沖縄の新たな映画祭「Cinema at Sea」コンペ9作品発表、審査委員長はアミール・ナデリ
映画
ニュース
「ゴッド・イズ・ア・ウーマン」場面写真
第1回 Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバルが11月23日から29日にかけて沖縄・那覇市内を中心に開催。記者会見が本日10月11日に東京都内で行われ、コンペティション部門のラインナップが発表された。審査委員長は「CUT」で知られるイラン出身のアミール・ナデリが務める。
「現代の地図をいったん忘れて、海から見る」
優れた映画の発掘と発信を通じ、沖縄が環太平洋地域において新たな国際文化交流の場となることを目指す本映画祭。2018年に石垣島で行われた映画祭「Cinema at Sea」が、海洋文化を通して島々をつなぐことを目的に新たな国際映画祭として始動した。テーマは「太平洋、海をまなざし、海を知る。」。
エグゼクティブディレクターを務めるのは、「海の彼方」「緑の牢獄」で知られる台湾出身・沖縄在住の映画監督である黄インイク。彼は「映画は世界の窓のように島々をつないでくれる。違う文化や国の人々が沖縄に集まることで、また新しい文化が生まれる。それが『Cinema at Sea』のビジョンです。現代の地図をいったん忘れて海から見ると、自分のいる世界が広がる。そのような体験を観客の皆さんにしていただきたい」と語る。
オープニングとクロージング作品は?
オープニングを飾るのは、沖縄在住の写真家・石川真生のドキュメンタリー「オキナワより愛を込めて」。1970年代から沖縄の米兵やそこで暮らす人々を撮り続ける石川に、米ニューヨークを拠点に活動する砂入博史が密着した作品だ。監督の砂入は、映画で重要なモチーフとなる石川の写真集「赤花 アカバナー沖縄の女」を手に登壇。石川の活動を「沖縄スピリットを体現した写真家。沖縄の持つ複雑で特異な文化背景、日本復帰によって分断化もされた沖縄市民たちの中を生きてきた人」と紹介する。クロージング作品はオーストラリアとニュージーランドの合作「私たちはここにいる」に決定。10人の監督が8本の短編を制作したオムニバスで、南太平洋の歴史や現代社会の問題を扱った劇映画、アニメーションなどで構成されており、黄は「太平洋の映画の力を見せてくれる。本映画祭の精神にぴったりな作品」と話す。
コンペは環太平洋地域から選りすぐった9作品
コンペティションには環太平洋地域から集まった作品の中から9本が入選。さまざまな暴力にさらされる黒人の少女の過酷な旅路を近未来SFのテイストで描く「サバイバル」、人間に擬態した緑色の黄金虫がダンサーの女性に出会うマジカルな台湾映画「緑の模倣者」、パプア民族の監督が初めてパプアを題材に描いた劇映画にして、ジャンル映画の魅力もあわせ持った「オルパ パプアの少女」、越川道夫が松田正隆による同名戯曲を映画化した「水いらずの星」、とある女優が1980年代のマカオを回想しながらアイデンティティの揺らぎに直面する「ロンリー・エイティーン」などが並んだ。またドキュメンタリー作品から「ゴッド・イズ・ア・ウーマン」「クジラと英雄」「BEEの不思議なスペクトラムの世界」も選出。会見には日本から唯一の出品となった「水いらずの星」の監督・越川と、主演・プロデューサーを務めた河野知美も登壇した。
プログラム選考委員の上原輝樹は、選定の趣旨を「環太平洋地域でどのような映画が作られているのか、私たちも映画祭を始めるまで詳しくわかっていたわけではなかった。私と黄さんを含めた4名のプログラマーで選びました。新しい才能を発掘しつつも、ベテラン監督の新作もある。まずは、この地域で撮られている良質な映画、現代性のある映画を紹介することが主な目的です」と明かした。コンペティションはナデリを含む5名によって審査される予定だ。
尚玄「映画祭は出会いの場」
会見の後半には、映画祭の公式アンバサダーを務める那覇出身の俳優・尚玄、映画「ばちらぬん」で知られる映画監督・俳優で、映画祭運営団体の理事に就任した東盛あいかも出席した。尚玄は「僕らの愛する沖縄で新しい映画祭ができることを心からうれしく思っています」と述べつつ、自身が主演・プロデューサーを務めた「義足のボクサー GENSAN PUNCH」の監督ブリランテ・メンドーサと出会ったのも、国際映画祭の場であったことを述懐。「映画祭は素晴らしい映画を上映する場でもありますが、それプラス、出会いの場でもある。いろんな国の人が集まって、純粋に映画について話す。そこから生まれてくるものがある。僕も身をもって感じたので、沖縄がそういう場になってくれたらうれしい」と期待を込める。
東盛あいか「この海が私たちをつなげている」
与那国島出身で映画にほとんど触れることがない環境で育ったという東盛は「沖縄を出てから映画を観るようになり、作るようになり、そして映画を届けるようになった。自分が島にいたときは閉鎖的に感じていた場所が、実は映画を通してつながることができる可能性を秘めている場所なんだと強く感じました」と回想。本映画祭の理念に共鳴しながら「海に囲まれている私たちは閉鎖的ではなく、この海が私たちをつなげている。映画を通して教えてもらった気がします。本映画祭が海を通して、私たち沖縄が中継地点となって、国際的な映画祭になっていくことを強く望んでいます」と続けた。
「Cinema at Sea 」では日本初上映を多数含む、およそ40作品を上映。コンペティションのほか、環太平洋地域の島々から注目の監督を取り上げる「Director in focus」、日本未公開作を中心に環太平洋で制作された映画を紹介する「Pacific Island ショーケース」、南城市のあざまサンサンビーチを利用した野外上映、映画祭からマブイ特別賞が贈られる映画監督・高嶺剛の特集なども行われる。ラインナップは下記の通り。
第1回 Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル ラインナップ
2023年11月23日(木・祝)~29日(水)沖縄県 那覇市ぶんかテンブス館、桜坂劇場、那覇文化芸術劇場 なはーと、タイムスホール、シネマパレット、あざまサンサンビーチ
オープニング
「オキナワより愛を込めて」
クロージング
「私たちはここにいる」
コンペティション
「アバンとアディ」(マレーシア)
「サバイバル」(オーストラリア)
「緑の模倣者」(台湾)
「ゴッド・イズ・ア・ウーマン」(パナマ、スイス、フランス)
「オルパ パプアの少女」(インドネシア)
「クジラと英雄」(アメリカ)
「BEEの不思議なスペクトラムの世界」(フランス)
「水いらずの星」(日本)
「ロンリー・エイティーン」(マカオ、香港)
特別セレクション Director in focus(クリストファー・マコト・ヨギ)
「誠」
「お化け」
「アキコと過ごした八月」
「シンプル・マン」
Pacific Island ショーケース
「どこにもない場所の記録」
「岸を離れた船」
「台湾のイケメン・フィリピーノ」
「GAMA」
「先祖たちの拒絶」
「ベラウの花」
スペシャル上映
「オキナワ・フィラデルフィア」
「賭ける少年」
「あなたの微笑み」
「最後の楽園コスタリカ ~オサ半島の守り人~」
野外上映
「1秒先の彼」
「大海原のソングライン」
「マブイ特別賞」上映
「夢幻琉球・つるヘンリー」
「パラダイスビュー」
「サシングヮー」
VR体験上映
「The Sick Rose」
「Only the mountain remains」
「蘭嶼(らんしょ)の沖で」
「羽毛の夢」
「Mr. Buddha」
「O」
「The Making Of」
「Butterfly Dance」