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ナタリードラマ倶楽部 2023年秋クールを語り尽くす(後編))

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イラスト / トモマツユキ

放送・配信中のドラマについて語りまくる新連載「ナタリードラマ倶楽部」。Vol. 2となる今回は2023年秋クールの後編として、再びドラマウォッチャーの明日菜子と綿貫大介に集まってもらった。

後編で取り上げるのは10月3週目以降にスタートした作品。「コタツがない家」の仲直りシーンに涙し、「セクシー田中さん」の朱里を応援……そして「マイ・セカンド・アオハル」の今後を考えずにはいられない2人の、楽しいおしゃべりをお届けする。

取材・文 / 尾崎南・脇菜々香 題字イラスト / トモマツユキ

「コタツがない家」は未来のために作っている作品(綿貫)

──今回の2023年秋後編では、10月3週目以降にスタートしたドラマを対象にお話を伺います。お二人が特に好きな作品は?

明日菜子 後編のラインナップは、けっこうマニアックで攻めている作品が多いですね。私は「コタツがない家」かな。

綿貫大介 全部テイストが違うから評価軸がバラバラですが……私も「コタツがない家」ですね。

明日菜子 劇中で北村一輝さん演じるマンガ編集者・土門さんが言っていたように、舅と夫のいさかいを描くのはホームドラマとして新しい。男性である金子茂樹さんが、ある意味自覚しながら脚本を書いているのが斬新で、金子茂樹版「渡る世間は鬼ばかり」だと思ってます!

綿貫 (小池栄子演じる)主人公の万里江は、ウェディングプランナーとして会社を経営する社長。まだ“社長=男”のイメージがある中で女性の活躍を意識しているところがいいですよね。ただ、“ダメ男たちを支える”という設定は自己犠牲的でもあるので描き方が難しいところ。だからこそダメ男たちをどれだけチャーミングに描けるかが大切だと思っていて。金子さんが手がけたドラマ「俺の話は長い」の(生田斗真演じる)岸辺満はそこがうまかったんですけど、そのキャラを三等分にしていると考えると、まだ1人ひとりのキャラは弱い。ただ金子さんは、石川さゆりさんが歌う主題歌「ダメ男数え唄」の歌詞を書いたり、ダメ男たちを愛せるポイントを上手に作ろうとしている。これから視聴者が、彼らをどれだけ愛せるかというのがポイントだと思います。あとはタイトルに入っているコタツの重要性が隠されているのも気になる。近年のテレビにはホームドラマが足りていないと思っているので、毎週楽しみに観ています。

明日菜子 第4話で(HiHi Jetsの作間龍斗演じる)息子の順基とケンカした万里江が、昔のDVDで順基の小さい頃の運動会の映像を観るシーンが本当によかったです。

綿貫 あのシーンは泣けましたね。さらに翌日のバスのシーンもよかった。手の振り方とか、順基と万里江だけに通じる“許し合う態度”がよく伝わった。

明日菜子 高校生の息子と母親のリアルなやり取りって感じでしたよね。

──失恋のショックで暴走し万里江を責めてしまった順基でしたが、翌日謝るところにかわいげを感じましたね。(吉岡秀隆演じる夫・)悠作も、順基に対し万里江をかばう発言をしていて、いいところあるなと。

綿貫 わかります。悠作はこのあと、マンガを描くのかな? 完成したら感動しちゃうかもしれない(笑)。

明日菜子 あと悠作や順基のシーンはフィクションだと思って割り切れるけど、小林薫さん演じる父・達男が入ってくるとリアルさが増して……!

綿貫 それで言うと第1話で、万里江が山中で警察に保護された達男を迎えにいくシーン。警察署で達男は「帰りは俺が運転するから」「こいつ(万里江)の運転なんて危なっかしくておちおち寝てらんないっすよ」と言うくせに、次のシーンで思いっきり万里江が運転していた(笑)。人前では強く出ちゃう“お父さん像”がリアルでした。

明日菜子 「コタツがない家」はある意味、女性が男性のケアをする話だと思うんですが、なぜか気持ちよく観ています。万里江には家以外にも会社というコミュニティがあって、家族に振り回されながらも自分の人生の主導権をちゃんと握っている感じがするからかな。それで言うと同じくホームドラマである「ゆりあ先生の赤い糸」は、クローズな見え方がしますよね。

綿貫 「コタツがない家」でやろうとしてることって、けっこう未来的ですよね。正直今の日本のジェンダーギャップだと、万里江ほど稼いで家族を養える女性はまだまだ少ない。だから共感を狙っているというより、未来のために作っている作品だと思います。視聴者としてはコメディとして楽しむのが正解なんだろうな。

