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新しい感動を味わえる体験 映画ファンも必見の『ONCE ダブリンの街角で』イン・コンサート

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ブロードウェイミュージカル『ONCE ダブリンの街角で』イン・コンサートより  撮影:清水隆行

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東急シアターオーブで開催中の、ブロードウェイミュージカル『ONCE ダブリンの街角で』イン・コンサート。オリジナルとなったジョン・カーニー監督・脚本による2007年の同名映画は、13万ユーロという低予算映画ながらサンダンス映画祭を皮切りに各国の映画賞を席巻し、製作費の100倍以上の世界興収を記録。第80回アカデミー賞歌曲賞を受賞したほか、サウンドトラックがグラミー賞にノミネートされるなど、大成功を果たしたタイトルだ。

その映画をもとに、2012年にブロードウェイでミュージカル化したのが、本公演の元になったミュージカル版。トニー賞で11部門候補入り、8部門受賞し、映画版では果たせなかったグラミー賞も獲得。2014年にはEXシアター六本木で来日公演が開催された。そのリバイバル版ともいえるこの「イン・コンサート」は、今年3月にロンドンでたった一日だけ上演。チケットは即完売で大好評を得た演目だ。ちなみに、映画版とミュージカル版では、主人公を取り巻く出演者の描写と楽曲構成に少しだけ違いがあるので、鑑賞前でも後でもいいので、映画版をソフトや配信で一度観て、物語の比較をしていただくのも一興だ。

では、ミュージカル版とイン・コンサート版。何が違うのか? じつはほぼ同じだ。「コンサート」というワードから想像するのは、ミュージカルの楽曲を演者が歌い上げるだけ、と思い込んでいたが、ゲネプロを拝見して驚いた。全く違う。ストーリーがそのままなのはもちろんのこと、主人公の“男”と“女”だけでなく、出演者全員が歌い奏でるという演出も同じ。ミュージカル版で評価が高かった「すべての俳優が歌いながら楽器も演奏する」というスタイルは踏襲されており、違うのは、舞台セットと演者のムーブメントだ。

センターに簡易なひな壇が組まれ、アップライトピアノとドラムを設置、周囲には奏者兼役者の座る椅子(それにプラス、本公演では上手と下手に縦型の字幕スクリーンが設置されている)。これは、ミュージカル版と同じ構成ではあるものの、かなり簡略化されている。本番の舞台セット、というよりも、リハーサル室のような雰囲気だ。照明もシンプルで、基本的にはセンターのひな壇をとらえたシーリングライトが吊るされているのみ。そのため役者たちは、シーンが変わるごとに、芝居の力でその場を一転させる。センターのひな壇は、ときに路上、ときに楽器店、ときにスタジオ、はたまた海にもなるが、大仰な振り付けや立ち回りは皆無で、あるときは楽曲への導入を足踏みによるビートの刻み、あるときは周囲を取り囲んでのコーラスで。大掛かりなセット転換はないものの、歌詞やセリフによってその場を変えてしまう。それだけに、舞台セットという「ルックス」に頼ることなく、物語を紡ぐ上で重要なセリフと、登場人物の心情を代弁する楽曲に集中して観ることができる、という仕掛けなのだ。

このプロダクションのプロデュースは、日本でも人気の高かったヴォーカルユニット・コラブロのメンバーであるジェイミー・ランバート。彼が「音楽とストーリーに焦点を当てた」と語っているとおり、主人公ふたりと彼らを取り巻く優しき人々の親密さを、フルスケールのミュージカル版よりもパワフルに音楽の力で描ききっているのだ。

楽曲群とそのパフォーマンスは本当に素晴らしい。というか、生演奏・生歌唱で聴くと、こんなにも印象が変わるのか!と驚かされっぱなしだ。主題曲「Falling Slowly」や「If You Want Me」、「Gold」、「The Hill」といった映画版での名曲はもちろんのこと、ミュージカル版で挿入されたアンサンブルによる「North Strand」(“男”の実家のシーン)や「Ej Pada Pada Rosicka」(“女”の実家のシーン)など。本公演のバージョンで観ると、どれもそのときどきの登場人物の心象風景を見事に捉えていることがはっきり分かる。そしてなにより、役者たちの演奏のレベルの高さには唖然。「え、これ本当に生?」と、ほぼのっぺらぼうの舞台上で歌いながら演奏する役者たちの手先を何度も目を凝らしてしまったほど。ミュージカル版よりも難しいことに挑戦し、観客の想像力をかきたてる演出には脱帽した。映画版、ミュージカル版をすでにご覧になった人にとっても新しい感動を味わえる体験といえるイン・コンサート版。もちろんどちらも未見で、これが初見という人にとっても、圧倒的な楽曲の魅力に浸りきれる演目といえるだろう。

取材・文:よしひろまさみち 撮影:清水隆行

<公演情報>
ブロードウェイミュージカル『ONCE ダブリンの街角で』イン コンサート

出演:
デイヴィッド・ハンター / キャシディ・ジャンソン / 他(イギリス・カンパニー)
脚本:
エンダ・ウォルシュ(映画『ONCE ダブリンの街角で』)
作詞・作曲:
グレン・ハンサード&マルケタ・イルグロヴァ(映画『ONCE ダブリンの街角で』) 原案:映画版脚本・監督 ジョン・カーニー
(映画『ONCE ダブリンの街角で』、『はじまりのうた』、『シング・ストリート』)
演出:ディーン・ジョンソン

2023年8月4日(金)~8月13日(日)
会場:東京・東急シアターオーブ

※英語上演、日本語字幕あり
※上演時間約2時間予定(休憩1回含む)

チケット情報
https://w.pia.jp/t/once/

公式サイト
https://onceinconcert.jp

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