【ライブレポート】ego apartment、秋ツアースタート 初日に放った圧倒的存在感
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ego apartment『EGO APARTMENT -AUTUMN TOUR 2023-』広島公演 Photo:Daiki Akiraka
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すべて見るego apartmentが、11月3日(金・祝)広島公演を皮切りに、『EGO APARTMENT -AUTUMN TOUR 2023-』をスタートさせた。今回のツアーは、前半4本がツーマンショー。後半の3本がワンマンショーで構成される。2023年春には、東名阪でのワンマンツアーを成功させ、リスナー超拡大中のego apartment。ツアー初日広島では、バンドの新たな一面を見せつけ、圧倒的存在感を放った。
ツアーの初日の会場、広島Cave-Be。非常に幅広い年代の観客でフロアは賑わっていた。バンドが本格始動したのが2021年。2年ほどの期間で、これだけ幅の広い客層の心を掴んでいる様子を見ただけでも、ego apartmentの表現する音楽の奥行きの深さを実感できる。
広島ライブは、ego apartmentとchilldspotによって作り上げられた。両バンドとも20代のメンバーで構成されているが、もうすでに世界基準の音を鳴らし続けているバンドである。このご褒美のような組み合わせに、「最高の組み合わせだよね」という会話があちらこちらから聞こえて、常に高揚感が伝わってきた。
最初に登場したchilldspotが、会場のボルテージをしっかりと上げ、最高の雰囲気の中、ego apartmentへとバトンが渡される。サイレンのような怪しげな音が会場を包み込む中、サイパン島出身リーダーのDyna(ダイナ/Ba)、大阪府堺市出身のPeggy Doll(ペギードール/Vo&Gt)と、シドニー出身のZen(ゼン/Vo&Gt)の3人がオンステージ。Dynaの「どうも!ego apartmentです。広島盛り上がっていけますか? よろしくお願いします!」の言葉に、拳を突き上げる観客。1曲目から歓声とともに、拳も上がりつづける。この瞬間を待ち望んでいた観客が一気に感情を爆発させていった。
メンバーの3人は、その熱気を全身で受け止めながらも、演奏中の表情は非常にクール。これが、芸術的なアプローチで鳴らされる楽曲の雰囲気としっかりマッチしていて、観客の興奮をより一層高めているように感じる。実際、筆者のそばにいた20代と見られる男性の表情には、笑顔はもちろんだが、憧れの眼差しと表現するのにぴったりな様子もみてとることができた。
MCでは、演奏中のクールな表情とは、まるで違う一面を見せてくれるのもego apartmentだ。本ツアーで、広島を含む4公演のゲストミュージシャンは、リーダーのDynaがとにかく大好きな人たちに声をかけたようだ。「今日のゲストは、chilldspotですが、絶対、俺がこの中の誰より、早く聴いてました!」と客席に宣言。自然と会場の雰囲気は朗らかに。そして「広島~!what’s up?」と語りかけるZenと、「パンパンっすね!」と客席を見渡すPeggy Doll。2人の表情と語り口調は柔らかく、満面の笑みを浮かべていた。ゆるく、温かいメンバーの素の雰囲気が垣間見える瞬間だった。
そんなゆるりとした雰囲気の中から仕切り直すようなそぶりなく、非常に自然な流れで「Sensation」のプレイをスタート。柔らかな空気を一気に締まった楽曲モードに変えるテクニックは素晴らしく、個人的には、今回のライブでもハイライトの1つだと思った。ego apartmentが本格始動を始めてからの2年間で、筆者は約半年に1回のペースでライブを見ているが、毎回、急激な進化を遂げていることに驚かされる。それは今回のツアーも例外ではなかった。
楽曲からも、多くの才能を感じることができるが、ライブではそれがより一層強く伝わってくる。ツアー初日の広島公演でも、いくつもの才能をはっきりと実感できる瞬間があった。まず、ego apartmentは、“緩急の才能”を持っている。さきほど、書いたMCの空気から楽曲への空気の切り替わりもそうだと思う。圧倒的な存在感を放つ楽曲のパワーが、直前まで、どんな空気であれ、一気に楽曲の世界へと聴くものを誘うのだ。ライブの流れだけでなく、楽曲そのものの緩急も魅力的だ。
