho)というピアノトリオバンド、Ryu Matsuyama。ライブはRyuの力強いボーカルとピアノではじまる「Thinking Better」からスタートした。軽やかで変則的なビート、歌に寄り添いながらアクセントをつけるベースラインと、TsuruとJacksonのコーラスで繊細なハーモニーを織り成すメロディ。シンプルな音の構成でいて、そこにはロック、フォーク、ソウル、ジャズやダンスミュージック要素など複雑に溶け合ったサウンドが刺激的で、何より白昼夢的な美しさを持ちながら郷愁を帯びたメロディが心をとらえる。

Ryu(Ryu Matsuyama)

続く「Domus」で、Ryuが美しいファルセットでフォークロアなメロディを紡ぎあげ、冒頭の2曲で観客を桃源郷へと連れ立っていった。ステージから心地よい風が吹いてくる感覚で、観客はその甘美なアンサンブルを全身に浴び、3人に大きな拍手を送る。多幸感の中でプレイされた5月にリリースした最新シングル「I am here」は、よりアンセミックに、熱を帯びたメロディで、フロアを静かに確かに高揚させていった。

Tsuru(Ryu Matsuyama)

改めて自己紹介をし、FUJI ROCK FESTIVALなど近々のライブ出演のアナウンスをしたRyu。今年11月18日には約2年ぶりとなるワンマンライブ『ATOMS』の開催も予定している。そんなMCの後にプレイしたのは、どこか北欧的な凛としたハーモニーと、ベースのグルーヴが効いた「snow」を披露した。連日、体温越えの猛暑を更新し続けている今夏だが、このフロアだけはひんやりとした、澄んだ空気をまとった感覚だ。

Jackson(Ryu Matsuyama)

そしてこの音楽を通しての旅も、早くも終盤。ラスト2曲は、昨年リリースしたアルバム『from here to there』から披露された。「大切な人を思いながら聴いていただければ」(Ryu)という言葉でスタートしたのは「hands」。コロナ禍を経験したことでより鮮明になった何気ない日常や人との繋がり、当たり前にあると思っていたものの儚さなど、この数年が織りなした心の機微とエバーグリーンな尊さを綴ったアルバムの中でも、日本語詞で語りかけるように歌う「hands」。そして力強い鼓動のようなビートをクレッシェンドしていく「yet」で、この先に続いていく旅を祝福するようなエネルギッシュな歌を響かせて、そのステージを終えた。

Ryu Matsuyama

続いて登場したのは、作曲家・澤野弘之(数々の映画やドラマ、アニメ『機動戦士ガンダムUC』『七つの大罪』『進撃の巨人』などの劇伴を手がける)プロデュースで昨年デビューを果たしたSennaRin。10代の頃より自身のYouTubeチャンネルでカバー動画などを発表してきた新世代シンガーであり、国内だけでなくSennaRin from SawanoHiroyuki[nZk]としてサウジアラビアやベトナムでのイベントにも出演し、この『CLAPPERBOARD』直前にも上海でライブを行うなど国内外で活動をするアーティストだ。今回のステージでは、同期音源での歌唱のほか新たなスタイルでそのボーカルや音楽の魅力を伝える、試みのあるセットとなった。

「Dignified-IN」が流れ、歓声や拍手に迎えられ登場したSennaRin。照明に浮かぶブルーヘアが神秘的で、静かに息を吸い込んでスタートしたのは「透明な惑星」。打ち込みのビートにスモーキーな声が映える抑えたボーカルから、サビで大きく広がって躍動していく歌声に、フロアはゆらりと体を揺らし、また手を左右に振って応える。

SennaRin

「SennaRinです、今日は楽しんでいきましょう!」の声に続いたのは「Limit-tension」のグルーヴィなダンスチューン。躍動するベースの低音と絡み合うようなリズミカルなボーカルがハンドクラップを起こし、エモーショナルに熱を帯びていく歌声にフロアのテンションも高まっていく。低音ではハスキーで柔らかさがあって、高音になるほどに透明感や輝きを増していく声は、曲の物語を引き立てる。自己紹介の後に歌ったバラード「melt」では、そのふくよかな表現で観客を酔わせ、続くアッパーな「BEEP」では晴れやかな歌で、観客を揺らしていった。

後半は、昨年10月、この渋谷WWWXで行った初のワンマンライブでのサポートメンバーも務めたギタリスト伊藤ハルトシを迎え入れ、アコースティックギターと歌という編成でのステージとなった。こうしてギターと一対一で行うライブは初だという。観客が息を呑む中で奏でたのはアニメ『機動戦士ガンダムUC』のサウンドトラックに収録された「Sternengesang」のカバーであり、SennaRinが日本語詞の作詞を手がけた「yet.」。YouTubeチャンネルでは澤野弘之によるピアノと、伊藤ハルトシのギター&チェロという編成によるスタジオライブが公開されているが、それともまた一味ちがう歌心が冴える。

