11月から12月にかけて対バンツアー『Kroi Live Tour "Dig the Deep" Vol.4』を開催している、Kroi。“Dig the Deep”は、彼らがインディーズ時代から不定期で開催している対バンライブ企画であり、第4弾となる今回は福岡、愛知、東京、大阪、広島、宮城、北海道の7都市を回る。2カ所目となる愛知公演はKroiが大好きなバンドと語り、結成前からの縁もあるOKAMOTO'Sを迎えた。
実はKroi結成前、長谷部悠生(Gt)は高校時代に部活のコーチがOKAMOTO'Sのハマ・オカモト(Ba)と同級生であった繋がりで、電話で話したことがあったそうだ。当時、進路に悩んでいた彼はハマの言葉によってバンドの道を進むことに決め、今に至るという。ライブ中にオカモトショウ(Vo)は「こんなサイドストーリーがあるバンドと一緒にライブができるなんて嬉しい」と満面の笑みで語り、長谷部は「OKAMOTO'Sは俺にとってのカリスマ」と目を輝かせながら喜びを噛みしめていた。Kroiにとっても、OKAMOTO'Sにとっても、特別な日だったのだ。
まずはOKAMOTO'Sが開幕を告げる。ショウはスキップで登場し、楽しみで仕方なかったという気持ちが伝わってくる……と思っていたら、「90'S TOKYO BOYS」で初っ端から手加減なしの重厚なサウンドで会場を呑み込んだ。
オカモトレイジ(Ds)のタイトなドラム、ハマのうねるベースが生み出すグルーヴの中で、オカモトコウキ(Gt)が惜しみもなくギターソロを華麗に披露する。バチバチにぶつかり合うサウンドに酔いしれながらショウはステージの端から端まで踊りながら歌う。1曲目から大きな歓声が沸き起こったのは言うまでもない。のちにMCでショウが「今日は我々のワンマンかという盛り上がりですね」とこぼすほど本人たちも驚きを隠せなかったようだ。
「長谷部くんはOKAMOTO'Sのライブに来てバンドをやろうと思ったんだよね」とショウがKroiとの関係性に触れると、「長谷部が長谷部である理由は僕のおかげ。顔も知らない長谷部と電話をして気持ちを奮い立たせる名言を贈ったんですよね。これほどのバンドは(対バンの相手に)呼ばれないでしょう!」とハマは嬉しそうに語った。
そしてKroiからのリクエスト曲「Beek~うまくやれ」、さらにはリスペクトの気持ちも込めてKroiの「Fire Brain」を演奏する。オーディエンスはOKAMOTO'Sのカラーに染まったKroiの曲を全身で楽しむ。「Beautiful Days」でラストを迎え、対バンツアーのゲストとしてこれ以上ない盛り上がりを作り出し、ステージを後にした。
OKAMOTO'Sが十二分に温めたステージにKroiは颯爽と姿を現した。メンバーそれぞれが定位置に付き、鳴らし始めたのは「Hyper」。TVアニメ『アンダーニンジャ』のオープニングテーマであり、10月25日に発売したばかりの新曲だ。Kroiの得意とするファンクミュージックが存分に詰め込まれながらも、ロックやヒップホップの側面も感じ取れる。これぞKroiのミクスチャーな音楽性なのだと言わんばかりの演奏の中で、がなり声で歌っていた内田怜央(Vo)のファルセットが突き抜けていく。足し算と引き算のバランスがなんとも心地が良い。
内田が「みなさん、調子はどうですか?」と手短に挨拶を交わし、間髪を入れずに次々と曲を投下する。長谷部のエッジを効かせたギターカッティング、千葉大樹(Key)のトークボックスも使用した多彩なサウンドなど、各々の見せ場を作りながらバンドの音は絡み合っていく。静と動を絶妙に織り交ぜたアレンジを随所に施し、一辺倒ではない予測不可能なライブ展開が繰り広げられた。
次は何が起こるのだろうとステージから目が離せず、ワクワク感が止まらない。ふとフロアに視線を移すと、オーディエンスがあちらこちらで歓声を上げながら自由に踊っている。一音も取りこぼしたくないと身体中が訴えかけてくるように、気付けば頭で考える前に踊り出してしまうのだ。この場にいる誰しもが同じ感覚なのかもしれないと、目の前の光景に気持ちを重ねずにはいられなかった。
「今日はヤバいね。大好きなバンドが自分たちの曲を演奏してたこともヤバい」(内田)、「全然ヤバい!(最初の方の曲で)フレーズ弾けてなかったよね? 違う音が鳴ってた」(千葉)とやり取りするほどKroiは緊張していたようだ。彼らにとっては憧れの存在であるOKAMOTO'S。背中を追っていたバンドとともにライブをするという夢が実現となった日なのだから、いつもとは気持ちで臨むことにもなったのだろう。
