つねに新しく―覇者ブルース・リウのショパン再び
クラシック
インタビュー
ブルース・リウ ©Yanzhang
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すべて見る「コンクールに勝ってから、ワルシャワを第2の故郷だと思っているのですが、日本はもはや第3の故郷。とても親しみを感じています」
大きな話題を呼んだ2021年のショパン国際ピアノ・コンクール優勝以来、何度も来日して日本のファンを歓喜させているブルース・リウ。2024年2月には、そのショパン・コンクール本選でも共演したアンドレイ・ボレイコ指揮ワルシャワ国立フィルと来日して、ショパンの協奏曲を聴かせてくれる。
「彼らほどショパンの協奏曲を知っているオーケストラはありませんよね。それでいながら新しいアイディアを取り入れることをいとわない、その非常に高い順応性に驚かされました。コンクールの本選は12人のファイナリストがいて、リハーサルが40分ずつしかない中で、マエストロは一人ずつスコアを変えて、全員の特徴に合わせてくれたのです。
その数ヶ月後にアメリカ・ツアーで共演した時、今度はマエストロから『驚いた』と言われました。コンクールの時と全然違う。別のピアニストとやっているみたいだって言うんです。私は常に進化していきたいと考えているので、とてもうれしい言葉でした。今回もまた新鮮な気持ちで臨めると思います。とても楽しみです」
演奏曲のメインはショパンのピアノ協奏曲第2番。ショパン・コンクールではショパンの2曲の協奏曲のどちらかを選択しなければならないが、リウ本人を含め、出場者の大半が第1番を選ぶ。90年超の歴史の中で、第2番を弾いて優勝したのはリウの師であるダン・タイ・ソンとあとひとりしかいない。
「コンクールではどちらにするか、かなり悩みました。理想的には、第1楽章と第2楽章を第2番、第3楽章を第1番で組み合わせて演奏できれば最高なんですけどね(笑)。第2番はショパンが恋に落ちていた時期の作品で、情熱的で、直接訴えかけてくるものがあります。ただ、かなり主観的な作品なので、人によって解釈がまちまちかもしれませんね。2曲とも非常に室内楽的なところがあって、他のどんな作曲家の作品よりも、お互いの音を聴かなければなりません」
10月初めには、第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールのオープニング・コンサートにゲスト出演した。ショパン時代のピアノで競われるコンクール。リウも1858製のエラール社のピアノを弾いた。
「ピリオド楽器を弾くのは、当時の作曲家たちがどう考えていたのか、非常に新しい視点で見ることができて面白いと思っています。現代のピアノだと怖くてできないような冒険も試すことができます。ペダルをミックスしてみたり、軽いタッチで弾いてみたり。絶対音感があるとA=430Hzは気持ちが悪いと思うのですけど、私は絶対音感がないので全然平気なんです。純粋に楽しむことができました」
ショパンを離れた話題も。10月にフランス音楽を集めたニューアルバム『ウェイブス WAVES』をリリースした。バロックのラモー、ロマン派のアルカン、そして近代のラヴェル。200年にわたるフランス鍵盤音楽を俯瞰する。ラヴェルの中に息づく伝統や、ラモーの響きの新しさが感じられて実に面白い。
「彼らの音楽の繊細さや色彩感、ハーモニーが自分にとても合うのではないかと前々から思っていました。それを細かいところまできわめることができたと思っています。『WAVES』というタイトルもとても気に入りました。聴く人がイメージを膨らませることができるし、常に新しくなければならないという、私の音楽哲学にもとてもマッチしていると思います」
いつも新しいブルース。2月のショパンもきっと。
取材・文:宮本明
アンドレイ・ボレイコ指揮
ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団
■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2345880
亀井聖矢出演
2024年2月7日(水) 14:00開演
サントリーホール 大ホール
ブルース・リウ出演
2024年2月7日(水) 19:00開演
サントリーホール 大ホール
2024年2月11日(日・祝) 14:00開演
横浜みなとみらいホール 大ホール
ラファウ・ブレハッチ出演
2024年2月8日(木) 19:00開演
サントリーホール 大ホール
https://www.japanarts.co.jp/concert/p2062/
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