今、知っておきたい超若手芸人 Vol.3 人力舎の新星コント師・キャプテンバイソン(後編)
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キャプテンバイソン。左から高野哲郎、西田涼。
ネタ以外のパーソナルな部分を知る機会の少ない芸歴5年目以下の“超若手芸人”に注目するインタビュー企画。第3回は「UNDER5 AWARD」の第1回大会で準優勝に輝いた人力舎の新星コント師・キャプテンバイソンが登場する。
コンビ結成の経緯、「UNDER5」の舞台裏を語ってくれた前編に続き、後編では西田の海や魚への愛、高野の“瞳奪い”なる活動、憧れの先輩、今後の目標などを語ってくれた。
取材・文 / 塚越嵩大
海が必要な西田、“瞳奪い”の高野
──キャプテンバイソンさんはまだミステリアスな部分も多いですが、コンビ間でお互いの性格を解説するとしたら?
高野 西田を一言で表すなら「お金のないマルフォイ」。
──お金のないマルフォイ?
高野 マルフォイはご存知ですか? 「ハリー・ポッター」の。そのまんまですね。見た目も性格もマルフォイです。取り巻きにあおいちゃん・おもてというデカい奴を連れていますし。
──そんなに邪悪な感じなんですか?
西田 そこまで邪悪じゃないはずなんですけどね……。高野は、僕から見ても芯の部分はまだわからない感じがします。マジで二重人格なのかなと思ったときもあって、捉えどころがないです。
──二重人格だと思ったきっかけは?
西田 一日中遊んだ次の日に会ったら、すごくダウナーな感じになっていて。「あれ、昨日の楽しいやつがリセットされた?」みたいな。よくわからないなと思いました。
高野 それは遊んだ日、彼がマルフォイだったからじゃないですか? 自分はずっと笑ってたけど、俺はずっと最悪な思いをしてたとか(笑)。
西田 そうなの?(笑)
──西田さんは子供の頃から海や魚がすごくお好きだそうですね。
西田 はい。もともと親が海好きで、小さい頃から連れていってもらって、僕の名前も「海(かい)」になる予定だったんです。物心つく頃には海に行くのが当たり前になっていて、行かないと体に震えがくるくらい。好きというよりは必要なものって感じです。海の何が好きなのか自分でもわからない。
──今後は海関連の活動も?
西田 元スダンダップコーギーの三森さんがカブトムシやクワガタを育てる「クワカブの部屋」というYouTubeチャンネルをやってるじゃないですか。あれの魚版みたいなことをしたいので、どうやってあそこまでの設備を整えたのか聞いてみたいです。三森さんはYouTube用に家を丸ごと借りてるじゃないですか。初期費用とかどうしたんだろう……。
──一方、高野さんは、いろんな芸人にフレームの小さいサングラスをかける「瞳奪い」という活動もしてますよね。これはどういうきっかけで?
高野 もともと自分のビジュアルがメガネとヒゲだったんですけど、人力舎ライブに行くと「トンツカタン櫻田さんみたい」と言われていたので、何かしらの差別化を図りたかったんです。そんなときに小さいサングラスと出会って「これだ!」と。実際に着けて舞台に出たら芸人仲間の反応もよくて、みんなが「かけさせて」と言ってきたんです。
──ここで高野さんのトレードマークが小さいサングラスになった。
高野 はい。ほかの芸人がサングラスをかけてる写真もアップしていたんですけど、「面白サングラスをかけてもらいました」はシャバすぎるじゃないですか。もっと素敵な言い回しがないかなと思っていたら、マセキの後輩の清水駿平が「高野さんが瞳にブラックホールを生み出してました」と表現していて、それは面白いなと思って自分も「瞳を奪うブラックホールだね」と言い出して、そこから“瞳奪い”というワードが生まれました。
──面白さ、おしゃれさ、カッコよさを兼ね備えたサングラスですよね。
高野 いっぱい集めてるので、いずれサングラス側から何かしらのオファーがこないかなと思ってます。
──ジャルジャルの福徳さんも小さいサングラスを集めているので、いつかお気に入りのコレクションを見せあう対談ができたら面白いんじゃないかと思っています。
高野 ジャルジャルさん、すごく好きなのでやってみたいです(笑)。福徳さんのは楕円形でちょうど瞳にピッタリ重なるんですよね。あれも面白い形だなと思ってます。
──高野さんは小さいサングラス以外で、西田さんにおける海のような「これが好きだ!」というものはありますか?
高野 僕の場合は好きなものがけっこう移り変わっちゃうんですよね……。今は「ベーコンエピ」っていうパンです。見つけたら買うようにしてます。
──すぐ変わりそうですね。
高野 来週には変わってると思います。
西田 ただのミーハーじゃん!
間近で見ていた岡野陽一の覚醒
──憧れている先輩芸人は?
