第3回 曲作りとコーラスへのこだわりについて
音楽
インタビュー
鶴 左から)笠井“どん”快樹(Ds&Cho) 、秋野温(Vo&Gt)、神田雄一朗(Ba&Cho)
今回のツアーは、日比谷野音ライブを訪れたファン、来れなかった人たちへの「鶴の野恩返し返し」と題して全国15カ所のライブハウス、ホールで行われる。ワンマンライブ及び久しぶりの対バンライブも行われるツアーに向けて、このインタビューではバンド結成20年の歩みをテーマごとに語ってもらい、5日間連続でお届けする。20周年を迎え、今なおワイワイし続けるする3人組・鶴とはいったいどんなバンドなのか? 第3回はそれぞれの曲作りとコーラスへのこだわりについて。
歌謡曲をロックでアウトプットしてソウル、ディスコのテイストを加えたのが鶴の曲
── そもそもオリジナル曲っていつぐらいから鶴でやっていたんですか?
秋野 学生時代は、THE YELLOW MONKEYのコピーをしていたんですけど、鶴を初めてからは最初からオリジナル一本です。
笠井 鶴の前のバンドで4人でやっているときに、3人でやりたいねっていう話があって、もうあっつぃはオリジナル曲を作り始めてたんだと思う。
神田 「サヨナラ」と「青い羽」(共に2004年『素敵CD』に収録)でしょ?
笠井 そう。それはもう、前のバンド解散前に作ってた気がする。
秋野 解散する気で?(笑)。まあ曲づくり自体は、以前から他のバンドでやってたりもしたので。だからなんとなく自分の中の作り方はあったんでしょうね。でもその時はミクスチャーバンドみたいなことをやっていて、とにかくギターリフとシャウトばかりの曲だったので、ちゃんと歌とメロディがあるものを書いたのは鶴が初めてでしたね。小学生の頃から歌謡曲が好きだったので、なんとなく歌モノのイメージだけは頭の中にありまして、そこから高校生なってTHE YELLOW MONKEYをコピーしまくったので、結果歌謡曲のアウトプットをロックでやるという、まさにイエモンなんですけど(笑)。そこから鶴流にディスコとソウルのテイストを入れて行ったら、「こんな感じかな」って鶴の曲が始まった感じです。
── 鶴の曲には、秋野さんだけじゃなくて、笠井さんと神田さんが書いている曲もありますけど、最初から書ける人は書こうっていう感じだったんですか。
秋野 最初は3人で書いてました。たまたま最初の元ネタを僕が書いただけであって。
笠井 メロディをあっつぃが持ってきて、3人で集まって歌詞を書いたんじゃないかな?
秋野 歌詞が書けなかったんですよ。どういう言葉を使えばいいかわからないし、ひとりで書く恥ずかしさもあったりして、とりあえず全員で書いてみようと。みんなで書けば、みんなの総意だから、みんな恥ずかしいじゃんって(笑)。それで曲とメロディの元ネタは自分が作るから、歌詞はみんなで書きましょうってインディーズ時代のCDは作ってました。でもインディーズ2枚目のアルバム『浪漫CD』あたりは、試しに全部自分で書いてみようと思って、個人名義の曲がちょこちょこ始まってるんです。
鶴の曲にタブーはない
── 3人それぞれ曲を書くとして、「鶴の曲はこう」っていうものはあるでしょうか。
秋野 僕はどっちかというと、自分の中で生まれた感情をそのまんま自分の人生観として言葉に書き下ろすことが多いので、自分の主義主張を柔らかく言うっていうものしか書けないなって思ってます。どん君は、僕よりももっと武器が多いというか、視点が多いと思います。
笠井 僕は何を書いたらあっつぃが歌ってくれるのかわからないので、できたら全部聴いてもらって、歌えるやつを歌ってほしいなっていう感じです。だから、自分的には鶴の曲にタブーはなくて、色んなタイプの曲を書いて行って、その中から鶴としてやれるものをチョイスしてもらうっていう感じです。
── この曲は自分で歌いたいっていうことはないんですか?
