いまだからこその『勧進帳』体験を アップデートされたキノカブ版『勧進帳』本日開幕
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東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎『勧進帳』メインビジュアル
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すべて見る木ノ下歌舞伎による『勧進帳』が、まもなく初日を迎える。2010年に初演、2016年に再創作され、パリ、ポンピドゥ・センターでの公演も成功させた、あの刺激的な舞台が、さらに力強くアップデートされて戻ってくる。
『勧進帳』といえば、歌舞伎を代表する人気演目。兄である源頼朝に謀反の疑いをかけられた源義経が、弁慶らとともに山伏に扮して奥州へ向かうも、安宅の関にて関守の富樫に止められ、押し問答となる。重厚かつ緊迫感あふれる台詞の応酬、弁慶の飛び六方など、見どころにあふれた古典作品だけれど、木ノ下歌舞伎はこれを実に鮮やかに、またスタイリッシュに、現代の舞台に蘇らせ、歌舞伎に親しみのない人々をも夢中にさせる。
関所という場で展開される忠義の物語を、あらゆる“境界線”をテーマに据えた、いまの私たちのドラマとして表現したキノカブ版『勧進帳』。全台詞が現代語で語られたり、弁慶役が屈強なアメリカ出身の演者だったり、富樫が皆で宴会をしようとコンビニで買い物して登場したりするのに驚かされながら、知らず知らずのうちに古典の名作のパワーを実感させられているようにも思える。
数々の歌舞伎の演目を現代的な解釈をもって大胆に読み解き、古典作品の可能性をぐいぐいと拡げてきた木ノ下歌舞伎。主宰の木ノ下裕一は自らを「古典芸能オタク」と称し、古典演目上演の補綴・監修という仕事を通して、あふれんばかり古典愛を形にしてきた。その都度気鋭の演出家を招き、作品ごとに趣の異なる斬新な舞台を創り上げることでも知られるが、なかでも木ノ下歌舞伎の元メンバーの演出家、KUNIO主宰の杉原邦生とのタッグは10作品にもおよび、その都度多くの観客の心をとらえてきた。とくにこの『勧進帳』は、歌舞伎の台詞や動きをそのままコピーして稽古する、木ノ下歌舞伎独特の「完コピ稽古」を初めて導入した作品なのだそう。そんな遠回りとも思えるプロセスを経てこそ、より説得力ある作品が生まれるのかと唸ってしまう。
2018年以来の再演となる今回の舞台、この5年間に私たちが経験したパンデミックや戦争といった危機が、どんな形で反映されるのかも興味津々。バッハ・コレギウム・ジャパンの首席指揮者、鈴木優人との異ジャンル対談を動画で配信したり、公演期間中に木ノ下と日本文学研究者ロバート・キャンベルとの特別トークを開催したりと、私たちの知的好奇心をくすぐる仕掛けも。いまだからこその、またとない『勧進帳』体験が待っている。
公演は9月1日(金)から24日(日)まで、東京芸術劇場シアターイーストにて。その後沖縄、上田、岡山、山口、水戸、京都での上演が予定されている。
東京芸術祭 2023 芸劇オータムセレクション|東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎『勧進帳』PV
文:加藤智子
<公演情報>
東京芸術祭 2023 芸劇オータムセレクション
東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎『勧進帳』
2023年9⽉1⽇(金)〜9月24⽇(日)
会場:東京芸術劇場 シアターイースト
監修・補綴:⽊ノ下裕⼀
演出・美術:杉原邦⽣[KUNIO]
出演:リー5世 坂口涼太郎 高山のえみ 岡野康弘 亀島一徳 重岡漠 大柿友哉
スウィング:佐藤俊彦 大知
<イベント情報>
木ノ下裕一×<ゲスト>ロバート キャンベル 特別トーク企画
2023年09月23日 (土・祝) 17:00開始(16:30開場)
会場:東京芸術劇場 シアターイースト
全席自由(入場整理番号付・税込) 一般-1,000円/『勧進帳』購入者限定割引-500円
■全国ツアー公演
【沖縄公演】
2023年9月29日(金)~10月1日(日)
那覇文化芸術劇場なはーと 大劇場(特設客席)
【上田公演】
2023年10月7日(土)・8日(日)
サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター)
大ホール(特設客席)
【岡山公演】
2023年10月14日(土)・15日(日)
岡山芸術創造劇場 ハレノワ 小劇場
【山口公演】
2023年10月21日(土)・22日(日)
山口情報芸術センター スタジオA
【水戸公演】
2023年10月27日(金)・28日(土)
水戸芸術館 ACM劇場
【京都公演】
2023年11月4日(土)・5日(日)
京都芸術劇場 春秋座(特設客席)
公式サイト
https://www.geigeki.jp/performance/theater331/
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