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さとうほなみらが体現する、葛藤を抱えた家族の物語 □字ック新作公演『剥愛』開幕

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舞台『剥愛』取材会より

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脚本家・演出家・映画監督の山田佳奈が主宰する劇団ロ字ックの4年ぶりとなる新作舞台『剥愛』が、11月10日(金)、東京・シアタートラムにて開幕。開幕日には、山田と主演のさとうほなみをはじめ、瀬戶さおり、山中聡、岩男海史、柿丸美智恵、吉見一豊が登壇した取材会とマスコミ向けのゲネプロが行われた。

さとうほなみはゲネプロ前に行われた囲み取材で、「本当に素敵な作品に出会えたなという気持ちでいっぱいです」と笑顔を見せた。作・演出の山田佳奈も「6人の本当に強力な俳優さんたちのお力をお借りできたことがとても嬉しい。皆様に楽しんでいただける作品になったのではないか」と、初日を迎える喜びを語る。そしてゲネプロで、その言葉通りの見ごたえある物語が披露されたのだった。

主人公は、離婚するため実家に帰ってきた菜月(さとうほなみ)。実家には剥製師である父(吉見一豊)と妹(瀬戸さおり)、父の仕事を手伝っている従弟(岩男海史)が暮らしている。近頃は剥製の仕事もめっきり減り、客といえば亡くなったペットの猫を剥製にしてほしいと依頼してきた女(柿丸美智恵)くらいのもの。息子の親権を夫と争い求職中の菜月だが仕事は見つからず、家族との雰囲気もあまり良くはない。そんなある日、父の下で働きたいという男(山中聡)がやってきたが……。

まず強い印象を与えたのは、土岐研一による舞台美術の見事さだ。2階建てで、1階は皆が出入りする作業場。上手側の流しや冷蔵庫、下手側のソファーや事務机、ストーブなど、リアリティにあふれている。ゆるっとした雑談から、血のつながった家族だからこそ容赦ない物言いをしてしまう緊迫感のあるやりとりまで、菜月たちはこの場でさまざまな会話を繰り広げる。そして階段を上がった2階は菜月の部屋。ちなみに、囲み取材の際にさとうが「かわいい」と言っていたタヌキの剥製は下手側にある。他にも鹿や鳥などさまざまな剥製が置かれ、ある意味動物たちが菜月たち家族の有り様を目撃しているかのようでもある。

菜月たちの本音や葛藤、過去に起きた出来事が、皮を剥ぎ取るかのように少しずつ明らかになっていく。かけ合いのテンポや、菜月の回想場面での兼役の巧みさなど、出演者のアンサンブルの小気味よさも印象的。中でも菜月を演じるさとうは、囲み取材で瀬戸や山中が彼女を「大胆さもありつつすごく繊細」と語っていたように、叩きつけるような荒々しさとナイーブさが同居していた。

そして、それは作品自体も同様。菜月たちが抱えているものは、観客それぞれに同じようなものが思い当たるのではないか。痛みを伴う物語だが、最後のさとうの表情で一筋の希望を見つけたような、ほっとする感覚があった。

公演はシアタートラムにて、11月19日(日)まで。大阪公演あり。

取材・文・撮影:金井まゆみ

<公演情報>
□字ック第十五回本公演『剥愛』

脚本・演出:山田佳奈

出演:
さとうほなみ 瀬戸さおり 山中聡 岩男海史 柿丸美智恵 吉見一豊

【東京公演】
2023年11月10日(金)~ 2023年11月19日(日)
会場:シアタートラム

【愛知公演】
2023年11月22日(水)・23日(木・祝)
会場:穂の国とよはし芸術劇場 PLAT アートスペース

【大阪公演】
2023年11月25日(土)・26日(日)
会場:扇町ミュージアムキューブCUBE01

チケット情報
https://w.pia.jp/t/roji9-hakuai/

公式サイト
http://www.roji649.com/

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