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【レポート】高橋和也、千葉哲也らキャスト8名が好演 こまつ座『連鎖街のひとびと』

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こまつ座第148回公演『連鎖街のひとびと』より、左から)鍛治直人、加納幸和、高橋和也、石橋徹郎、霧矢大夢、千葉哲也、朴勝哲、西川大貴  撮影:宮川舞子

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もがきながらも軽妙な笑いを忘れない、連鎖街に取り残された人々

どこかの建物の、半地下と思しき部屋にいる男たち。ひとりは塩見利英(高橋和也)、もうひとりは片倉研介(千葉哲也)。彼らは各々「大連のシェイクスピア」「大連のモリエール」と自称している演劇人なのだが、彼らの世話をしている陳鎮中(加納幸和)の目を盗んでここから脱出しようと企んでいる。

左より)霧矢大夢、高橋和也、加納幸和、千葉哲也  撮影:宮川舞子

つい先日まで「満州国」と呼ばれていた中国東北部で、交通の要所として栄えた大連。その目抜き通りだった連鎖街にある今西ホテルの地下室で、彼らはソ連軍のために芝居を書かされているのだ。だが台本の執筆は遅々として進まず……。

井上ひさし・脚本、鵜山仁・演出で2000年に初演、2001年に再演された本作。今回は21年ぶりの上演となった。11月9日(木)~12月3日(日)東京・紀伊國屋サザンシアター、および12月の山形公演・群馬公演、さらに2024年1~2月の全国演鑑連中部・北陸ブロック公演に先立ち、11月8日(水)に行われたゲネプロの模様を紹介する。

左より)霧矢大夢、高橋和也、加納幸和、千葉哲也  撮影:宮川舞子

幕開けは、観客にも近しい状況で言うならば宿題がまったく終わっていない夏休み最終日。あるいは、彼らの状況により近い形で言えば作家が編集者によって旅館などに缶詰めにされ、原稿執筆を迫られている光景。こういう時は、えてして現実逃避に走りがちで……というわけで、塩見と片倉も不毛なやりとりを繰り広げている。

しかし、そうもいかなくなってきたのはソ連軍との窓口を務めている今西練吉(鍛治直人)から、このままでは皆シベリア送りになると聞かされてから。シベリアの強制収容所送りになればどんなことが待ち受けているのか。これまで数々のドラマや映画、漫画などで描かれていて、察しのつく観客も多いだろう。もちろん、作中の彼らもその意味は重々承知。だからこそ、必死になって芝居を完成させようとするのだ。

左より)高橋和也、千葉哲也、加納幸和、霧矢大夢、西川大貴、朴勝哲、鍛治直人  撮影:宮川舞子

まず、塩見と片倉のかけあいの妙が印象的だ。高橋の佇まいは、新劇畑の塩見のいかにも文学青年がそのまま年を重ねたような風情がしっくりはまる。亡き友人の遺児である石谷一彦(西川大貴)に対する親代わりとしての表情に、彼の誠実さが表れているように感じる。

一方の片倉は、大衆演劇の劇団を率いているだけあって塩見よりも線の太い感じ。どっしりとした存在感とどこか愛嬌のある言動は、千葉ならではの造形ではないだろうか。

そして、自身の持ち味を十二分に活かしていると思わされたのは、陳を演じる加納。軽妙でコミカル、でもどこか物腰がたおやかなのは、さすが「花組芝居」の座長であり女形であるからこそ、といったところ。部外者として面倒を見ているうちに自分も創作に関わり始める、というのはバックステージものでの「あるある」ではないかと思うが、陳も塩見・片倉を相手に丁々発止のやりとりをしているうちに、芝居に深く関わっていく。

左より)高橋和也、西川大貴、加納幸和、千葉哲也、鍛治直人、霧矢大夢、朴勝哲  撮影:宮川舞子

さらに、石谷の婚約者である女優のハルビン・ジェニィ(霧矢大夢)、塩見・片倉にとって因縁の相手でありジェニィの過去にも関わる市川新太郎(石橋徹郎)、音楽家である石谷の同僚ピアニスト・崔明林(朴勝哲)も加わって、『シベリアのリンゴの木』という芝居が形作られていく。誤解やすれ違いゆえのドタバタから、やがて全員が一丸となって芝居を完成させようとして、まさにドラマティックな盛り上がりを見せる。

後列左より、鍛治直人、高橋和也、千葉哲也
前列左より、石橋徹郎、霧矢大夢、西川大貴、加納幸和  撮影:宮川舞子

だが、そこに暗い影を落とすのは、ここがソ連軍に包囲され外部から隔絶された大連の街であること。当時の大連の状況もこれまでノンフィクション / フィクション共さまざまに描かれてきているが、昨今の世界情勢を思えばより感じるものは多いはず。困難な状況を必死に乗り越えようともがき、でも軽妙な笑いを忘れない、連鎖街に取り残された人々。なんとも愛おしい彼らの姿は、2023年の今この作品が上演される意味・意義を強く伝えてくる。 

取材・文:金井まゆみ

<公演情報>
こまつ座第148回公演『連鎖街のひとびと』

作:井上ひさし
演出:鵜山仁

出演:高橋和也 千葉哲也 加納幸和 鍛治直人 西川大貴 朴勝哲 石橋徹郎 霧矢大夢

【東京公演】
2023年11月9日(木) ~12月3日(日)
会場:紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA

【山形公演】
2023年12月10日(日)
会場:東ソーアリーナ

【群馬公演】
2023年12月22日(金)
会場:昌賢学園まえばしホール(前橋市民文化会館)

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/artist/artists.do?artistsCd=11010744

公式サイト:
http://www.komatsuza.co.jp/

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