今回のツアーでも会場のボルテージを最高潮まで到達させたライブのキラーチューン「huu」。キレのいいギターサウンドとメロディアスなベースライン、そしてクラップが合わさるノリの良さが印象的なイントロでは、観客は、ジャンプしながら楽しむことが多いが、Aメロは、打って変わってトーンダウン。心地良いZenの歌声に乗せられて、自然と誰もが、緩やかに肩を揺らし始める。しかし、再びノリの良いギターの音とともに全員がジャンプを始める。モードの違うダンスフロアを、1曲の中のたった数十秒の間で見せてくれるのだ。
次に、“世界観構築の才能”も感じることができた。今回のライブは全体を通して、“少し怪しげでダーク”だけど“体は自然と揺れる心地よさ”が共存しているように感じた。この要因の1つに、演奏される楽曲と楽曲の繋ぎの役割りを果たすサウンドの存在がある。街の雑踏ともとれるようなサウンド、エッジの効いたエレクトロサウンドや四つ打ちなどを、その場でDynaが心地よくミックスしながら、観客のもとに届ける。DJとしても活躍するDynaの引き出しの多さが際立つ瞬間でもある。
こうしたサウンドの流れから、DJプレイのように、シームレスに次の演奏楽曲へと繋がっていく様子は、ego apartmentのライブの強みでもあると思う。実際、広島ライブでは、テクノ的なアプローチのサウンドから、「1998」へと繋がる場面があり、より一層楽曲の魅力が引き出されていた。また、「1998」を始め多くの楽曲が持つ、アナログ感がただよいつつも、どこか新しさも感じさせるサウンドは、生で鳴るとより迫力を増す。特にギターのサウンドは、音源の数倍は渋く、ロックンロールを感じるサウンドに仕上がっている。
そして、今回のツアーでは、新しいego apartmentに出会うことができるというのも見逃せないポイントだ。これまでは、ギター2本と、ベース1本を3人でプレイ。ドラムなどのテンポを刻むサウンドは、機器から再生されていた。しかし、この日はPeggy Dollが数曲ドラムをプレイ。生ドラムが加わり、ニューアレンジで披露された「Weigh me down」は、ダンス要素がさらに強くなり、“踊る”以外の選択肢を与えない仕上がりだった。「もっともっと」というメンバーからの呼びかけに観客も「ヒュー!イエイ」と呼応し、より激しく踊り続けた。
さらに、この日は未発表の新曲を計5曲披露するというプレゼントも用意されていた。「mad(DEMO)」は、ミドルテンポなダンス的要素も含む楽曲だったが、全体的に浮遊感が漂っており、低音ボイスのZenと、高音ボイスのPeggy Doll、2人の歌声がとてもマッチしていた。いつまでも聴いていたいと思わせる楽曲だと感じた。
今回披露された新曲5曲は、どの曲も何も知らない状態で聴いた時に、まさか25歳のメンバーで構成された日本のバンドが作っている曲だとは、誰も思わないのではないだろうか。それほど衝撃的であったし、バンドの初期から続く、ジャンルも時代もシームレスにつなぎ合わせて、自分たちのものにするego apartmentの可能性が、まだまだ未知数だということを改めて、思い知らされた楽曲たちだった。ちなみに、「mad(DEMO)」を含めた、計3曲が収録されたデモCDが、今回のツアーでライブ会場限定販売しているので、足を運んだ際には是非チェックしてもらいたい。
この2年間で急成長しているego apartment。今回のツアーから、新章ego apartmentの幕が降りている。11月24日(金)東京・WWW Xでのツアーのファイナルまでの間にも飛躍し、進化を続けるだろう。これから先、ego apartmentがどんなサプライズを見せてくれるのか。今後も彼らから目を離すことはできない。
Text:安広修平 Photo:Daiki Akiraka
<ツアー情報>
『EGO APARTMENT -AUTUMN TOUR 2023-』
※終了分は割愛
11月10日(金) 仙台darwin w/Chilli Beans.
11月12日(日) 札幌SPiCE w/ TAIKING
11月17日(金) 名古屋SPADE BOX ※ワンマン
11月19日(日) 梅田CLUB QUATTRO ※ワンマン
11月24日(金) WWW X ※ワンマン
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2346779
関連リンク
オフィシャルサイト:
https://www.egoapartment.net/
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