ギターと歌とで、魂をぶつけ合うようなプレイに圧倒されたのは、続く「Till I」。美しい緊張感があるSennaRinのブレスに、観客の心拍がシンクロしていくような濃密な空間が生まれ、フロアがその歌の世界へと飲み込まれた。そしてラストはTVアニメ『BLEACH 千年血戦篇』のエンディングテーマでも話題となった「最果て」。オリジナルはシンセが印象的なダンサブルなサウンドだが、このアコースティックバージョンは物語の叙情性がフィーチャーされ、またメロディや自由なフェイクが聴き手にパーソナルに語りかけるものとなった。

ステージでは、今年10月7日(1007=センナの日)に2度目となるワンマン『SennaRin 2nd ONE MAN LIVE“Qv(キューブ)”』を渋谷SPACE ODDで開催することをアナウンスしたSennaRin。新たな試みでも魅せた今回のライブで、また新たなファンも掴んだステージとなった。

この日、最後にステージに立ったのは昨年人気アニメ『進撃の巨人』The Final Season Part2エンディングテーマ「悪魔の子」で、その存在を国内外にも一気に知らしめることになったシンガー・ソングライター、ヒグチアイ。ピアノ弾き語りやバンドセットなど様々な形態でライブを行っているが、今回はピアノ弾き語りによるステージであり、さらに多くの新曲を交えたスペシャルなセットとなった。

ピンスポットに照らされたっぷりと前奏を奏で、フロアのひとりひとりにその歌を語るようにスタートしたのは、2020年に発表した「東京にて」。このWWWXがある渋谷の光景、ちょうど東京オリンピック開催を控えて刻々と変化していく街並みと、そこで人々が織り成す暮らしを綴ったこの曲。コロナ禍にも突入してどこか根無し草になったような感覚を味わいながらも、そこで踏ん張って生きていく姿を淡々と見つめるように、また時に讃えるように歌うメロディが優しい。心の底に触れるような鋭利な視点で綴った歌と、キャッチーな言葉の奥に渦巻くドラマを饒舌にすくいあげるピアノの音色が感情をかきたてて、自分の内にある何かを引っ張り出される感じがある。いつの間にかその歌と一心同体となったようで、観客は言葉のひとつひとつをかみしめステージに食らいついているようだ。

ヒグチアイ

そんな緊張感を解くように、「暑かったですね、今日」とフロアに柔らかな笑みを向けたヒグチアイ。そして今日は新曲もたくさん演奏するので、それぞれの楽しみ方で見ていってほしいと伝えると、早速新曲「自販機の恋」を披露した。発売日は未定だが、この秋公開の映画主題歌になっている「自販機の恋」は軽やかなポップさで観客を揺らす。

そこに続くのはリリースされたばかりのラブソング3部作第1弾「恋の色」だ。名付けようのない心の動きをドラマティックなメロディで歌い上げる曲には拍手が上がり、またそこに続いた「悲しい歌がある理由」は一転して、静かにその歌に耳をすます。5分ほどの曲の中に編み込まれた不器用な人生のあれこれが、胸にしまっておいた苦い思いや古傷を呼び覚ますが、その歌は毛羽立った心をさらりと癒す。前半からめまぐるしい感情のジェットコースターに乗った気分だ。

そして後半にも、こちらもこれから公開の映画に書き下ろされた新曲「この退屈な日々を」を披露した。リズミカルなピアノで描いていく、長く一緒にいるからこそのふたりの空気感が心地よい。みんなが楽しそうにしている夏が好きだとMCで語ったヒグチアイ。「夏が短いと感じてしまうのは、きっと何もしなかったからだと思い、夏だからこそのことをどんどんやってほしいし、今年しかできないこともどんどんやってみてください」と語ると、最後は「やめるなら今」をアグレッシヴに、パーカッシヴに鍵盤を打ち鳴らして力強い歌声を遠くまで響かせていった。

この夏は、8月12日の神宮外苑花火大会でのステージのほか、9月10月にはバンドセットによるワンマンライブ「HIGUCHIAI band one-man live 2023“産声season2”」を東京と、故郷である長野で行う。

3組、3様のステージとなった『CLAPPERBOARD -Enjoy the weekend- vol.12』だが、それぞれにこの先大きなステップを踏んでいくだろう予感と期待を、たっぷりと音楽で表現した一夜となった。

Text:吉羽さおり Photo:新保勇樹

<公演情報>
『CLAPPERBOARD -Enjoy the Weekend!- vol.12』

7月25日(火) 東京・WWW X

SET LIST

■Ryu Matsuyama
01. Thinking Better
02. Domus
03. I am here
04. snow
05. hands
06. yet

■SennaRin
01. Dignified-IN
02. 透明な惑星
03. Limit-tension
04. melt
05. BEEP
06. yet.
07. Till I
08. 最果て

■ヒグチアイ
01. 東京にて
02. 自販機の恋(新曲)
03. 恋の色
04. 悲しい歌がある理由
05. この退屈な日々を(新曲)
06. やめるなら今

『CLAPPERBOARD』オフィシャルX(Twitter):
https://twitter.com/clapperboard_JP

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