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片桐はいりと安藤玉恵が競演。ダブルキャストで一人芝居に挑み、 死と向き合う少女が見る世界を描く。

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左から)片桐はいり、安藤玉恵  撮影:興梠真穂

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癌に侵されて命の終焉を迎える7歳の少女の独白で綴られる『スプーンフェイス・スタインバーグ』。ミュージカル『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』などで知られる劇作家リー・ホールの作品だ。小山ゆうな演出のもと、この一人芝居に挑むのは、片桐はいりと安藤玉恵。それぞれに他にない個性を持つ魅力的な俳優であり、その個性がすでにいろいろなアイデアを生み出しているようだ。生きること、死ぬこと、そしてお芝居が、いかに豊かであるか。このふたりならきっとそんなことを届けてくれるだろう。

どちらかが“標準”とはならないふたり

──一人芝居をダブルキャストで演じられます。オファーを受けられたときのお気持ちからお聞かせください。

片桐 これは発表されたコメントでもお話した通りなんですが、セリフがすごく多い役と病気で苦しむ役は、最も演じたくないものなので、お話があったときはやらないだろうと思っていたんです。ところが、たわむれに戯曲を声に出して読んでみたら、自分の中にちょっとこれをやったり言ったりしてみたいという気持ちが出てきて。どういう理屈かわからないんですけど、「この船に乗れ」と言われた気がしました。

安藤 私も本を読んで直感がありました。フラットに読み始めたんですけど、すごく感情が動いて。これに呼んでいただいたということは、今私がやらなきゃいけないものなんだなと思ったんです。内容的にも、このスプーンフェイス・スタインバーグという女の子が自閉症だったり、癌になったりする中で、戦争の話や命の話をしていく。これはやったほうがいい、やりたいと思いましたね。

片桐 お父さんにもお母さんにも問題ありだし、本当によくこれだけいろんな問題をてんこ盛りにしたなという感じではあるんですけど。でも、だからといって、読後感が辛いかと言われるとそうじゃない。

安藤 文体がそんなにウエットじゃなくて、淡々としてますよね。

片桐 自分も障害があって病気なのに、全然被害者っぽくない。その感じがすごくカッコいいんです。

安藤 自分より不幸な人に同情したりもしてますから、人としても素敵な女の子ですよね。

片桐 だから、外国のお話だろうと同じというか、人としての部分が面白くなったらいいなと思ったんですよね。それに、実は先に安藤さんが出演されることが決まっていて、先に安藤さんが船に乗っていらっしゃったということは、私にとってかなり大きかったです。ひとりでこれに挑めと言われるとやっぱりちょっとビビりますし。安藤さんと私って、どちらかが標準です、みたいなことにならない感じがするから、面白いことになりそうだなと。私も安藤さんを観たいと思ったし。

安藤 本当に、どちらを観るか迷ったら、自分の友だちでも、「はいりさんのほうをおススメ!」なんて言ってしまいそうです。私のも観てほしいけど。

──そういう思いになるのは、お互いをどういう俳優だと感じられているからですか。

安藤 はいりさんはもう、大学1年生で演劇を始めたとき(「早稲田大学演劇倶楽部」で活動)から観ていた人ですから。はいりさんが出演しておられた『マシーン日記』(’96年)が、私が初めて面白いと思った演劇で、生まれて初めて感じた衝撃があったので、そこから常に違う存在として私の中にいるんです。

片桐 ほんと!? 私にとっての緑魔子さんみたいな存在? いや、緑魔子さんと私では全然違いますけど(笑)、私は本多劇場のこけら落とし公演の『秘密の花園』(’82年)で緑魔子さんを観て衝撃を受けたんです。

安藤 それを観ておられるのはすごいです。

片桐 すみません、話が逸れてしまいましたね。安藤さんのことは、とくに『命、ギガ長スW』(’22年)を観たときにすごいと思ったんです。上手く説明できないんですけど、認知症のおばあちゃん役のときにスウェットの紐をぶら下げていたでしょ。それが面白くなる人でないとこの役はできないなと思って。その力の抜け具合と面白さのバランスが、私の最高に好きな感じで、安藤さんみたいな面白い感じっていいなと、憧れがありました。

安藤 初めて言われました。いつも一生懸命なだけなんですけど……。

片桐 あと、近所のよく行くごはん屋さんで、今一番観たい女優は誰かみたいな話になったときに、「安藤玉恵!」っていうので盛り上がったんです。「ふーん、私がいるのに安藤玉恵の話をするんだ」ってカチンときながら(笑)、この人なら観たいと思うおひとりなんだなと、改めて認識しました。

安藤 わー大変だ。そのお店に行かないといけないですね(笑)。

7歳の英国の少女をどう演じるか
観客の想像を超えていきたい

──一人芝居については、片桐さんは、岩松了さん作・演出の『ベンチャーズの夜』(’94年)、岡田利規さん作・演出の『あなたが彼女にしてあげられることは何もない』(’23年)で経験され、安藤さんは、ご実家のとんかつ店「どん平」で一人芝居シリーズをやっておられていますが、その面白さや魅力はどう感じておられますか。

