『Grasshopper vol.15』CAT ATE HOTDOGS×とうめい天国×あるくとーーふ　大切な記憶を作り出してくれた夜【レポート】

2023年7月31日（月）、Grasshopper vol.15が開催された。学生からサラリーマン、さらには海外からも、多様な人々が下北沢CLUB Queに集まる。今月もまた、それぞれの個性と技術を抜群に活かした素敵な3バンドが集結し、大きく盛り上がる夜を作り上げてくれた。

CAT ATE HOTDOGS

少ししゃがれた特徴的な声での心揺さぶられる弾き語りから始まるライブに期待感が高まる。1、2曲目で『純愛脳内サミット』『ぴ』と続く。疾走感に溢れ、体が思わず動き出す。オシャレさとロックのまっすぐさを行き来するような、技巧の凝らされた曲で見る人を魅了する。彼らは普段4ピースだが、リードギターのおざきが療養中のため、本日は3ピース構成になっている。ステージ下手からベース、ギターボーカル、ドラムと一直線に並び、メンバー一人一人がよく見える。動き回るベースライン、自由自在なカッティングとストローク、拍子の正確さと間に入れ込む細かなドラムワークの共存。全員が独立して自由に演奏しているようで、実は寸分の狂いもなく息が合っている。彼らの演奏のキレの良さに興奮が止まらない。

次の曲は『カラッポ。』。さまざまなリズムの変化についていく楽しさが魅力の一曲だ。彼らのライブによって熱量が上がり、サビでノリノリになって手を上げて楽しんだ。『ヤドカリ』の前にはセッションパートが挟み込まれ、自由な雰囲気が漂う。ひこ（G/Vo）の少し枯れた声での歌声が、曲にインパクトと味わいを与える。曲が終わるとみや（Ds）がドラムで曲間を繋ぐ。高らかに鳴るスネアの音につられて、フロアでは手拍子が始まった。『CANKERI』では、ひこの歌声がさらに熱を帯びる。ステージとフロアが呼応し、ますますライブが盛り上がっていった。

歓声に包まれ、最後の2曲を披露する。『サクラダ・オサラバダ』では、メンバーの息が合った、見ていて気持ちの良い演奏を聴くことができた。そうしたおしゃれな間奏は観客の心を揺らした。そして最後の『魔法をかけて』は、陽気でコミカルな曲調で、スピード感があって楽しい。テクニカルな演奏を3人ともが難なくこなし、軽快な演奏でライブを走り抜けた。

とうめい天国

切なく響くハイトーンボイスとふわふわと柔らかいギターの音での弾き語り。ステージに一人立ち、森口楽絃（G/Vo）が歌う。1曲目は『愛ゆえに』。メンバーが後から入場し、演奏に加わる。彼らの演奏はこの曲の「切なさ」を支える土台となっていた。『日々わずらい』では、フロアを包み込むようなリバーブのかかったサウンドの中に、バスドラムの芯のある音が響く。どっしりとしたその音に胸を打たれた。

『夜明け前より』では、一音一音が雫の落ちる音のような、静かで優しいアルペジオとともに、森口の消えてしまいそうな儚い歌声が響く。そして彼らの夢現な世界観を作り出した。それに続くのは、青い照明の下で始まる『8MMUSICA』。奏汰（G）の、笛のように素直な音で曲を彩るギターが特徴的だ。サビに向けて徐々に感情が高まり、気持ちをむき出しにして歌う森口がいた。その熱量に引っ張られて多くの人が拳を上げ、高らかな拍手を送った。

曲が終わると、そのまま『HOME SICK SAYONARA』が始まった。キャッチーなイントロが耳にのこる。バンドメンバーで向き合い、互いの楽器をかき鳴らした。その熱さに観客も拳を上げて呼応し、どんどんとフロアが盛り上がっていった。最後の一曲は『少年は歌小屋で劇的な夜を見る』。星が煌めく夜空を連想させるような、スケールの大きさを生む。とうめい天国は、本日で結成後2度目のライブだというが、完成度は非常に高く、彼らは観客を魅了する音楽と世界観を作り出していた。

あるくとーーふ

スタートのシンバル3連打で静寂が破られ、フロアのテンションが跳ね上がる。綺麗に透き通った利佳子（Vo）の歌声が高らかに響く。メンバーから、前のめりになってライブを楽しもうとする気持ちが溢れ出ていた。そんなステージを照らすオレンジ色の照明が、明るい雰囲気の彼らによく似合う。『シャリライ』は名刺のような一曲に聴こえた。曲が終わって続くのはamico（key）の奏でるキーボード。ゲームのジングルのようなフレーズが耳に残る。『エピローグからショータイム』が始まった。ポップな曲調に釣られて始まった手拍子が鳴り止まなかった。

ふわっとした浮遊感を漂わせるギターやキーボードの音が一気にステージの雰囲気を変える。観客は『くらしのまま』の曲調に合わせて、脱力しながら自由に体を揺らした。メンバーもそれぞれが自由に演奏しながらも、互いに補完するような一体感を見せてくれた。続く『no more civilization』は、おしゃれなコードと耳触りのいい歌声で聴く人を気持ちよくさせてくれる。そんなステージに対して大きな歓声が上がった。

彼らは10月に無期限の活動休止に入るという。今日のライブは、最後の自主企画を除けば、東京での最後のライブだという。そのようなメモリアルなライブだと知り、より目に焼き付けようとする気持ちが大きくなる。「あるくとーーふラスト二曲です！最後楽しんでこう！」と利佳子が叫び、気持ちをどんどんと上げていく。『氷星』のサビでは、「いけますか！」の声に合わせて拳が上がり、全員がめいっぱい楽しんでいた。そして最後、黄色に染まったステージで『ハニーレモン・ジンジャー』が始まる。ステージにいるメンバーが明るい笑顔で演奏している様子が微笑ましい。見ていて自然と笑顔になった。また、記憶に残るサビの一体感。彼らの曲が持つ引力が観客を惹きつけ、幸福感を生み出していた。

アンコールは最後の一曲と同じく『ハニーレモン・ジンジャー』を。活動休止前の歴史的な、大事な公演を見届けることができた。あるくとーーふは、忘れたくない大切な記憶の一つを作ってくれた。

Text by らいれいな
Photo by エドソウタ、こさかいるな

★『Grasshopper vol.16』 は8月21日(月) 下北沢DaisyBarにて開催！

イベント公式サイト
https://fan.pia.jp/grasshopper/