昼型のアーロン・クォック、夜型のトニー・レオン 対照的な2人の初共演を監督が回想
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左から通訳のサミュエル周、「風再起時」監督のフィリップ・ユン、脚本家のスン・フェイ、香港映画祭イベントマーケティングディレクターのレモン・リム。
「香港映画祭2023 Making Waves - Navigators of Hong Kong Cinema 香港映画の新しい力」が、東京・YEBISU GARDEN CINEMAで11月2日に開幕。オープニング作品として「風再起時」が日本初披露され、上映後Q&Aに監督のフィリップ・ユン(翁子光)と脚本家のスン・フェイ(孫霏)が登壇した。
アーロンは情熱的、トニーは物静か
アーロン・クォック(郭富城)とトニー・レオン(梁朝偉)が本格的に初共演した「風再起時」は、警察官による汚職が横行していた1960年から1970年代の香港を背景としたクライムサスペンス。観客から一番多く挙がった質問は、アーロン・クォックとトニー・レオンの起用について。フィリップ・ユンは2人を「対照的なキャラクター」だと述べ、「アーロンとは以前も一緒に仕事をしましたが、情熱的で周りへの影響力がある人。一方のトニーは物静か。だから正直、2人の間で面白いエピソードは何もありませんでした(笑)」と振り返る。しかし2人が会話を交わす場面をよく見かけたそうで、「『最近どんな映画を観た?』『最近の映画界ではこんなことが起きてますよね』など話していました。話題の多くは『風再起時』の脚本についてだったようで、お互いに楽しそうな雰囲気でした」とほほえんだ。
また2人のスタイルの違いを「昼型・夜型」という表現でも比較。「アーロンは“昼型”。現場では私よりも要求が高かった。トニーは“夜型”で、撮影中は物静かだけど、夜になると私のところにショートメッセージをバンバン送ってくる。『今日のシーンはどうだった?』『明日の撮影はどうする?』と。しょうがないので、仕事が終わったあとも一生懸命トニーとテキストで役柄の話をしていました(笑)」と打ち明けた。
マイケル・ホイは監督にとってのアイドル
本作には「Mr.Boo!」シリーズで知られるベテラン俳優マイケル・ホイ(許冠文)も出演。彼の起用について尋ねられると、フィリップ・ユンは「小さい頃からずっと彼の映画を観てきて、私にとってアイドルでした。親しみを感じますし、私の心の中では1970年代香港を代表する存在です」と熱く語る。「この作品を撮るにあたり、すべての香港映画、香港映画ファンにプレゼントを贈るような気持ちでした。それならマイケル・ホイが登場しないと駄目ですよね」と彼のキャスティングが不可欠だったことを強調した。また英語での独白シーンでは、もともと英語教師だったマイケル・ホイが自らセリフの言い回しを手直ししたという。監督とともに脚本を手がけたスン・フェイは、撮影を見学した際に「脚本のセリフと少し違っている」と心配したと告白。しかし撮影が進むうちに「マイケル・ホイ先輩の発するセリフは、実際には脚本と大きく変わりませんが、さらに面白く、話しやすく、キャラクターにしっくりくる表現になっている」と発見したことを振り返った。
香港は死んでいない
汚職がはびこっていた香港の“暗黒時代”の物語は、アンディ・ラウ主演作「リー・ロック伝」などでもよく知られる。なぜ今映画化したのかという問いに、フィリップ・ユンは「昔からこれらの映画を通して香港のそういった時代を知ってきました。ただ私が生まれて育ってきた香港と今の香港の間には大きな変化があります。今回映画を撮るにあたって、1940年代以降の香港の風景や人物を忘れてはならないという気持ちがあり、香港に対する情感を表現したいと思いました」と答える。そして「私たちは歴史を振り返り、これからの香港のために何ができるか考える必要があります。『香港は死にかけている』とは思いません」と強い意志を示す。スン・フェイは「私も香港に対する深い気持ちを表現したいと思いました。私自身は生まれも育ちも香港ではありませんが、香港人としてこの脚本を書くにあたって歴史を学び、映画を通して実体験できたことは、素晴らしい旅のようでした」と
開会式にはラム・カートンらも出席
「香港映画祭2023 Making Waves - Navigators of Hong Kong Cinema 香港映画の新しい力」は才能豊かな新人監督作品やクラシックの名作など、選りすぐりの香港映画を上映する企画。上映前にはオープニングセレモニーが行われ、「風再起時」監督のフィリップ・ユン、脚本家のスン・フェイのほか、「マッド・フェイト」主演のラム・カートン(林家棟)、監督のソイ・チェン(鄭保瑞)、「毒舌弁護人~正義への戦い~」主演のダヨ・ウォン(黃子華)、監督のジャック・ン(吳煒倫)、「ブルー・ムーン」主演のグラディス・リー(李靖筠)、監督のアンディ・ロー(羅耀輝)、「7月に帰る」プロデューサーのマニ・マン、香港映画祭イベントマーケティングディレクターのレモン・リム、香港特別行政区政府 駐東京経済貿易代表部 主席代表のウィンサム・アウ、同次席代表のレオ・ツェーが登壇した。昨年に続いて参加したラム・カートンは「こんばんは! ソイ・チェン監督がどれほど“大スター”の僕を演出しているのかよく観てくださいね!」とユーモアを交えて挨拶し、会場のファンを沸かせた。
本特集は11月5日まで開催。なおチケットはすべて売り切れとなっている。「毒舌弁護人~正義への戦い~」は東京・シネマート新宿、ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場などで上映中のほか、全国で順次公開される。