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第2回 メジャーデビュー時の心境と今になってわかるプロデューサーの言葉

音楽

インタビュー

ぴあ

今回のツアーは、日比谷野音ライブを訪れたファン、来れなかった人たちへの「鶴の野恩返し返し」と題して全国15か所のライブハウス、ホールで行われる。ワンマンライブ及び久しぶりの対バンライブも行われるツアーに向けて、このインタビューではバンド結成20年の歩みをテーマごとに語ってもらい、5日間連続でお届けする。20周年を迎え、今なおワイワイし続けるする3人組・鶴とはいったいどんなバンドなのか?第2回はメジャーデュビュー時の心境と今になってわかるプロデューサーの言葉について。

「悪のメジャー」みたいな妄想があった

── 2008年にワーナーミュージックジャパンからシングル「恋のゴング」でメジャーデビューするわけですが、そのときの心境って覚えてます?

神田 覚えてます。そもそもベースを始めた15歳から何故か根拠のない自信があって、「プロになれそうな気がするな」っていう気持ちはずっとあったんです。だけどプロになるんだったら、ある程度音楽の知識やテクニックがないと、たぶんメジャーデビューしたら怖い楽器指導の先生みたいな人がいて、自分が足りない部分をボコボコに言われるんだろうなって妄想してたんですよ。だから、メジャーデビューするっていうことに関して恐れていたんです。でもデビューしたら、もちろんそんなことはなくて、自分たちのやれる演奏を精一杯やることで、ライブやレコーディングが進んで行ったので、「あ、意外と怖いところじゃないんだな」っていう感想が、最初の1年ぐらいはありました。いつ、「たいして弾けないじゃん!」みたいなことを言われるのかなっていう気持ちで警戒してたんです。

── なんなら、違うスタジオミュージシャンの人を連れてこられたり?

神田 そう、レコーディングだけ上手い人が弾きに来るみたいな。勝手にそういう「悪のメジャー」みたいな妄想があったんですよね(笑)。それを恐れていたんです。

秋野 そうなんだ? 神田君がそんな不安に思ってたなんて、初めて聞いたよね?

笠井 うん、知らなかった。初めて聞いた。

神田 言ったことないからね。

秋野 僕も不安はもちろんありましたけど、どん君もさっき言ったように、鶴は曲にも最初からなぜか自信があって、それがひとつずつ実を結んで結果に繋がった先のメジャーデビューだったので、「やっと掴んだぜ」っていう感覚は誰もなかったと思います。

笠井 「目指せメジャーデビュー!」っていう感じでやってこなかったというか、とくに「プロになるぞ」っていう覚悟でやってなかったというか。

秋野 メジャーデビュー直前に、当時所属してた事務所の社長に、「音楽でごはんを食べて行く気ある?」っていう話をされたので、たぶんそのときまで誰も音楽でごはんを食べて行こうって考えないままやってたんですよね。25歳ぐらいまで。

神田 本当にその瞬間瞬間にしか生きてないというか。ただ楽しいからバンドやってますっていう感じだったと思うんですよね。

笠井 先のことを何にも考えてなくて、なんとなく良いものをやっていけばお客さんが増えていくだろうなぐらいしか考えてなかったので、その先のメジャーデビューとかまったく考えてなかったです。

神田 今考えると、めちゃくちゃヌルい発想だよね(笑)。

笠井 そうだよね(笑)。でもメジャーデビューにあたって、ちゃんと覚悟しなきゃいけないんだなって思いました。

何度も歌詞を書き直したメジャーデビュー曲「恋のゴング」

── メジャーになってから具体的にどんなところが違いましたか。

秋野 デビュータイミングから、今までにない状況で曲を書くっていう感じだったので、そこだけは緊張感があって、なかなか上手く進まないこともありました。例えばレコード会社の人に響く曲が書けないとか、そういう時間は続きましたね。次のシングルをどれで行こうかっていう前に、曲をある程度用意しなきゃいけないので作るんですけど、何曲書いてもピンときてくれなかったりとか、できたとしても歌詞を何度か書き直したりとかっていうことはありました。全部が全部がそんなに厳しいわけじゃないですけど、デビュー曲「恋のゴング」は何度か書いて、歌詞がどんどん変わって行ったことを覚えてます。

神田 最初にあっつぃが書いた「恋のゴング」の歌詞を、結構メンバーは気に入ってたんですよ。それをレコード会社の担当者に「ここをもっとキャッチーに変えてくれ」って言われて。それがあんまり、こっちとしては乗り気じゃないときがあったよね?

笠井 あれは一番最初、3人で書いてるんだよ。それをあっつぃがひとりで書き直したんだよね。だからこっちは書き直しのプレッシャーはなかったもんね(笑)。

神田 でもたぶん、「最初の方が良いのにな」って思ってたんだよね。あの曲の歌詞って、「ラウンド」が進んで行くんですけど、あそこがなかったんじゃないかな。〈バーニンラブラウンド1〉っていう歌詞は、最初〈バーニンラブまだ燃えちゃダメ〉って歌詞だったんですよ。

「恋のゴング」YOUTUBE

── へえー!

秋野 あったね~。

笠井 〈バーニンラブ〉って言いながらすぐ否定されるっていう。

神田 もっとインパクトを付けたいっていう話を確かされたような気がするんですよね。それで〈ラウンド7〉〈ラウンド9〉って、後の歌詞も変えて行ったんです。

秋野 戻されて、「もうひと声!」って何度もトライするような感覚だった気がします。

神田 担当の人はめちゃくちゃ良い人だったので、高圧的な感じでは全然なかったですね。

ふたりのプロデューサーに10年経って同じことを言われた

── 「恋のゴング」はバンド名義の作詞作曲ですか?

