The Weekndら出演、インドネシア『Djakarta Warehouse Project』に見るアジアフェスの活況
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インドネシアで最大級の規模を誇るダンスミュージックフェス『Djakarta Warehouse Project(以下、DWP)』が12月7日、8日、9日に開催された。今年10周年をむかえ、インドネシア・バリ島で開催された同フェスの参加レポートをお届けする。Real Sound風に。
DWPとは
年々拡大するDWP
『DWP』のはじまりは2008年にジャカルタのクラブ「Blowfish」で開催されたイベント『Blowfish Warehouse Project』。第2回目の2010年、会場を変更したことで『Djakarta Warehouse Project』と名前を改めた。
以降はゲロラ・ブン・カルノ・スタジアムやアンチョールなど会場を転々として、規模を拡大。2014年からジャカルタ国際展示場に落ち着き、2日間開催に。今では世界各国から10万人近くの音楽ファンが集まるイベントとなっている。
ラインナップは、ダンスミュージックフェス常連の欧米のDJ/プロデューサーが中心だが、インドネシアのDJ、ミュージシャンも多く出演する。2017年には、NYのラッパーDesiigner、アジアから世界へ目覚ましい活躍を見せる88risingが出演するなど、ヒップホップアクトが目立っている。
DWP X
今年は10周年を記念して『DWP X』と称し、初の3日間開催に。会場はバリ島南部ウンガサンのGWKカルチュラルパーク(以下、GWK)が新たに選ばれた。
GWKはガルーダ・ウィスヌ・クンチャナ像を掲げる公園で、60ヘクタールもの敷地内には、舞台、ミュージアム、レストラン、グッズショップなどが並ぶ。これまでもコンサートや音楽フェスティバルが開催されてきたバリのカルチャースポットだ。
公園のオープンは2000年だが、高さ120メートルのガルーダ・ウィスヌ・クンチャナ像が完成したのは今年の夏。神鳥ガルーダにヒンドゥー教の神ヴィシュヌが乗ったこの巨像は28年もの歳月をかけて建造されたという。インド神話に登場する神鳥ガルーダは、インドネシアの国章でもあり、神の乗り物。『DWP X』のメインステージもそのガルーダを模した装飾がされている。
『DWP X』ではライトアップされたヴィシュヌ神を横目に、ギラつくガルーダの元からバキバキのダンスミュージックが鳴り響くという異質な空間が作り出されていた。
ラインナップ
今回ラインナップされたのは、ライブアクトとして初のヘッドライナーを飾ったThe Weekndのほか、Afrojack、Alesso、Armin van Buuren、DJ Snake、Major Lazer SoundsystemといったEDMの大御所から、Mura Masa、TroyBoi、Whethanなどいわゆる”EDM”とは違った空気をまとう気鋭のプロデューサーたち。日本からは BUSTA-ROWがDJとして、CYBERJAPAN DANCERSがパフォーマーとして出演している。またインドネシアのDJ/プロデューサーたち、来日経験もあるエレポップデュオ・Kimokalといった面々も揃っている。これらのアーティストが3日間、3ステージでパフォーマンスを行った。
熱気あふれる会場
厳重なエントランス
チケットは日本円で20,700円。iFLYERで扱っていたため楽に買うことができた。事前に別途メールで送られてきたバウチャーをプリントアウトし、チケットボックスでリストバンドを入手。いざ入場、と思いきや厳重な警戒のエントランスが待っていた。
鞄の中身はすべて透明なビニール袋の中に入れさせられ、係員に細くチェックされる。危険物、飲食物はもちろん、日焼け止め、目薬、飲み薬の持ち込みも禁止。人によってはティッシュペーパーさえもNG。持ち物の確認が終わったらさらにボディチェックを受けて、問題がなければ晴れて入場となる。変に緊張する。
リストバンドにチャージ
会場内の飲食物の購入はリストバンドを介して行われる。日本の電子マネーのように、会場内のTop Up Boothにて現金/クレジットカードで希望の金額をチャージする必要がある。厳密には金額がそのままチャージされるのではなく、トークンが発行される仕組み。40,000ルピア(日本円で約300円)で1トークンとなる。たとえば、ビールは2トークン、水は1トークン、ピザ1ピースは1.5トークンだ。日本のフェスと大して変わんねえじゃん。
豊富なブース
ウェブサイトやポスターには書かれていないがメインスポンサーはMarlboro。いたるところにロゴが掲げられ、キャンペーンガールが会場内でタバコを販売していた。観客の喫煙率は大変高く、タバコに関してはフリーダム。もともと喫煙率の高いインドネシアだが、会場では特に高い。歩きタバコ、あぶねえよ。
その他、日本でもお馴染みのTik Tok、インドネシアのバイクタクシーGOJECK、通信事業者Smartfren、チケットエージェンシーのTiket.comなどのブースが用意され、いずれも多くの参加者でにぎわっていた。
なかでもメインステージに用意されたフォトスポットは新鮮だった。一組30秒、階段をあがった高い場所で堂々とプレイ中のステージを撮影することができる。
オーディエンス
オーディエンスはインドネシア人と思われる若者が大半で、マレーシア、タイ、シンガポール、中国、韓国、それぞれの国旗をまとったファンの姿も見られた。もちろん日本人の姿もちらほら。東南アジアを中心に、アジアのダンスミュージックファンが集まっているのだろう。意外にも欧米人は少なかったように思う。18時開演、3時終演というクラブのようなスケジュールだが、みなエネルギッシュで熱量が下がることはない。アーティストたちもその熱気に応えるようなパフォーマンスを披露していた。
プロモーターのウェブサイトによると、2016年で32カ国以上、2万人が同フェスに参加していたというから、今回もインドネシア国外からの参加者はかなり多そうだ。ってか人多すぎ、蒸し暑い死ぬ。
インドネシアでは『DWP』以外にもいくつか音楽フェスが開催されている。『DWP』を主催するISMAYAが手掛け、alt-J、Lorde、SZAらが出演したロックフェス『We The Fest』(7月)、The Libertinesが出演した新フェス『Hodgepodge Superfest』(9月)、『DWP』と同じくGWKで開催されたロックフェス『Soundrenaline』(9月)、15年の歴史をもつ『Jakarta International Java Jazz Festival』(3月)が代表的なものとして挙げられる。
さらにアジアに目をむければ、日本からの参加者も多い香港の『Clockenflap』、シンガポールの豪華客船フェス『It’s The Ship』(2019年日本上陸予定)、タイのピースフルな『Wonderfruit』、同じくタイのずぶ濡れダンスミュージックフェス『S2O』(2018年日本上陸)など多くのフェスが存在する。
東南アジアまでで、日本に寄らないアーティストも増えてきた。少し足を伸ばすだけで日本で体験できない世界が広がっている。次の休みは気軽に行けるアジアのフェスを視野に入れてみてはどうだろう。
アジアのフェスティバル一覧(一部)
タイ
Wonderfruit
S2O
Big Mountain Music Festival
インド
インドネシア
DWP
We The Fest
Hodgepodge Superfest
JAVA JAZZ Festival
Soundrenaline
上海
香港
Clockenflap
Creamfields Hong Kong
Sonar Hong Kong
シンガポール
It’s The Ship
Zouk Out
Laneway(オーストリアツアー)
(文=大山裕之)