Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > 客席でも安心できない?! “体感型ライブショー”舞台『呪怨 THE LIVE』上演中

客席でも安心できない?! “体感型ライブショー”舞台『呪怨 THE LIVE』上演中

ステージ

ニュース

ぴあ

舞台『呪怨 THE LIVE』より

続きを読む

フォトギャラリー(15件)

すべて見る

ホラー映画界の巨匠である清水崇監督の代表作であり、2000年に映像作品として発表された『呪怨』と『呪怨2』を原作にした舞台『呪怨 THE LIVE』が、8月12日(土)より、こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロにて上演中だ。その前日に行われた舞台稽古の模様をレポートする。

借家の内見に来た北田夫妻(左から、宮下幸生、越智ゆらの)
北田夫妻と、不動産屋の鈴木達也(右奥・あべこうじ)

舞台は不動産業を営む鈴木達也(あべこうじ)の案内で、とある借家の内見にきた北田良美(越智ゆらの)と北田洋(宮下幸生)の若い夫婦が登場して始まる。しかし、その物件を見た良美はなぜか不安に駆られてしまう。そして時間は過去に戻り事実と接続する。そこでは小林俊介(小松準弥)と出産を控える小林真奈美(大場美奈)夫婦が仲睦まじげに夕食を準備している風景と、妻の佐伯伽椰子(佐々木心音)が俊介に想いを寄せていることを知った夫の佐伯剛雄(いしだ壱成)が、嫉妬と激情に駆られて風呂場で子供の佐伯俊雄(福田龍世/石井舜/溝口凛瞳/いおりのクワトロキャスト)を殺め、伽椰子も2階の部屋で惨殺するというシーンが描かれる。その後、剛雄は伽椰子の死体を押し入れに隠して姿をくらます。そこから殺された伽椰子の怨念が様々な人々を事件に巻き込んでいく……。

小林夫妻(左から、小松準弥、大場美奈)
妻の伽椰子(佐々木心音)を殺め押し入れに隠す剛雄(いしだ壱成)
剛雄(いしだ壱成)により悲劇に陥れられていく真奈美(大場美奈)

注目すべきは舞台装置だろう。会場の周りは映像を映すスクリーンの代わりになる黒い紗幕のようなもので囲まれ、舞台は円形であるのと同時に廻り舞台で、中央に精妙な日本家屋のセットが聳えている。それを時には登場人物の部屋に、時には一軒家に見立て盆を常に回転させながら、恐ろしい事件を起こし続ける。そうすることで、そんな凶行が起きる原因は、伽椰子の目に見えない呪いを担保に、日常の生活の延長線上にしかないというモダンホラー的な「いつ、どこにでも起こる恐怖」という生々しい感覚を覚えさせて、物語にリアリティーを与えていた。

客席から登場する伽椰子(佐々木心音)

「体感型ライブショー」という謳い文句にあるように、死者である伽椰子が客席に現れ、観客から悲鳴を上げさせて、アトラクションとしても楽しめる。それだけでなく、原作にほぼ忠実でありながら丁寧なアレンジを施した穂科エミによる脚本や、演出の田邊俊喜の絶えず俳優の感情や肉体を動かすことで、観客の心を揺さぶり敏感にさせて、わずかな出来事で恐怖を感じるようなテンションの高いシーンをスピーディーに生み出す演出が素晴らしく、音響やライティングもきちんと機能していて、しっかりした演劇作品に仕上がっていた。

いしだ壱成のサイコパスな演技も印象的

俳優の芝居にも見応えがあって、シーンが目まぐるしく変わるお話だが、どの俳優も立ち遅れることなく的確に台詞を回し、所作もシーンの展開に合わせブレることなく連動していた。なかでも、伽椰子に異様な愛を注がれていた俊介役の小松は、純朴な男性を闊達に演じていたおかげで、彼女に内在する歪んだ想いが恐怖となって舞台の前面に出ていたし、剛雄役のいしだ壱成は、今風に言えばサイコパスな演技が舞台のダークな世界観にハマっていたのが印象的だった。注目すべきは、鈴木夫妻の息子で引きこもりの少年・鈴木信之役の若手注目株、古賀瑠だ。台詞がないにも関わらず、所作と佇まいのみで少年の心に巣食う苦悩が会場を覆い尽くし、信之の抱える絶望がリアルに感じられた。

鈴木信之役・古賀瑠
鈴木響子役・原幹恵
北田良美役・越智ゆらの、鈴木達也役・あべこうじ
吉川刑事役・野添義弘、神尾刑事役・荒木健太朗

今作の物語の中核をなす罪とその贖罪のためには必ず「死」で償わなければならない構図は、日本の古からの伝統だろう。そして、本作に見られるような、それをさらに洗練させた手法で生み出された「Jホラー」という新感覚のホラーは、世界でも類を見ない独自の地位を築いていると感じさせてくれた。突き詰めれば、この作品は日本に住むどこにでもいる人々の病んだ魂のメタファーなのだ。それは怨念という名の下に他者に伝播し悲劇の連鎖を起こし続ける。それでもそれを突き破り救いを求めようともがく登場人物の生き様は、現代日本の抱える病巣を暴き出すことに成功していて、メッセージ性の強い作品とも言える。

本公演は、8月20日(日)までこくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロにて上演。

取材・文・撮影:竹下力

<公演情報>
『呪怨 THE LIVE』

原作:『呪怨』『呪怨2』(製作:東映ビデオ 脚本・監督:清水崇)
脚本:穂科エミ
演出:田邊俊喜
恐怖監修:五味弘文

出演:
小林俊介役 小松準弥
小林真奈美役 大場美奈
鈴木達也役 あべこうじ
鈴木響子役 原幹恵
鈴木信之役 古賀瑠
神尾刑事役 荒木健太朗
北田良美役 越智ゆらの
北田洋役 宮下幸生

吉川刑事役 野添義弘

佐伯俊雄役 福田龍世/石井 舜/溝口凛瞳/いおり
佐伯伽椰子役 佐々木心音

佐伯剛雄役 いしだ壱成

<凶演者>
斉藤ひかり / 木原実優 / 真辺彩加 / 絃ユリナ /白石真菜 / 福島愛 / CHIRI / 柴崎菜々 / 和田望伶 / 鶴田彩

2023年8月12日(土)~20日(日)
会場:東京・こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ

チケット情報
https://w.pia.jp/t/juon-the-live/

公式サイト
https://juonthelive.com

公式X(Twitter)@juonthelive
https://twitter.com/juonthelive

公式Instagrum
https://www.instagram.com/juonthelive

©清水崇・東映ビデオ/『呪怨 THE LIVE』製作委員会

フォトギャラリー(15件)

すべて見る