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GENERATIONSが全員で挑戦したホラー映画『ミンナのウタ』。こだわりとユーモアにあふれた撮影現場を独占レポート!

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映画『ミンナのウタ』

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『呪怨』『牛首村』『忌怪島/きかいじま』などで知られる鬼才・清水崇監督の最新作『ミンナのウタ』は、GENERATIONSのメンバー全員が本人役で主演していることでも話題! 8月11日(金)の公開と同時に、現実世界とフィクションが混ざり合うそのリアルな恐怖がセンセーションを巻き起こしている。

古いカセットテープから流れてきたノイズ音と不気味なメロディー。それを聴いたGENERATIONSのメンバーの周りで不可解な現象が次々に起こり、やがて30年前にその“呪いのメロディー”を奏でた少女“さな”の悪霊が暴走し始める。

かつてない恐怖に見舞われ、恐れ慄くメンバーたちの引き攣った表情や絶叫は、彼らのライヴや他のメディアでは絶対に見られないもの。いったいメンバーの身に何が起こったのか? 命の危険はなかったのか? 本作を観た誰もがGENERATIONSの普段の日常を覗き見ているような感覚で彼らの身を案じ、フィクションと現実の境界線がどんどん曖昧になっていくその禁断のホラーワールドでかつてない恐怖と深い哀しみを味わうことになるのだ。

と同時に、この生々しい世界はいったいどんな風に作られたのだろう?と、そこに興味を持った人も多いに違いない。そこで、ここでは今年の2月と3月に秘密裏に行われた本作の撮影現場の模様を独占レポート! メンバーそれぞれの恐怖シーンを中心に、“音楽”と“音”をめぐるこの新感覚ホラーの裏側に迫っていく。

【映画の核心に触れる部分がありますので、ぜひ映画鑑賞後にお読みください】

佐野玲於や中務裕太への聞き込みシーン
清水崇監督の細かい演出が

最初に現場を訪れたのは2月某日。この日は都内の某ホテルのスウィートルームで、マキタスポーツ演じる元刑事の探偵・権田が、問題のカセットテープの音声を聴いた後に突如失踪したメンバーの小森隼について、他のメンバーにひとりずつ聞き込みをしていく一連のシーンの撮影だ。

最初に部屋に入った佐野玲於が、権田がカチカチ鳴らすボールペンのノック音に反応するように奇妙なメロディーを口ずさみ始める。このシーンでは、リハのときに清水監督から「歌っているときは瞬きをしないで!」という指示が飛び、佐野が言いづらそうにしているセリフを説明的にならないものに修正。権田と早見あかり演じるマネージャーの凛が彼の異変に気づくタイミングなども調整し、ドキュメンタリーに近い、自然なやりとりが徹底されていく。しかも、撮影の合間には、佐野がマキタや早見に「このTシャツ、自前なんですよ。だから楽ですね」と打ち明ける微笑ましいひとコマも。彼のラフな一面がそんなささやかなやりとりからも垣間見られた。

次の中務裕太は、部屋に入ってくるなり、窓際に突進し、レースのカーテンを狂ったように閉めまくったが、これはあくまでも芝居。中務が実際に霊感が強いことから作られたシチュエーションで、権田の前に座った彼も終始落ち着きがない。背後のカーテンの向こう側に“さな”の影が佇んでいて、「ここ、13階ですよね?」と確認する中務だけがそれに気づいているという設定なのだ。

ここのリハでは、背中に“さな”を感じた中務の動きについて、「顔は動かさずに、目で意識している感じで」と清水監督。さらに、“さな”役の穂紫朋子がカーテンと窓の間ではなく、窓の向こうの宙に浮いているような見え方になるように美術部が工夫してから本番に。耐えきれなくなり、おもむろに立ち去る中務がいた場所にシルエットの“さな”が現われ、彼を追うようにゆっくりと振り向く。タイミングが問われるホラー映画ならではの繊細なカットだったが、それでも僅か4テイクでOKになった。

ホラー映画の定番、シャワーシーンで
片寄涼太の背中に“さな”の手が……!

このホテルの部屋では、その2日後、シャワーを浴びている片寄涼太の身に異変が生じるシーンの撮影も行われた。シャワーは、アルフレッド・ヒッチコック監督の『サイコ』やブライアン・デ・パルマ監督の『殺しのドレス』を例に挙げるまでもなく、ホラーやサスペンスの定番のシチュエーション。映画を観ながら“来た! 来た!”と胸を高鳴らせたファンも多いだろうが、ここでは清水監督ならではのこだわりを目撃することができた。

シャワーを浴びている泡まみれの片寄。と、突然しゃっくりが出て止まらなくなり、苦しそうな表情になったと思ったら、次の瞬間、背中の“さな”の手が彼を引っぱり、後ろに転倒させる。そんな一連が数回のテストを経て本番に。程よいボリュームと密度の泡が片寄の背中につけられ、狭いシャワールームに“さな”役の穂紫と片寄が倒れた後の湯気を立ち昇らせるホラー担当(監督助手)のスタッフが狭い浴槽に隠れ、カメラが回り出した。

しゃっくりが止まらなくなる片寄。背中の泡の中の“さな”の手が這い上がっていくが、モニターでその動きを見ていた清水監督から突然「カット!」がかかる。「それだと、泡のついた手が上がってくるようにしか見えない! もっと泡そのものが“さな”の手になる感じで!」。清水監督の演出意図を知って、あ~、なるほど、と、そこにいたスタッフ全員が思ったに違いない。そんなちょっとしたギミックを、文化祭の学生たちのように、ワイワイ楽しそうに成立させるのが清水組のいつもと変わらない風景なのだ。そのことは、シャワールームから出てきた片寄や穂紫の満足そうな顔を見ても明らかだった。