ゆりあが自宅に住まわせているのって、社会的に立場が弱いとされる人たち(明日菜子)

──それで言うと「ゆりあ先生の赤い糸」のほうが、共感しやすいかもしれませんね。

綿貫 「ゆりあ先生の赤い糸」は90年代のドラマっぽいなーと思って観ています。センセーショナルな要素がたくさん詰め込まれていて気になります。何より菅野美穂さんのキャラが好きだから、彼女のパワフルさに助けられている。別の方がゆりあをしんどく演じていたら、つらくて観ていられないかも。このドラマは、キャストが最高じゃないですか?

明日菜子 映画「蜜蜂と遠雷」で俳優デビューした鈴鹿央士さんが松岡茉優さんと再び共演し、一緒に物語の土台を支えているのが胸熱です……!

綿貫 みちる役の松岡さん、ご本人のキャラクターとは違うんだろうけど、おっとりしていて、“こういう人いる”と思えます。ゆりあにとっては夫・吾良の愛人疑惑の人物だから、描き方によってはめちゃくちゃ悪い人に見えるはずなのに。

明日菜子 「ゆりあ先生の赤い糸」はしっかりしたテーマがありそうですよね。ゆりあが自宅に住まわせているのって、同性愛者・シングルマザー・高齢者と社会的に立場が弱いとされる人たち。描きたいことはわかるのですが、着地点がまだわからない!

──当初は怒涛の展開にゆりあを「かわいそう……」と思っていましたが、ゆりあが夫の愛人に助けられる場面もありますよね。(※)

※編集部注:主人公・ゆりあの夫はある日突然、意識不明状態に。やがて次々に夫の彼氏や、シングルマザーの彼女が現れる。ゆりあは彼らと共同生活をしながら、夫の介護をする道を選ぶ。

明日菜子 そうなんですよ! 愛人に家のことを頼むなんて……と思っていたけど、よく考えたらヘルパーより都合がつきやすいし、私がゆりあでも割り切って頼るかも(笑)。あとはタイトルの「赤い糸」がどう結び付いていくのか……。

綿貫 第3話以降、ゆりあ自身の恋愛の話も進んできましたね。

明日菜子 そうですね。ただ、そこが物語の主軸ではないと思うんです。どこに行きつくのか、今後が気になります。

「木南晴夏 体型維持」で検索(明日菜子)

──明日菜子さんは「ゆりあ先生の赤い糸」「セクシー田中さん」「マイ・セカンド・アオハル」は“女性の年齢呪縛問題”を扱っているとおっしゃっていましたね。

明日菜子 そうなんです。この3作品は「◯◯歳だから」というのがキーワードだと思ってます。「ゆりあ先生の赤い糸」でも、ゆりあが歳下の男性と恋愛するとき“おばさんだから……”と自分を卑下していて。

──「セクシー田中さん」でも主人公の田中京子が自分を卑下する発言をしますよね。

綿貫 木南晴夏さんはいつもの快活なキャラクターではなく、抑えた演技をしていますよね。それはまさに「私なんて……」という田中さんの気持ちを体現するためだと思う。

明日菜子 「木南晴夏 体型維持」で検索しようとしたら、予測変換ですぐに出てきました(笑)。木南さんはパンが好きだし、みんな気になるのかも。また、めるる(生見愛瑠)が朱里を演じたことに意味があると思う。同世代の視聴者に訴求力があるから、ナイスキャスティングだなって。朱里の23歳という設定が絶妙ですよね。今では「23歳なんて若いじゃん!」と思うけど、当時は「もうおばさんだから」と言ってたなって(笑)。

綿貫 23歳がそのポイントなんだ!

明日菜子 学生から社会人に変わるタイミングなんですかね。朱里が“もう若くない”というスタンスでいるのがリアルだなと思いました。綿貫さんに聞きたかったんですが、毎熊克哉さん演じる笙野のキャラクターの描き方がけっこう露骨じゃないですか?

綿貫 このあと(笙野の)性格が好転していく予測を立てながら観ているのですが、それを見越して朱里がちゃんと笙野に怒るのがいい。笙野を悪く見せないように、ちゃんとキレる人を用意しているからうまいなって。だけどもう第4話(座談会実施時点)でしょ? まだ変わってない!(笑) 田中さんに対してずっとひどい態度なのに、近付いてくるから彼はどういう感情なんだ……。

──ちなみに田中さんは40歳、笙野は36歳、(前田公輝演じる)小西は35歳の設定です。

綿貫 笙野、同世代なんだし田中さんのことおばさんって言う権利なくない!?

