吉沢亮が「家族」に思うこと「絶対に信頼できる一番の味方」
映画
インタビュー
吉沢亮 (撮影:映美)
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11月3日公開となった映画『かぞく』。
物語に登場するのは4つの「かぞく」だ。
ある秘密を抱えている内縁の妻・ハルカと暮らすケンジ。
妻を亡くし、ひとりでふたりの子どもを育てるタケオ。
久しぶりに帰ってきた実家で、自分の名を呼ぶ女性に誘われて森の中に入っていくユウイチ。
そして、父が失踪し、母と二人で住み慣れた街を離れようとしているマコト。
2012年にこの世を去った漫画家・土田世紀の同名作品が原作となっている。原作は未完となっており、脚本・監督を務めた澤寛が自身の生い立ちや経験を織り交ぜ、現代家族を包括的に描いている。
マコトを演じる吉沢亮が改めて作品を見て、思い出したこと、感じたこととは。
4年前の自身の演技を見て感じたこと
――吉沢さんご自身、完成した作品を観られて、いかがでしたか?
表現の仕方が具体的に何かを語るという作品でもなかったので、難しいなと思ったんですけど、「これはどういうことなんだろうか」と考えながら見ている時間が意外と楽しかったです。4人のエピソードをそれぞれ観ながら、「ここはもしかしたら繋がってたりするのかな?」とか。やっぱり、みなさんのお芝居が素敵ですし、映像がとても綺麗だったので、飽きることなく観られました。
――観られて、撮影時のことを少し思い出されたりしましたか。
それが、撮影したのが4年前とかなんです。
――かなり前ですよね。
「こんなシーン撮ったな」というものもあれば、逆に「こんなの撮ったっけ?」というものもあったり(笑)。完全に記憶からなくなっていたシーンもありましたね。でも若いな、と思いながら観ていました。
――4年前に撮影されたものを改めて観るのは新鮮なものなのでしょうか。
若い、ということもそうなんですが、芝居のテンションが全然違うんです。言ってもたった4年前なので、ほかの人からするとそんなに変わっていないかもしれないんですけど、自分的には「ここ硬いな」だったり、「エネルギーがあるな」と思ったり。
――それだけ時間が経つと、客観的になるものですか。
そうですね。お芝居をしているときの感情や、何を意識してこの芝居していたのか、ということも完全に忘れているんです。
――今もし同じ役にアプローチするとなったらだいぶ変わってきそうですか?
多分、かなり変わると思います。もうちょっと肩の力を抜いて演じる気がします。
――ちなみにご自身ではどこが「堅いな」と感じられたんですか?
表情だったりとか、自分の中で決めたことをそのままやっているな、という印象がありました。自分が「こうしたい」と思っていることにとらわれてんだろうな、と。その場にただいればいいのに。でも、そういうのが良かったりする瞬間もありますからね。
――澤監督がこの作品が監督としては初めてとのことですが、当時話したことなどは覚えてらっしゃいます……?
演出も具体的にというよりは、抽象的な表現を演出されていたような気がしました。
「どうしてこうなるのか」というよりかは、「ここの『大丈夫だよ』はもっと突き放して欲しいんだよね」みたいな。なんでだろう? と思いながら、やっていたのを覚えています。でも、きっと監督の中には自分の世界が広がっていた思うので、それを探ることに必死な日々でした。
監督の中にある正解を読み解こうとしていた
――ほかの3つのエピソードは知らない状態で撮影に挑まれていたんですか?
台本には描かれていたので話は知っていたんですが、完成したものを見てようやく全体が把握できたように思います。当時は撮影の時期も別々だったんで、ほぼ現場で会うということもなかったので。
でも永瀬さんの話で登場する人物が僕の話で出てきたり。「あ、そこが繋がっているんだ」ということも出来上がりをみてようやく気づきました。
――3つのエピソードで特に印象的だったものや、シーンがあれば教えていただきたいです。
個人的には永瀬さん演じるケンジの話は好きでした。
一番人間味があるというか。ああいうダメな男だけど、寄り添うところは寄り添うんだ、と。
――確かに、意外な一面がありますよね。
人間ドラマとして一番好きだったかなという印象はあります。
――こういったまさに人間ドラマを描いた作品は、演じられる側としても、心の動きとか作り方ってとても難しいんではないかなと思うんですけど。
すごく難しかったですね。演じていて悩んでいたな、という印象があります。
明確に、このシーンが一体何なのか、自分でも分からない状態でやっていたので、何が正解なのかも分からないし。正解は監督の中にしかなかったので、どうやって監督の言ってることから読み解くのか、ということを考えていました。
家族だけは絶対に信用できる存在
――偶然ではあると思うんですけど、今年は『ファミリア』もありましたし、「家族」がテーマの作品が続いていますね。
確かにそうですね。
――どちらも「家族」に関する考えを深める作品かと思うのですが、年を重ねるにつれて、家族に対する考え方で変わった点はありますか。
やっぱり若い頃は、家族はいないと生きていけない存在でしたよね。でも、この年になってくると、ちょくちょく連絡は取っているのですけど、なかなか会えてもいないですし。
けどやっぱり、一番安心する空間ではあると思います。今この仕事をさせてもらっていて、周りにいる人間が本当に全員信用できるのかというと、難しかったりしますけど、家族だけは絶対信頼できる、といういう根拠はありますね。そういう意味では一番の味方です。
――作品の問いかけのひとつでもあるかとは思うんですが、吉沢さんは、現在の家族の形についてどういうふうな印象を受けますか。法律に乗っ取ったものもあれば、そうでないものもありますし。
難しいですよね。何を家族と呼ぶかも人それぞれですし。血が繋がっていようがなかろうが、どういう環境かだとか、どういうタイミングで出会ったかでいろいろあると思うんです。そういう意味では、多様化されいているんじゃないかと思います。
――ちなみに、吉沢さんは理想の家族像はありますか?
やっぱり年を取って死ぬときに笑顔で死にたいな、と最近思います。
笑顔で死ぬためにはどうすればいいんだろうと考えていたんですけど、渋沢栄一さんを演じたときに、死ぬときはいろんな人に囲まれていて、この空間はいいな、ということは思いました。
――11月3日に映画が公開、さらに24日からAmazon Prime Videoでも配信がスタートします。
最後にこの作品の楽しみ方を教えてください。
それぞれ4つのストーリーが重なって一つの作品になっていて、役者さんの芝居だったり映像美だったり、すごく素敵な作品です。
なかなか抽象的な作品ではありますが、何か説明するというわけでもなく、人間の感情に直接刺さるような表現、シーンが多いのかな、思うので「これはなんなんだろう?」とか考えながら見ても面白いけど、なにも考えずに、本当に直感で見てもらう作品なのかもしれないな、という気もしています。難しい作品ではあるとは思うんですけど、何も気負わずに見ていただければ、嬉しいです。
取材・文:ふくだりょうこ 撮影:映美
<作品情報>
映画『かぞく』
全国の映画館で公開中
Amazon Prime Video:11月24日(金) より配信スタート
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