この日の午後には、同じ部屋で白濱亜嵐と権田、凛の3人が、テーブルに置かれた問題のカセットテープを見ながら、次々に起こる怪奇現象について思案する深夜のシーンの撮影も行われた。

「あの、“さな”という子は……自分の歌を聴いてもらいたいだけだったんじゃ……」(凛)
「何で俺たちまで……」(白濱)
「誰でもいい。他人を……自分の世界に惹き込みたいんだ」(権田)
「彼女の想いに寄り添ってあげることってできないのかな?」(凛)

リハの段階から神妙なセリフのやりとりが行われたが、そこで凛役の早見から清水監督に「おかしなことが次々に起こっているから、気持ちが悪いと思うのが普通で、寄り添おうなんて感情にはならないような気がするんですけど……」とセリフに覚えた違和感が投げかけられる。それに対して、清水監督は「凛の心の中にすでに“さな”が入り込んでいるんです」と説明し、早見も「それなら分かります」と納得した表情を見せる。

そこから凛が目の前のカセットテープを躊躇することなく手に取り、男性ふたりが“そんな気持ちの悪いもの、よく触れるね”という表情で彼女を見る芝居も足されたが、たとえフィクションでも人の心の動きに嘘があると観客の気持ちは離れてしまうもの。演者の言葉に耳を傾け、その疑問をおざなりにしないからこそ、清水崇監督の作品には現実と地続きの恐怖を感じるのかもしれない。

戦慄のクライマックスシーンでは
白濱亜嵐の奮闘で撮影一発OK!

白濱と権田、凛の3人がすべての元凶の“呪われた家”を訪ねるクライマックスを撮ったのは3月に入ってからだ。東京郊外の某スタジオに作られたそのセットは、“さな”が両親と暮らす30年前の撮影で使われた生活感のあるものを数日かけて瓦礫や落ち葉でリノベして朽ち果てた感じにしたもの。ドアを開け、中を覗いた瞬間に不穏な空気に襲われる玄関の真ん前には、清水崇映画の象徴とも言えるおどろおどろしい“階段”が2階へと真っ直ぐ続き、その先に“さな”の部屋があることを想像させる。

建物に入るなり、壁の鏡に映し出される30年前の忌まわしい光景と目の前の衝撃的な出来事の双方に目を配りながら、言葉にならない恐怖を顔に浮かべる3人。そんなゾワゾワする一連が繊細なタッチでカメラに収められていったが、この日のハイライトは、過去の地獄絵を目の当たりにした凛がいきなり階段を駆け上がり、問題の部屋に飛び込んだ後のくだりだ。

残された白濱と権田の前に“さな”がついに現れる。首から大きなカセットレコーダーをぶら下げ、全身に血管の浮き上がった青白い彼女は、眼を見開いたままの状態で生気がまるで感じられない。そんなこの世のものとは思えない異物が、あのメロディーを口ずさむように口をもごもごさせながらゆっくりと歩みを進め、最後には覆いかぶさるようにして、白濱と権田の顔面スレスレまで顔を近づけてくるのだから、現場で見ていても、とんでもなく怖い。

ふたりものけ反りながら、芝居とは思えない戦慄の表情を浮かべていて、テストでそのすべてを見ていた清水監督から「いい感じですね~! 後ずさって、階段の下まで行っちゃったら、固まっちゃっててください」という声が自然に漏れる。

さらに、「権田さんの立ち位置を、もう少し亜嵐くんに近づけて」「マキタさんのアップのフレームに亜嵐くんが入ってきて、2ショットになるように」などの微調整が各部署に告げられてから本番に入ったが、後ずさる白濱の感じも絶妙で一発OKに。無事に撮影を終えた白濱もマキタも、さっきまでと違って充実の笑顔を見せていた。

小森隼は実際に失踪していた……!?
笑いにあふれた撮影現場

映画は周知のとおり、シーン順に撮っていくわけではないし、キャストやロケ地などの都合でとんでもないバラバラなスケジュールになることも多い。清水組でもそれは同じで、深夜まで及んだ最恐のクライマックスを撮り終えた日の翌日の午前11時には、クルーの姿はお台場の音響スタジオにあった。

ここではGENERATIONSの小森隼がラジオ番組の収録中に“さな”の奇妙な歌声を耳にする序盤のシーンや、逆再生したカセットテープから聞こえてきたおぞましい声に関口メンディーが絶叫するくだりが撮影されたが、山場を乗り越えた清水監督やスタッフはみんな明るくて、清々しい笑顔を浮かべている。

各位のスケジュール上、撮影前のホン(台本)読みでも衣装合わせでもマキタスポーツに会えていなかった小森が「僕、この映画にマキタさんが参加していることをまだ信じてないんですよ(笑)」と言うと、清水監督も「マキタさんも“俺の中では、小森くんは本当に失踪していることになっている”って言ってましたよ」と返して周りの笑いを誘う。いやはや、ホラー映画の撮影現場がこんなにも楽しいところだったなんて!

本当に怖い映画は、“恐怖”で観る者を楽しませたいと思う作り手がその英知と遊び心、肉体を惜しみなく注ぎ込んでこそ完成するものなのだ。GENERATIONSと清水崇監督がガッツリ組んだ『ミンナのウタ』は、そのことを高い完成度で実証している。

取材・文:イソガイマサト

<作品情報>
『ミンナのウタ』

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