神田 作詞作曲・鶴、編曲がホッピー神山さんですね。

── ホッピー神山さんはプロデューサーとして関わっていたんですか?

秋野 そうです。デビュー前の作品からやってもらってました。当時、PINKのキーボーディストのホッピー神山さんという存在を知らなくて、「なんかファンキーで変なおっさんが来たなあ」みたいな(笑)。今振り返ると、最初にプロデューサーとして入ったのがホッピーさんで良かったなと思いました。バンドマン的な普通じゃない発想があるというか。鶴のバンドとしての面白みを殺さずに料理してくれたなっていう感覚がありました。

── ひとくちにプロデューサーといっても、どこまでバンドに関わってくるのか人によって違うと思うんですけど、ホッピーさんはどんな感じでしたか?

神田 全然、バンドの中まで全部とっかえてやるみたいな関わり方ではなかったですね。

秋野 うん、そうだね。鶴で作った曲にプラスアルファで世界を広げるために、(鍵盤などの)上物を入れてくれたりとか、もしくはレコーディングの段階だと「こういうことをやってみたいから、こういうプレイはどうかな」っていう提案だったりしたので、「絶対こっちの方が良い」みたいな物言いはされなかったですね。僕らの中では、プロデューサーってそういうイメージを持っていたんですよ。バンドからすると不本意なことにもなっちゃうのかなみたいな(笑)。

── 神田さんが言っていた、「悪のメジャー」のイメージですね。

神田 バーンっと入ってきて、「全部とっかえるぞ」みたいな(笑)。

笠井 でもそういうのはなかったし、良い意味でざっくりしてたというか。言い換えると適当というか。「あ、リズムがバッチリ合ってないけどそれでいいんだ?」みたいな。

秋野 ホッピーさんが一番ズレてたもんね。

神田 そうそう(笑)。

笠井 でもそれでいいんだっていうか、バンドのこだわるべきところってそこじゃないんだねっていう。細かいところに目線をやらなくていいんだなって。

秋野 適当でいいっていうか、「ズレてていい」って言ってたもんね。

笠井 ズレてることが悪いことじゃなくて、もっと全体をざっくりと見た方が良いんだっていうことが、今になればね。

神田 わかるよね?

秋野 それをホッピーさんから言われて10年後ぐらいに、磯貝サイモン君をプロデューサーに迎えて制作をすることになるんですけど、サイモン君とレコーディングに入ったときに、同じようなことを言われてるんですよ。「鶴は真面目過ぎる」って。「合わせようとしなくて良いから、もっと違うことを考えてやった方が良い」っていうことを言われて、そのときに振り返って、ホッピーさんも同じようなことを言おうとしてのかなって思いましたね。

── 生真面目な感じがあるんですかね?

神田 “3人で立ってる感”が強かったんですよね。さっき話した、全員で歌詞を書いて責任を取りたくないとか、良くも悪くも、「ひとりじゃ立てないけど3人でバランスを取ったら立てる」みたいな状況のバンドだったので。演奏に関しても、“合わせに行く”みたいなグルーヴ感だったんです。たぶん、それを直したかったのかなって感じていて。やっぱり、良いミュージシャンってひとりで立ってると思うんです。ひとりで立ってるミュージシャンが集まってるから、カッコイイグルーヴが生まれるみたいな。ホッピーさんがズレてたっていうのは、ホッピーさん1人が立ってたんだよね。俺らは3人で寄りかかってるけど、ひとりで立ってるからズレてたんだと思う。

笠井 自分のグルーヴで演奏しちゃってるんだ。

神田 そう、それが集まるのが、たぶんトップクラスの演奏だと思うんですよ。サイモン君もそのへんを言いたいけど、直接言うと伝わらないから、「適当にやれよ」って言ったんだと思うんですよね。「もっとひとりずつ好きに演奏すればいいのに」みたいな。今になってそういう解釈をしてます。

Text:岡本貴之 Photo:石原敦志

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ライブ情報

「結成20周年記念TOUR 鶴の野恩返し返し -みんなにワイワイをお返ししに行く会-」
11月3日(金祝)宮城県・仙台LIVE HOUSE enn 2nd ※ワンマン公演
11月5日(日)北海道・札幌PLANT ※ワンマン公演
11月18日(土)岩手県・the five morioka ゲスト:FUNKIST
11月19日(日)青森県・弘前KEEP THE BEAT ゲスト:FUNKIST
12月2日(土)福島県・OUTLINE※ゲスト有り
12月9日(土)愛知県・名古屋ElectricLadyLand ※ワンマン公演
12月16日(土)新潟県・CLUB RIVERST ※ゲスト有り
12月17日(日)石川県・金沢AZ ※ゲスト有り
1月7日(日)東京都・ ヒューリックホール東京 ※ワンマン公演※リベンジ公演
1月13日(土) 香川県・高松DIME ゲスト:BRADIO
1月14日(日) 愛媛県・松山WstudioRED ゲスト:BRADIO
1月20日(土)福岡県・ DRUM Be-1 ※ワンマン公演
1月21日(日) 広島県・CAVE-BE ※ゲスト有り
1月27日(土) 岡山県・CRAZYMAMA KINGDOM ※ゲスト有り
1月28日(日) 大阪府・BIGCAT ※ワンマン公演

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https://lp.p.pia.jp/article/news/288143/index.html

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鶴オフィシャルサイト:https://afrock.jp/

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