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『アール・ブリュット2023巡回展』渋谷公園通りギャラリーで開催中 “ものがたり”をテーマに独創性あふれる7名を紹介

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展示風景より 山﨑健一の作品

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近年国内外で高い評価を得ている7名のアール・ブリュット作家の作品を、巡回展という形式でより多くの人に見てもらうことを目的に都内3会場を巡回する『アール・ブリュット2023巡回展 「ディア ストーリーズ ものがたり、かたりあう」』が、12月24日(日) まで第2会場となる東京都渋谷公園通りギャラリーにて開催されている。

同展は、東京都と渋谷公園通りギャラリーにより2020年より行われているシリーズ企画で、今回が4回目。「ディア ストーリーズ ものがたり、かたりあう」という今回のテーマには、作品や制作の背景にある作家それぞれの“物語”や、観客が作品に向き合うことで広がる“物語”や“語り”といった意味が込められた。会場では、各作家のライフストーリーを紹介するパネルの設置や、俳優の森崎ウィンがナビゲーターを務める音声ガイド、小さい子どもなどでも読みやすいようやさしい日本語で書かれた「豆ガイド」の配布などもあり、来場者がよりよく、より深く鑑賞を楽しめるよう工夫が施されている。

会場構成は、今年5月より開催されている「第18回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」にも出展している建築家ユニット、ドットアーキテクツが担当。「公園」「語らいの場」をイメージしたという、木製のはしごのような什器を随所に使用した温かみのある空間で、7名の作家それぞれの展示スペースが展開されている。

展示風景より ミルカの作品 左上:《ライラックニシブッポウソウ》(2017)、左下:《フキナガシフウチョウ》(2016)、右:《アオフウチョウ》(2017)
展示風景より 松本寛庸の作品

サークル状に“はしご”が設置されたスペースに展示されているのは、色鉛筆で緻密に描かれた色とりどりの鳥と、無数の音符を敷き詰めた点描のような背景とで構成されるミルカの作品。美しい鳴き声、キレイな羽をもつ「鳥」はミルカにとって理想の生き物だという。「VOCA展」への出展経験もある松本寛庸は、本や図鑑などから得た知識からイメージを広げ、色鉛筆や水性ペンを使い緻密に描く。今回は「時間」「宇宙」「歴史」をテーマにした作品が紹介されている。

展示風景より 鎌江一美の作品

滋賀県の「やまなみ工房」に通う鎌江一美は、15年ほどに渡って継続的に制作している工房の施設長「まさとさん」をモチーフにしたシリーズを展示。ときに「わたし」も登場するユニークな造形の土粘土作品のなかで表現されるのは、大好きな「まさとさん」と過ごす楽しい日常のひとコマだ。

展示風景より 山﨑健一の作品

2015年に逝去した山﨑健一は、入院中の病室で方眼紙にコンパスや定規を使って、設計図のような幾何学的なモチーフを精緻に描き3000点あまりの作品を残した。高度成長期の東京で、建築現場で働いていた経験をもつ山﨑が、後年、病床で何を想いこれらの作品を描き続けていたのか。工業的なモチーフのなかに故郷新潟の田畑を思わせる植物などが描かれているのも興味深い。

展示風景より hideki《北仙台駅》(2023)

廃材やボンドなどを使った緻密な街のジオラマ作品《北仙台駅》は、hidekiが約9年の歳月をかけて自宅で作り上げた作品だ。タイトルの「北仙台駅」は実在の駅だが、作家本人はそこに行ったことはなく、ネットで調べたり想像しながらビルや電柱、信号機、電線などがひしめく架空の風景を作り出した。最初の完成当時は現在の倍の大きさだった《北仙台駅》だが、現在は半分に分割され、残りの半分は自宅でさらに手を加え続けているという。

展示風景より 富永武の作品

ビールの空き缶を使いフリーハンドで作ったからくり人形の数々は、60代半ば頃から日雇い労働者の町として知られる大阪・西成区の釜ヶ崎で生活するようになったという富永武の作品。大の読書好きだという富永は、ある日図書館で手に取った写真集で「西洋からくり人形」と出会い、自分も作ってみようと思い立った。詩人の上田假奈代らが主宰し釜ヶ崎の「ココルーム」で開催される「釜ヶ崎芸術大学」の存在も、富永の継続的な創作活動の支えになっているという。

展示風景より 畑中亜未の作品

フランスで開催された「アール・ブリュット・ジャポネ」(2010-2011)などで注目を集めた畑中亜未は、生活用品や自然のモチーフ、世の中の事件やニュースまで、日々の暮らしのなかで気に留めたものごとを、クレヨンや色鉛筆を使った強い筆致と大胆な構図で描いたカラフルな作品群を展示。畑中の心を動かしたものや出来事を映し出したひとつひとつの作品から、いくつものストーリーが浮かび上がってくるかのようだ。

わたしたちひとりひとりの暮らしのなかにも、たくさんの「物語」がある。独創性あふれる7名の作家それぞれの背景にあるストーリーを味わいながら作品と向き合うことで、ここからまた何か、新しい「物語」が生まれるかもしれない。

なお、同展は、2024年1月24日(水)~2月7日(水)、たましんRISURUホール(立川市市民会館)へ巡回する。

<開催概要>
『アール・ブリュット2023巡回展 「ディア ストーリーズ ものがたり、かたりあう」』

2023年10月21日(土)~12月24日(日)、東京都渋谷公園通りギャラリーにて開催

公式サイト:
https://inclusion-art.jp/archive/exhibition/2023/20231021-225.html

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