明日菜子 確かに(笑)。でも、(笙野のような発言をする人が)現実にいないとは言い切れないと思います。男性キャラクターの中では、小西がマシに見えますね……。

綿貫 「セクシー田中さん」は何より、年齢差のある田中さんと朱里のシスターフッドが観ていて楽しいですよね。例えばバディモノだと、最初にどちらかが相手を嫌っていたり噛み合わない中で徐々に好きになるパターンもあるけど、朱里はベリーダンスを見たときから田中さんにいっさいのネガティブ感情を持つことなく“好き!”と突き進むのがめちゃめちゃよくて。特に説明なく“好き!”なのがいいんですよ。

明日菜子 若い女の子の「年齢を重ねたらどうしよう」という不安を打ち消すためには、魅力的なロールモデルを見つけるのが最善策だと思うんですよね。でもロールモデルにもその人の人生があるから、一方的に理想を押し付けるのは危ういなとも思っていて。「セクシー田中さん」第4話では、(THE RAMPAGEの川村壱馬演じる)進吾が朱里に「田中さんがキラキラしてないと不安になるんでしょ? それも依存じゃね?」と言う場面がありました。あのとき、年齢差シスターフッドの盲点をついたなと感じて、この作品への信頼度が一気に上がりました。

綿貫 たしかに相手をロールモデル的な見方をするのは危ういですよね。対等ではないから、シスターフッドの関係でもなくなってしまう。朱里には田中さんをそういうふうに見ないでほしいなあ。

明日菜子 朱里は進吾の言葉を受けて、田中さんに願いを託すんじゃなくて自分で発表会に出ようと思ったのがすごくよかった。2人は与え・与えられる関係だから素敵です。

「マイ・セカンド・アオハル」は令和の「ロングバケーション」(綿貫)

──“女性の年齢呪縛問題”で言うと、「マイ・セカンド・アオハル」はいかがでしょう?

綿貫 まずこの作品は、広瀬アリスさん演じる佐弥子が30歳になって“学び直しをする”という設定が最高! 勉強して、本気で人生を変えてほしいと思いました。ただ放送がスタートしてしばらくすると、ラブコメ要素が強くてモチベーションが落ちてしまって。だけど第4話で、佐弥子と(なにわ男子の道枝駿佑演じる)拓が初めてキスをしたシーンを見て、ある結論が出ました。

明日菜子 気になる!

綿貫 「マイ・セカンド・アオハル」は、令和の「ロングバケーション」なんです。そこに気が付いてから、一気に見方が変わりました。ヒロインと相手役の年齢差、ヒロインの“姉さん女房”的なキャラクター、2人が同じ屋根の下に住み、出て行く・出て行かない問題が発生するところ、最初はお互いに別の好きな人がいるのも同じです! 拓が好きな人に振られて、傷心で佐弥子とキスするのも同じ展開。キスしてからお互いが気になり出すのもロンバケの流れですから。もうこれは、令和のロンバケと認定しました。

明日菜子 えっ……私はアイドルオタクでもあるんですが、常日頃から道枝くんには“木村拓哉”を感じていたので、その説はしっくりきました!! あと瞳の水分量が多いからでしょうか、道枝くんの画面への吸引力がすごくないですか? シェアハウスの喧騒的なシーンから一転、拓と佐弥子の2人きりのシーンになるとこっちも真剣に観ちゃう。

綿貫 あとは佐弥子、勉強してほしい……お願いだから……。ここは「テラスハウス」じゃないんよ……。

明日菜子 あと気になったのが、安藤政信さん演じる日向祥吾。連絡不精だったりちょっとポンコツ!(笑)彼は本当に拓のライバルなんですかね? 別の男性が出てくるのかな? 同年代の男性が入学してくるとか。

綿貫 ロンバケ方式で言うと、1回歳上に行くと思う。拓との恋愛が本格的になると、佐弥子は年齢をネックに感じるはずなので、歳上の安心感に走るのでは。

明日菜子 (「セクシー田中さん」で)朱里の年齢の呪縛を解くのが田中さんならば、佐弥子にとってのキーマンは拓になるのだと思います。拓は「さや姉」呼びせず対等に扱ってくれるし、勉強のことも気にしてくれる。拓と向き合って、自分は何がしたいのか今後の人生プランを設計することが物語の鍵なのかな。ただ佐弥子は、おばさんを通り越して“おじさん”しぐさが多くないですか?「(金だらいは)上から降ってくるもんだと思ってた」と言ってたけど、今の30歳って平成5年生まれだからドリフ知らないと思う(笑)。

