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「最初は躊躇ったけど......」 ミュージカル『生きる』脚本・高橋知伽江×ホリプロプロデューサー・梶山裕三対談

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左から)高橋知伽江、梶山裕三   撮影:五月女菜穂

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Daiwa House presents ミュージカル『生きる』が2023年9月7日(木)から東京・新国立劇場 中劇場にて開幕する。黒澤明監督の名画を世界で初めてミュージカル化した本作は、2018年に初演され、今回で3度目の上演だ。今回、脚本と歌詞を手掛けた高橋知伽江と、演劇プロデューサーの梶山裕三による対談が実現。『生きる』の創作秘話などを聞いた。

撮影:引地信彦

「最初にお話をいただいたとき、実は躊躇いました」と明かす高橋。『アナと雪の女王』などのディズニー映画の訳詞を多く手掛けるほか、劇団四季ミュージカル『バケモノの子』やミュージカル『COLOR』などのオリジナル作品を次々と発表している高橋だが、オファーを受けた2016年当時は、言葉や文化的背景が違う米国人作曲家とタッグを組むことに不安を示していたという。

それに対し、梶山は「一度(作曲家の)ジェイソン(・ハウランド)と会ってから考え直してほしい」と懇願。「ジェイソンは日本人的な感覚も持ち合わせていたし、何よりミュージカルを愛するふたりだから、絶対に意気投合できると思っていたんです」という梶山の思惑通り、韓国・ソウルでジェイソンと対面した高橋はオファーを受け入れた。高橋は「彼の音楽に導かれて、このミュージカルができたと思うし、彼から学んだことは本当に大きかったですね」と今、振り返る。

撮影:引地信彦

とはいえ、創作の道のりは容易ではなかった。

なぜキャストがここで歌うのか? 主人公の渡辺勘治の死をどこで描くのか? 本当にこの曲は必要か? 作曲家のジェイソン、演出の宮本亞門も交えて、試行錯誤を繰り返し、高橋は開幕まで10回以上脚本を書き直したという。高橋は「稽古が終わって、その後に打ち合わせがあって、家で本を書き直して、寝て、朝に亞門さんから電話があって、また直し......。制作の人は台本の差し替え部分のコピーばかりしていた気がします」と笑うが、「苦しかったけど、楽しかったですよ」と微笑む。

創作に伴走し続けた梶山も「知伽江さんとジェイソンと亞門さんがプロ意識を持って作品を作り上げていったと思うし、そこに市村(正親)さんや鹿賀(丈史)さんらキャストからのアイディアも加わって、本当に奇跡みたいな初日だったなと思うんです。たくさん話し合ってもうまくいくとは限りませんから、オリジナルって」と話す。

そして梶山は「幕が開いてからの評判がよかった。開幕後1週間ぐらいから、もうどんどんチケットの申し込みが相次ぎ、男性の方が1人で当日券を買い求める姿もたくさん見かけました。客層が広がった気がして、純粋に嬉しかったです。また、再演時は地方公演もあったんですけど、 それもすごく喜ばれて。いつまでも上演され続けてほしいと思う作品の一つです」とも語った。

撮影:引地信彦
撮影:引地信彦

かなり笑えて、最後は感動の涙

近年、日本発のオリジナルミュージカルも増えてきた。高橋が「翻訳の場合、 私の能力が低いからかもしれませんが、絶対に訳せない文化的なものがあるんですよ。宗教や人種の問題など、『本当はこうだけども』というもどかしさを常に持っていたんです。でもこれが日本語になるとそれが全然ない。『生きる』は歌詞の中に『漬物』なんて出てきますから」と話すと、梶山は「確かに翻訳ものを観ていて、途中で『あれ?』と思っても、『あちらではウケるんだろうな』などと思いながら観ていますものね。そういう違和感はない方がいい」と返す。

ミュージカル『生きる』2023年公演チラシ

また、梶山は「オリジナル作品自体が珍しくなくなり、これだけの人が目指すのだから、日本から世界に行く作品が出てもおかしくないなと勇気づけられます。同時に、30年後、50年後の世界でも通じるテーマ性を探さないと。この先もまた見たいものを生み出したいとずっと思っています」と使命感に燃えていた。

高橋は観客へのメッセージとして「新キャストの味を活かしつつ、亞門さんが緻密に作ってくださっています。あらすじとしては『ある男が胃癌になって死んでいく』話なので、一見悲劇なのですが、ユーモアをたくさん入れてくださって。かなり笑えて、最後は感動の涙にくれる。そんな作品になると思います」と語る。梶山も「オリジナルミュージカルはちょっと......という人もいるかもしれませんが、この『生きる』は初心者にも優しいし、とてもよくできている作品。これを観て、感情移入ができない人はあまりいないのでは? コロナ禍を経て、命との向き合い方も変わった今、どうお客様が受け取ってくださるのかが楽しみです」。

東京公演は9月24日(日)まで。その後大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演。

取材・文・撮影(高橋知伽江・梶山裕三):五月女菜穂

<公演情報>
Daiwa House presentsミュージカル『生きる』

原作:黒澤明監督作品『生きる』
(脚本:黒澤明 橋本忍 小國英雄)
作曲&編曲:ジェイソン・ハウランド
脚本&歌詞:高橋知伽江
演出:宮本亞門

出演:
市村正親・鹿賀丈史(Wキャスト)
村井良大 / 平方元基・上原理生(Wキャスト)/
高野菜々(音楽座ミュージカル)/ 実咲凜音 /
福井晶一 / 鶴見辰吾

【東京公演】
2023年9月7日(木)~9月24日(日)
会場:新国立劇場 中劇場

【大阪公演】
2023年9月29日(金)〜10月1日(日)
会場:梅田芸術劇場メインホール

チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2343523

公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/ikiru2023/

X(旧Twitter)
https://twitter.com/ikirumusical

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