安藤 私は演出家がいなくて本当にひとりきりでやっていたので、一人芝居の稽古は孤独で寂しいというのがあったんです。ひとりで戦っていて、共有できる人がいないですから。

片桐 孤独なのはすごくわかります。「今日のお客さん◯◯だったね」とか言い合える人がひとりもいない。あれは本当に寂しいです。ただ、1対150とかで芝居をしているから、お客さんからの波動をひとりで受けるわけで、その影響ってやっぱり大きいんです。もちろん、お客さんたちと作っているんだというのは何人で演じていても同じなんですけど、ひとりだとより風圧を感じるから。その良し悪しはさておき、その楽しさが、ひとりでやるっていうことの大きな要素かなという気はします。

安藤 そうですね。店でやっているときは、それこそお客さんが25人くらいしかいなくて全員の顔が見えちゃうので、一体感もあるというか。あの人に笑ってもらったほうがいいかなとか、個人個人に対応できるくらいの感じなので、それはそれでいいんですよね。ただ、今回は、稽古で一度ちゃんと完成させておかないと、そこからいろいろなことはできないかなと思っていて。できるだけ完璧な形で初日を迎えたいなとは思っているんです。

片桐 決めておいた上で、「今日はこの設定でやっていいですか?」っていうようなことができたらいいけど。

安藤 できるようにはなりたいです。

片桐 どっちもありかな。

安藤 そこはもう、演出の小山さん次第ですね。

──7月にすでに顔合わせ、本読みをされたそうですが、小山さんとはどんなお話をされていますか。

片桐 そもそも、設定自体が無理な話で、7歳の英国の少女をやれと言われてもできないのはわかっているので、何らかのアイデアが必要だと思うんですね。でも、それを本稽古が始まってから出し合って、時間が足りないといった理由で実現しないのはもったいないから、早めに少しずつ進めていきませんかというお話を、まずさせてもらったんです。

安藤 はいりさんにそう言っていただいたのはありがたかったです。

片桐 安藤さんも面白いことがいろいろ浮かぶっておっしゃっていたし。

安藤 劇中にマリア・カラスのオペラ音楽が出てくるので、できるわけないんですけど、「オペラを歌いたいです」と言いました。何でも言ってみようと思って(笑)。

片桐 私も、抗がん剤治療の副作用のための帽子を被って普通にベッドに座ってやるのはイヤですよとか、「ママ、パパ」を「お母さん、お父さん」にしてみていいですかと言ったり。7歳だからって、子どもっぽくやるのはイヤだなと思うんですよね。

安藤 きっと観る方も、そういうのを観たいわけじゃないと思うんです。どういう想像をしていらっしゃるかはわかりませんが、想像は超えたいですよね。ちょっと笑いも入れたいじゃないですか。家でひとりで読んでいると、泣かないで読めたことがないんですけど。

片桐 わかります。本読みをしたときもグッときちゃうことがあって、10回言えば大丈夫、もう泣かないと思ったんですけど。

安藤 その読んでいて苦しくなるところを稽古でどう乗り越えていくか。切実なんだけど、切実なだけで終わらせたくない。この緊張感はキープしつつ、エンターテインメントにはしたいんですよね。子どもからお年寄りまで楽しんで観られるような。

片桐 今回は小学生から観られますしね。だから、いろんなアイデアを出していきたいです。ただ、私はいっぱいいろんなことをやりたがるんだけど、安藤さんがふっと力を抜いて面白くやったら、そっちのほうが伝わるなと思って最終的に全部なくすかもしれない。それはもう想定済みです(笑)。

安藤 私は逆に、稽古で一回全部『片桐はいり』になってみるのもいいなと思っています。強烈だから観ているだけで入ってきちゃいますし。それでも出てくる何かが自分かなとも思うので。そういう意味では、セットと入る音楽は同じでも、衣裳や小道具が全部違うという可能性もある。

片桐 セリフも語尾が違うかもしれないし。

安藤 やっぱりこの公演、両方観なくちゃいけないんじゃないですか(笑)。

片桐 セット割引もあるそうですから(笑)。

安藤 たくさんの方に来ていただきたいです。一緒にお芝居をつくる共演者だと思って。

片桐 そう。さっき言ったように、一人芝居はとくに、お客さんが持ってくるものって重要な気がしますから。本当に共演者だと思って来てください(笑)。

取材・文:大内弓子 撮影:興梠真穂

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<公演情報>
『スプーンフェイス・スタインバーグ』

作:リー・ホール
翻訳:常田景子
演出:小山ゆうな

出演(Wキャスト):
片桐はいり 安藤玉恵

2024年2月16日(金)~3月3日(日)
会場:KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2347312

公式サイト:
https://www.kaat.jp/d/spoonface_steinberg

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