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人気声優たちによる朗読劇の魅力が詰まった、『胡蝶ノ、ユメ』開幕

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『胡蝶ノ、ユメ』舞台写真 撮影:阿部章仁

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8月15日、東京・TOKYO FMホールにて、朗読劇『胡蝶ノ、ユメ』が開幕した。38名の人気声優陣が1回ごとに異なる組み合わせで出演、多彩な個性の競演が展開される。

中澤まさとも、青山なぎさ、広瀬裕也、竹内栄治の4人が登場した初日も、声のプロフェッショナルならではの、迫真の演技が観客の心を捉えた。脚本家・演出家として活躍するスギタクミの書き下ろしによる戯曲、数々の演劇で評価を得ている深作健太の演出で上演される本作。蝶になって楽しく飛ぶ夢を見て目覚め、果たして自分は蝶になった夢を見ていたのか、それとも、いまの自分は蝶が見ている夢なのか──という荘子の説話からとられたタイトルだが、舞台では、2011年と2020年という二つの時が交錯するなかで、儚く切ないラブストーリーが展開される。

時計の針の音と潮騒が響く中、舞台には青い明かりに照らされた巨大な舞台装置が浮かび上がる。それはまるで絶壁の孤島、あるいは浜辺にそびえ立つ監視塔のようにも見える。高校2年生の辰朗は母とともにこれから暮らす瀬戸内海の島、倉賀野島へとやってくる。2011年3月の震災で父を亡くし、この島で新たな生活をスタートさせるという。原発事故の際に福島にいたことを理由に、クラスのリーダー的存在の凌たちから心ない言葉をかけられる辰朗。舞台装置は突然スモークを吐き出し、爆発した原子炉建屋のイメージへと変貌する。

中澤まさともの演技は、ティーンエイジャーらしい瑞々しさにあふれ、同じような境遇を強いられた数多の少年少女たちの人生を思い、心が痛む。青山なぎさ演じるちとせが、無邪気ながらどこか危険な香りのする魅力を振り撒くほどに、辰朗との十代の恋の切なさが、より鮮やかになっていく。やがて夏祭りが近づき、一緒に行こうと約束をする二人。が、直前になってちとせから「行けなくなった」と断られ、ショックを受ける辰朗。まさにその翌日、島では、ある「コト」が起こる──。そして9年後の2020年は、誰もが生々しく思い出すパンデミックの渦中。抑制の効いた中澤の声が、時の流れを実感させる。

そんな辰朗のもとに、ルポライターの東雲が取材にやってくるが、彼はあの島で何が起こったかを知っている様子。観客は次第に、あの島の日々が、ただ甘酸っぱいだけの思い出ではないことに気付かされていく。

中澤、青山との絶妙な掛け合いを見せるとともに、一人で何役をも演じ切った広瀬裕也、竹内栄治の演技も、声優ならではの圧巻の表現力。オリジナルだからこその先入観なしの緊迫感、その物語をより劇的に浮かび上がらせる演出が胸をつく。

荘子の胡蝶の説話は、自分の存在はいかなるものかという問題に繋がるけれど、この作品にこめられていたのは、抱えるものがどんなに大きくとも、人は前を向いて生き抜くべきというメッセージだ。重々しくも感動的な物語だが、声優たちの個性、妙技がぶつかってこその舞台だけに、毎回キャストが変わることで全く異なる世界が立ち上がる。朗読劇の魅力がたっぷりと詰まった、充実のステージだ。公演は8月20日(日) まで。

取材・文:加藤智子 撮影:阿部章仁

<公演情報>
朗読劇『胡蝶ノ、ユメ』

脚本:スギタクミ
演出:深作健太

2023年8月15日(火)~8月20日(日)
会場:東京・TOKYO FMホール

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/kocho-no-yume/

公式サイト:
https://rodokugeki.com/kochonoyume/

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