しかしライブ中盤からは、そんな緊張はどこかへ消え去ったかのように、思う存分に楽器を掻き鳴らし歌う5人の姿があった。益田英知(Ds)の緩急をつけたソロプレイから始まった「Funky GUNSLINGER」では、長谷部がサングラスを取り、被っていたニット帽が脱げてしまうくらい一心不乱にギターを鳴らす。会場の高揚感を一気に引き上げられていくのだった。
圧倒的なライブを披露した先輩に感化され、予定にはなかった曲「Juden」を急遽演奏。内田曰く「(OKAMOTO'Sがあんなに最高なライブをしたのだから)俺らも盛り上がる曲を入れないと」という判断のもと、直前に変更したのだ。長谷部、千葉、関将典(Ba)、益田、内田の順にソロを披露し、各々の熱量を積み重ねることでバンドの演奏がゾーンに入っていく様は圧巻。ソウルフルに内田がシャウトをすると、高まった熱は弾け飛んで瞬く間に天井知らずの熱狂が渦巻いた。
4人の個性がバチバチにぶつかり合ってグルーヴが襲い掛かるOKAMOTO'Sに対して、バンドとして5人が1つになって大きなグルーヴで包み込むKroi。この曲が演奏されたことも、白熱したステージングが繰り広げられたのも、今日の対バンがOKAMOTO'Sでなければありえなかったこと。また今回はOKAMOTO'Sの曲「Beek」をカバーするという粋な計らいも行い、先輩から受けた刺激をバンドの音像へと昇華していく。持ち合わす最大限の力量をこの一瞬に込め、互いに刺激し合う――対バンの醍醐味がそこにはあった。
関のカウントから「WATAGUMO」で後半戦へと突入し畳みかける。骨太なサウンドで会場を揺らすグルーヴが生み出されると、フロアには無我夢中で踊る光景が広がっていく。「今日は来てくれたみなさんのおかげです! そしてOKAMOTO'Sのおかげです!」と感謝の気持ちを表し、本編は「a force」で終わりを告げた。
そして「やっぱりこの曲で踊りたい!」という内田の合図から、アンコールに応えて「Fire Brain」で締めくくる。曲を始める前に長谷部は一人ステージ上でOKAMOTO'Sへの想いを「上で見ていて泣きそうになった」と本当に嬉しそうに語っていた。内田から「長い!」と途中で切られてしまうほど話は止まることなかった。溢れんばかりの想いを彼らは最後の一音まで込めていく。まだ終わってほしくないと名残り惜しそうにしているような演奏だった。
憧れの存在との対バンを果たした今回の愛知公演。何年か経った時に、“伝説のライブだった”とファンは振り返ることになるに違いない。対バンツアー『Kroi Live Tour "Dig the Deep" Vol.4』は最終日の札幌公演までまだ続く。今日とは異なる物語、パフォーマンスで、あといくつ伝説的な夜が生まれるのだろうか。
<公演情報>
Kroi Live Tour "Dig the Deep" Vol.4
2023年11月5日(日) Zepp Nagoya
セットリスト
■OKAMOTO'S
01.90'S TOKYO BOYS
02.Border Line
03.Young Japanese
04.Dance To Moonlight
05.Beek~うまくやれ~Fire Brain(カバー)
06.Where Do We Go?
07.SEXY BODY
08.BROTHER
09.ROCKY
10.Beautiful Days
■Kroi
01.Hyper
02.Balmy Life
03.Network
04.HORN
05.Mr.Foundation
06.Funky GUNSLINGER
07.Juden
08.PULSE
09.WATAGUMO
10.selva
11.Small World
12.Page
13.a force
EN.Fire Brain
<ツアー情報>
『Kroi Live Tour "Dig the Deep" Vol.4』
※終了公演は割愛
11月18日(土) Zepp Namba
ゲスト:Nulbarich
11月19日(日) 広島CLUB QUATTRO
ゲスト:Bialystocks
11月26日(日) 仙台PIT
ゲスト:Ovall
12月2日(土) Zepp Sapporo
ゲスト:クリープハイプ
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/kroi-t/
<ワンマンライブ情報>
『Kroi Live at日本武道館』
2024年1月20日(土) 日本武道館
開場17:00 / 開演18:00
関連リンク
公式サイト:
https://kroi.net