綿貫 わかります。ただ佐弥子が、歳下の子の略語や若者言葉を当たり前に受け入れて、わざわざツッコんだりしないのはよかったです。今どきの言葉もふんだんに使っているから会話のテンポがいい。

“私の見たい小芝風花”はこれだ!(明日菜子)

──ほかの作品はいかがでしょう? 「たとえあなたを忘れても」(テレビ朝日系 毎週日曜22時放送)は、“病気×恋愛”でこれまでも取り扱われてきたテーマですよね。個人的にはハマっているのですが。

明日菜子 脚本が浅野妙子さんなんですよね。

綿貫 そうそう。だから期待して観ていますが、まだ“古典的”な印象から抜けていなくて。

明日菜子 でもやっぱり展開力がありますよね。ベテラン脚本家のすごいところで、大きな出来事がなくてもストーリーが進んでいくんですよ。

綿貫 最初に2人が恋に落ちた瞬間がよくわからなかったんです。だから、(萩原利久演じる)空にキスされた(堀田真由演じる)美璃が涙ながらに「あなたは一度、私のこと忘れてる」と告げる場面がありますが、ピンと来ず……。2人が(空が記憶をなくす前に)何年も付き合っていたならその悲しみがわかるのですが、美璃とはまだ付き合ってなかったし、そんなに深い傷かな?って。あと第1話では奨学金の描写が出てきたり、美璃がお金に困っている様子だったけど、毎日空のもとにドリンクを買いに行っていて心配(笑)。(※)

編集部注:空が店主を務めるキッチンカーに、美璃は足繁く通うようになる。

──美璃の空への思いが伝わるシーンではありますが、たしかにやりくりが心配ですね(笑)。

綿貫 ほかには「うちの弁護士は手がかかる」(フジテレビ系 毎週金曜21時放送)の話がしたいです。第5話がうまかった。蔵前役のムロツヨシさんが撮影中に腹膜炎で入院してしまったのですが、それをうまく生かして作っていたんです。事情を知りながら観ていたから、スタッフよくやったね……と言いたい。ドラマ作りってすごい!

明日菜子 私は「うちの弁護士は手がかかる」に、“既存月9感”を感じてしまうんです。放送枠としては新しくて、「Mステ(ミュージックステーション)」や「金曜ロードショー」と被るからもっとインパクトがほしかった。でもフォロワーさんの中には「『いちばんすきな花』や『ゆりあ先生の赤い糸』の次の日だから、いい意味で何も考えずに観られる」という意見もあったので、楽しく観られるドラマではあるのかも。

──同じく金曜日には「フェルマーの料理」(TBS系 毎週金曜22時放送)が放送中です。

明日菜子 7月期の「トリリオンゲーム」と同じ枠ですね。内容も男性バディが天下を目指す点でちょっと被っているので、最初はハマれませんでした。ただ第4話で楽しみ方がわかりまして。これは(志尊淳演じる)海と(小芝風花演じる)蘭菜の“ケンカップル”の物語だと思うようにしたんです。(高橋文哉演じる)岳もすごくいいんですけど、主軸をずらして海の店を虎視眈々と狙う蘭菜のストーリーだと思ったら、楽しめるようになりました。蘭菜のキャラクターがめちゃくちゃいいんですよ。“私の見たい小芝風花”はこれだ!と思いました。

綿貫 現代と過去を両方見せながら展開するのも「トリリオンゲーム」と同じですよね。この店自体の設定がぶっ飛んでいて、マンガ感が強い。でもマンガの実写化にピッタリなキャスト陣だから、マンガ好きにはお薦めだと思います。

櫻井海音と原菜乃華のラブコメが観たかった……(明日菜子)

──小芝さんといえば、2024年1月期のフジテレビ系ドラマ「大奥」で主演を務めることが発表されましたね。西野七瀬さんの出演も明らかになりましたが、彼女の主演ドラマ「ポケットに冒険をつめこんで」(テレビ東京系 毎週木曜24時30分放送)も放送中です。

明日菜子 私は「ポケットモンスター 赤・緑」世代で、ドラマのターゲット層としてはドンピシャ。企画・プロデュースが畑中翔太さんなのですが、今どきの感性を持ってる方だなあと思っていて。私の中で“エモいドラマ”を作らせるなら、5本の指に入る方です。ただ、もともと絶対に面白いだろうなと思っていたので、もうちょっと物語が展開していくといいですね。ポケモンを通ってきていない人はどう観るのかな? 