高野 「ココリコミラクルタイプ」をよく観ていたので、そのときからココリコ田中さんに憧れています。最初に芸人になりたいと思うようになったきっかけの方なので。あとはジャルジャルさん、おぎやはぎさん、ラバーガールさん、真空ジェシカさん……。
西田 僕は初めて笑ったのがMr.ビーンで、憧れているというよりは永遠のスターという感じです。言葉がないのに笑えるってすごいなと。顔、演技、キャラクターの大切さを実感したのもMr.ビーン。日本の芸人だと、くりぃむしちゅーの有田さんです。ボケ、ツッコミ、回し、本当になんでもできるじゃないですか、あんなに死角がない人ってなかなかいない。ステータスが違いすぎて目指せる人だとも思っていないので、ただただ尊敬です。
──「賞金奪い合いネタバトル ソウドリ~SOUDORI~」(TBS)では有田さんがキャプテンバイソンさんのネタをすごく褒めていました。
西田 そうなんですよ! めちゃめちゃうれしかったです。
高野 「有田ジェネレーション」にはCITY OF SLEEZEも出てるので、我々の世代は有田さんにお世話になりっぱなしですね(笑)。
西田 事務所の先輩だと岡野陽一さんもカッコいいなと思っています。去年、吉住さんとのユニット(最高の人間)で「キングオブコント」に出てたじゃないですか。人力舎のライブで直前の調整をしていたんですけど、そのときの岡野さんの集中力がすごかった。普段は「ネタとか別にいいよ」という雰囲気を醸し出してるのに、ちゃんと闘志があって。吉住さんに聞いたら、案もすごく出すと言っていて、僕ら若手からすると「眠れる獅子が再び動き出した」みたいな感じがあって、その姿は間近で見てると本当に輝いてました。でも僕らにも気さくに話しかけてくれるし、いい先輩です。
──芸歴が近い芸人で面白いと思うのは?
高野 ゼンモンキー。プロになって最初に呼んでもらった事務所以外のライブが一緒で、そこからの仲で、ずっと面白いです。あとはツンツクツン万博、10億円、人間横丁……。
西田 人力舎だと、1個下の後輩のあおいちゃん。ネタではとにかく外さない。飛んだ設定も多いのにわかりやすい。
高野 あと今、面白すぎると言ったらセンチネルさん。
──トミサットさんのハーフキャラが注目されることが多いですけど、実はシンプルにネタがかなり強いですよね。
高野 本当にそうなんですよ。番組で一緒になったときも、大喜利企画でトミサットさんがバンバン面白い答えを出していて、単純に地肩が強すぎる。ウガンダとのハーフというキャラクターを一切使わなくても余裕でその場を制圧できるし、もちろん大誠さんのツッコミの技術とか面白さもすごくて。平場もネタも脅威的だなと思います。
西田 「UNDER5」繋がりだと、あくびぼうや。あの空気感は誰とも被ってないし、毒を吐いても憎めないようなキャラクターが大好きです。……仲がいいから好きなだけかな(笑)。
高野 それでいうと金魚番長さんも、すごさを実感させられることばかりです。いまだに「UNDER5」優勝ネタを超える漫才を量産してるので、「ちゃんと後を追っていかないと!」と感じます。次回の「UNDER5」は初代王者の金魚番長さんをどれだけ超えられるかの勝負にもなってくるかと思うので、ちゃんと超えた上で優勝したいです。
ミステリアスぶってる場合じゃない
──今後出てみたい番組は?
高野 「ココリコミラクルタイプ」や「LIFE!」みたいなシチュエーションコント系の番組に出たいです。「LIFE!」は事務所の先輩のドランクドラゴン塚地さんが出ていて、あの路線は憧れます。あそこまでいけたら結構やりたいことないかも(笑)。
西田 僕は「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ系)の「オーシャンズ金子」とか、「いきなり!黄金伝説。」(テレビ朝日系)のサバイバル企画みたいなものに興味があります。もちろん「めちゃイケ」みたいな番組にも出たいです。
──お二人が出演した「深夜のハチミツ」(フジテレビ)は、「めちゃイケ」が生まれるきっかけになった「新しい波」に雰囲気が似てますよね。参加してみていかがでしたか?
高野 単純に、もっとがんばれたんじゃないかって(笑)。1本目の収録で自分たちが期待してたほどの結果を出せなくて、そこからペースが乱れて引きずってしまったんです。次回があるとしたら、自己紹介的なものをがんばること、序盤で失敗しても引きずらないことが大切だなと思いました。ミステリアスぶってる場合じゃないぞと(笑)。
西田 MCの人に「大丈夫か?」と警戒させちゃいました。
高野 もうちょっと早く敵じゃないことを伝えるのが課題です。
──今後露出していくにあたって、自分たちの強みや武器になる部分はどこだと思いますか?
西田 ネタでいうと、やっぱり高野の演技力じゃないですか? ボケの言い方とか。
高野 2人とも演技の幅が広いわけではないんです。むしろ表現できる範囲は少ない。ただ、その少ないところをちょうどよく組み合わせてネタにするのはうまいんじゃないでしょうか(笑)。あと、よく独特な雰囲気のコントをしてるコンビに見られるんですけど、実は俺って「モノマネやあるあるをしたいだけ」みたいな気持ちなんです。それをうまく隠せてるとは思います。
──確かに「UNDER5」決勝のネタにもKing Gnuのモノマネや共感の笑いも織り交ぜられていました。
高野 変なことを言ったあとにすぐ普通に戻るというか、遠くまで飛ばしたあとに引き戻すみたいなのが好きなんです。揺さぶりたい。
──なるほど。では最後に今後の目標を教えてください。
高野 今って2023年ですよね? ……「キングオブコント2026」優勝で。
──3年の猶予が。
西田 それを踏まえると来年は準決勝までいきたいです。
高野 あと、今しかもらえない仕事をちゃんとやっていきたいです。この前、ファッション誌に載せてもらいましたけど、こういう仕事は若いからできている仕事だと思ってるので、好き嫌いで選ばず全力で取り組みたいです。
西田 なんでもやる所存です!
キャプテンバイソン
西田涼(ニシダリョウ)
1993年6月9日生まれ、東京都出身。
高野哲郎(タカノテツロウ)
1994年6月12日生まれ、栃木県出身。
略歴
スクールJCA28期生の西田涼と高野哲郎が2020年1月に結成。「キングオブコント2022」では結成2年目ながら準々決勝まで進出。2023年に芸歴5年目以内の若手芸人を対象とした賞レース「UNDER5 AWARD 2023」で準優勝して話題となった。