笠井 一個もないです。
一同 (笑)。
笠井 すごく上手に歌えるものなら歌いたいですけど、絶対あっつぃが歌った方が曲の良さが伝わるから、そっちの方が良いです。ドン・タカハシでは1曲だけ歌ってますけど。
秋野 そろそろ歌っていいと思うんだけどね。
神田 そうだよね。
笠井 全然歌いたいなって思わないから。
秋野 歌い始めた人(神田)がいるんだから。
神田 俺は自分が書いた曲は自分で歌いたいから。2曲しかないですけど(「Funky Father」/『ニューカマー』に収録)と「Waiting Mother」/『普通』に収録)。
── 曲を書いて、秋野さんに歌ってもらおうということはなかったですか。
神田 もともと曲を書かない人間なので、それはないですね。自分の曲の役割としては、“異物感”というか、絶対鶴がやらなそうな曲がいいなと思っているので、それはべつにあっつぃに歌ってもらう必要がないっていうか。
秋野 いやいや、単に自分が歌いたくて書いてるんでしょ?(笑)。
神田 本当は、野音で「Funky Father」をやれたらいいよねっていう話はしたんですけど、落選しました(笑)。
── 異物感、とはいえ神田さんのファンキーなベースが鶴の売りのひとつでもありますよね。
神田 そうですね。個人で言うと、あっつぃの主義主張、どん君の創造する世界観ってあると思うんですけど、俺はもう歌詞のメッセージは何もなくて良いと思ってるので。内容は関係ないので英語の詞だと思って聴いてください(笑)。とにかくふたりがやらなそうなことをやろうっていう感じです。
コーラスを多用する理由とは
── コーラスを多用するのも鶴の特徴ですよね。これはどういう発想から生まれたんですか。
秋野 3ピースバンドに衝撃を受けて3ピースバンドを始めたので、「3人でなんとかしてやろうぜ」っていう気持ちが最初からあるんですよ。でも好きな音楽性がソウル・ミュージックってなると、大所帯なビッグバンドとかになってくるわけで、ホーンのアレンジとかもストリングスの綺麗なラインも入れたいけど、3人でどうやってやろう?って考えたときに、「じゃあ歌えば良いじゃん」って、コーラスをバンバン入れるようになったんです。だからまあ、苦肉の策だよね?
── 3人でアカペラの曲を作ったりしたこともあるんですか?
秋野 僕のソロでアカペラのコーラス作品を作ったことはあるんですけど、3人ではまだないですね。良いアイデアもらったね。
神田 今後いいかもしれないね。
笠井 怖いこと言うじゃないですか(笑)。
── いやいや、単純にそう思っただけです(笑)。綺麗に3声でコーラスをキメるってきっとむずかしいと思うんですけど、それは最初からスムーズにできたんですか。
秋野 20年間ず~っと、「できない」って言われ続けてるんですけど、でも毎回用意するんですよ。
笠井 やりやすいラインにしてくれって言って、コーラスを取りやすいところを俺が取って、むずかしいところは神田君にやってもらってます。
神田 わざわざ難易度を高くするよりは、曲の雰囲気を出すために、やれる範囲でどのラインが良いのかっていう棲み分けができてますね。あと、楽器を弾きながらコーラスができる3ピースバンドってカッコイイじゃないですか? そういう憧れもあります。3人で3つの楽器と3つの声でやってるカッコよさが鶴にはあるので。4人、5人編成のバンドと対バンしたときに「負けたくない!」って思うんです。それが醍醐味、楽しみだったりしますね。
秋野 上手さじゃない良さみたいなね。ヘタクソでも良いから、3人で色んな歌を歌おうとしているっていう。僕らの中でのイメージは、ベン・フォールズ・ファイヴなんですよ。彼らって、音源を聴くとあんまりコーラスが上手くないなって思うんですけど、でもやりたいことはすごく伝わるので。ああいう感じあれば良いかなって、勝手に思ってます。
Text:岡本貴之 Photo:石原敦志
ライブ情報
「結成20周年記念TOUR 鶴の野恩返し返し -みんなにワイワイをお返ししに行く会-」
11月3日(金祝)宮城県・仙台LIVE HOUSE enn 2nd ※ワンマン公演
11月5日(日)北海道・札幌PLANT ※ワンマン公演
11月18日(土)岩手県・the five morioka ゲスト:FUNKIST
11月19日(日)青森県・弘前KEEP THE BEAT ゲスト:FUNKIST
12月2日(土)福島県・OUTLINE※ゲスト有り
12月9日(土)愛知県・名古屋ElectricLadyLand ※ワンマン公演
12月16日(土)新潟県・CLUB RIVERST ※ゲスト有り
12月17日(日)石川県・金沢AZ ※ゲスト有り
1月7日(日)東京都・ ヒューリックホール東京 ※ワンマン公演※リベンジ公演
1月13日(土) 香川県・高松DIME ゲスト:BRADIO
1月14日(日) 愛媛県・松山WstudioRED ゲスト:BRADIO
1月20日(土)福岡県・ DRUM Be-1 ※ワンマン公演
1月21日(日) 広島県・CAVE-BE ※ゲスト有り
1月27日(土) 岡山県・CRAZYMAMA KINGDOM ※ゲスト有り
1月28日(日) 大阪府・BIGCAT ※ワンマン公演
★9月18日(月) 23:59までぴあアプリ先行実施中
https://lp.p.pia.jp/article/news/288143/index.html
関連リンク
鶴オフィシャルサイト:https://afrock.jp/
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