──私はポケモンのゲームをまったくやっていないのですが、ポケモンのキャラクター自体は知っているので理解できました。ほかの作品で気になるものは?

明日菜子 「泥濘の食卓」(テレビ朝日系 毎週土曜23時30分放送)は土曜日ですよね。「単身花日」に続き、2枠連続で不倫ドラマ!

綿貫 「泥濘の食卓」は主人公・深愛を演じる齊藤京子(日向坂46)の演技が、感情のない子に見えて不気味さがうまいなと思います。原作にそっくりですし。ただの不倫モノとは違う気がする。主人公より、彼女の家族が怖い。

──深愛の母・美幸を筒井真理子さんが演じています。

綿貫 筒井さんは日本のドラマの毒親をすべて引き受けてくれているんじゃないかと思う(笑)。あとは吉沢悠さん演じる深愛の不倫相手・夏生。すごく魅力的に見える男性ではないけど、そういう人が不倫するというのがリアルなんですよ。

明日菜子 私は櫻井海音さんと原菜乃華さんをここで起用するんだ……と。この2人で普通にラブコメ見たかった!(笑)(※)

編集部注:櫻井海音扮するハルキと原菜乃華演じる尾崎ちふゆは幼なじみ。ちふゆはハルキに異常なほどの愛情を抱き、ストーキングや脅迫行為を加速させていく。

──前編の座談会ではNHKのドラマが大好評でしたが、「ミワさんなりすます」はいかがでしょうか?

明日菜子 「ミワさんなりすます」は映画が大好きな主人公が家政婦になりすまして推し俳優の家でしれっと働くというファンタジーな内容だけど、松本穂香さん演じるミワさんが真面目でいつなんどきも真剣だから、そのギャップが面白いです。

綿貫 ミワと(堤真一演じる)八海は、“ファンと推し”という作りで見せているので、今後2人が恋愛関係になるとしたらちょっと怖い。2人は年齢差があるし、権力関係も発生しているので。少女マンガで推しと恋愛する話ってけっこうあるけど、そっちの路線にいくと観たいものとは変わってくるので、踏みとどまってほしいです。

明日菜子 現時点では、ミワさんは八海にときめいてるけど、八海は彼女のことをそういう目で見ていないですよね。堤さんが色気を封印しているから、楽しく観られるのかも。

複雑な思いを抱くのに観てしまう「いちばんすきな花」(綿貫大介)

──後編もたくさんお話が伺えて楽しかったです。まだ各作品の放送は続きますが、最後に2023年10月期ドラマを改めて振り返りましょう。

明日菜子 秋ドラマって、1年の総括として(制作サイドが)力を入れる印象ですが、今年はけっこうチャレンジしている作品が多い感じがします。

綿貫 やっぱり王道の恋愛モノってもう少ないんだなと思いました。秋ドラマの放送期間にはクリスマスがあるから、恋愛ドラマが多いイメージだったんです。こうして振り返ると、今回は「silent」(2022年10月期放送)みたいなまっすぐな純愛モノが少ない。その残念さはあるけど、最近少なかったホームドラマが増えてきたのはうれしいです。今はもう、家族みんなでドラマを観るシチュエーションってあまり想定されてない作りなのかな。だからこそ個性がバラバラな作品が生まれている気がします。

──2023年秋ドラマ全体の中で、特に好きな作品は?

明日菜子 私はいつも年末にその年のベスト決めるんですけど、今の段階でランキングに入りそうな作品は「時をかけるな、恋人たち」と「コタツがない家」かな。

綿貫 私は順位を決めたくないので、“トータル1位”はないんですけど、複雑な思いを抱くのに観てしまう「いちばんすきな花」ってなんなんだろう?とずっと考えています。 観始めても途中で脱落する作品がいくつもある中で、それでも観させるってやっぱりそれはすごいことですから。

【前編はこちらから!

明日菜子(アスナコ)

2017年に日本のドラマの楽しさに目覚め、毎クール20本以上のドラマを鑑賞しているドラマウォッチャー。「文春オンライン」などに寄稿している。トンチキドラマが好き。

綿貫大介(ワタヌキダイスケ)

エンタメを中心としたカルチャー分野で活動する編集者・ライター・テレビっ子。「TVerプラス」で今季ドラマのレビューコラムも連載中。“恋に仕事に大忙し”の主人公が出ているドラマが好き。