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大森靖子×峯田和伸(銀杏BOYZ)×大木温之(ピーズ) 全然オシャレじゃない 日本語アーティスト鼎談【前編】

音楽

インタビュー

ぴあ

左から)大木温之(ピーズ)、大森靖子、峯田和伸(銀杏BOYZ) (Photo:石原敦志)

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来る12月13日(水)、大森靖子、銀杏BOYZ、ピーズのスリーマンでのライブが開催される。
ぴあpresents『dabadabada vol.2 -Re:Re:Re:Live-』というイベントのもので東京・TACHIKAWA STAGE GARDENでのステージになる。

各アーティストの詳細を知っている人ならわかる通り、大森靖子は銀杏BOYZとピーズに影響を受けて育った世代で、銀杏BOYZの峯田和伸はピーズに影響を受けて育った世代だ。

いわば3世代の夢の共演と言っても良いものだが、その長兄と言っても良いピーズの大木温之は「まぁ『全然オシャレじゃない日本語の歌』でがんばるという意味では共通点かもしれないね」と照れくさそうに笑う。

ここでは、その言葉通り「全然オシャレじゃない日本語アーティスト鼎談」と題し、彼らの共通点とライブにかける思いを、大森靖子、峯田和伸、大木温之の三者に語ってもらい、【前編】【後編】でお届けする。

【前編】の今回はアーティスト同士の影響を受けたところ、交流秘話などを中心におおいに語ってもらった。

ぴあpresents『dabadabada vol.2 -Re:Re:Re:Live-』チケット情報はこちら

「ピーズにはずっと運命を感じていた」(峯田)

――峯田さん、大森さんにとってピーズは大先輩にあたりますよね。

峯田和伸(以下、峯田) そう。はるさん(大木温之)の前ではこんな話はしたことないんだけど、実は僕、ピーズに運命のようなものを感じてたの。まず、僕ははるさんの12個下で干支が一緒で、さらに誕生月も一緒なの。
さらに、僕が初めて組んだバンド、GOING STEADYを始めた1997年に、ピーズが『リハビリ中断』というアルバムを出して活動停止になっちゃった。「うわ、ずっと聴いていたピーズと一緒にライブハウスで共演できるかもしれないって夢を描いていたんだけどな」と思って。マジで「ピーズと対バンする」っていうのはこの頃の目標だったからね。だから、超悔しかったけど、でもさGOING STEADYが解散することになった翌月に、今度はピーズが復活したの。

峯田和伸(銀杏BOYZ)

大木温之(以下、はる) 俺は峯田の生まれ変わりだね(笑)。

峯田 そんなことがあったから勝手にはるさん、ピーズには運命を感じてるんだ。またさ、運命的な話で言うと、靖子ちゃん(大森靖子)もそうなんだ。
僕はGOING STEADY解散後に、銀杏BOYZを始めたわけだけど、そのときにさ、毎晩僕にメールをくれていたのが靖子ちゃん。当時はSNSなんかなかったし、手紙以外ではメールが主流だったの。そのメールのタイトルは必ず「大森 靖子」。「峯田さんへ」とかじゃなくて、自分の名前なんだ。しかも、ちゃんと苗字と名前の間に、絶対半角開けてるっていう(笑)。そのメールが毎回超長いの。

大森靖子(以下、大森) でも当時のメールって500文字しか送れんかったから、そんなに長くないよ。

大森靖子

峯田 いや、原稿用紙1枚分と思えばやっぱり長いよ(笑)。たださ、このメールがすごく面白いんだ。当時の靖子ちゃんは高校生だったけど、書いてあることがすごく面白かった。

はる それはファンレターみたいなものなの? ライブの感想とか?

峯田 いや、「今日学校でこんなことがあって」「親とこんな話をして」みたいな。

大森 今思うと怖すぎる。恥ずかしい……。

峯田 いや、でも面白かったの。その頃、銀杏BOYZのお客さんからいっぱいメールをもらったけど、靖子ちゃんとか他の面白いメールはちゃんと保存してた。面白いことを考える人だなと思って。
それから数年後に、あるライブをライブハウスに観に行ったの。ライブハウスって、壁にいろんなバンドとかアーティストのチラシがベタベタ貼ってあるじゃん。その中にさ、「大森 靖子」っていう名前を見つけて。「あれ、この名前どこかで見たことあるな……あ、あのメールをくれていた人かも」って。でも、そのときに思ったのは「あの人なら、バンドとかもやりかねんな」っていう。そして、やっぱりチラシの「大森 靖子」は、あの頃僕に毎日メールをくれていた靖子ちゃんだったっていう。
その後もぴあのイベントで一緒にツーマンをやらせてもらったりしたけど、これも運命みたいな感じがしてすごくうれしかった記憶がある。

「ピーズの音楽の中には自分がいると思った」(大森)

――もちろん、大森さん、銀杏BOYZ、ピーズでは表現面での共通点もありますよね。

はる 「全然オシャレじゃない日本語の歌でがんばる」とかそういうところは共通点なのかもね。普通、ロックって言ったら、もっとみんなカッチョ良いじゃないですか。

大木温之(ピーズ)

峯田 でも、そういうピーズの表現みたいなところにはメチャクチャ影響を受けていますよ。歌詞とかね。長くなるから具体的には言わないけど、とにかくピーズは憧れのバンドだった。
でもさ、初めてはるさんに会ったときの印象が最悪で。イノマーさん(オナニーマシーン)と一緒に本を出すことになり、その取材ではるさんに会いに行ったの。そしたらさ、指定されたのが赤羽のゲロ臭い居酒屋でさ。顔も見えないくらい真っ暗な電球の店で、闇鍋みたいなのが出てきて。「なんでこの鍋、こんなに酸っぱいんだ」と。しかも、はるさんまだ酒を飲んでた時期だから、勝手に飲んで取材になんないの。最終的にはベロベロになっちゃって、彼女が迎えに来てさ。最後は「バーカ、バーカ。お前らバーカ」って言いながら帰っていった。「なんなんだ、この人は」と。

一同 (爆笑)

――その点、大森さんは峯田さんとアーティスト同士として出会ったときはどうでしたか?

大森 最初に峯田さんと話したのはいつだったかはもうわかんないんです。ずっと銀杏BOYZのライブを観に行って、追っかけ続けていて、ライブの後に話をしてもらったりもしていたので。ただ、メールを送っておきながらしばらくは名前は言わないようにしようと思っていました。自分が音楽を始めたときに「銀杏BOYZが好き」っていうことが事前にあると、「そういう人の音楽なんだ」ってことになるから、それがイヤで。でも、さっき峯田さんが言ってくれたみたいに、たまたま私の名前と活動を知ってくれて。それが自然ですごく嬉しかったです。わーいっていう感じでした。
ただ、以降、峯田さんと話をするようになっても、峯田さんって日によって違うんですよね。「今日は後輩扱いだな」っていう日と、「今日はすごい距離があるな」っていう日と。

峯田 そんなことはないよ。

――いや、大森さんが言う感じはよくわかります。峯田さんがピリピリしているときはちょっと距離があるというか。

大森 そう。ただ、優しいのは優しい。後輩とかを大事にしてくれる。
それが私にとっての銀杏BOYZなんですけど、ピーズももちろんすごく好きで。私、自称進学校みたいな高校に通っていたんですけど、ピーズには「進学校ヤンキー」の曲とかがあって「あ、ピーズの音楽の中に、自分がいるかもしれない」と思いながら聴いていました。
なんか一般に流行っている少年漫画とか少女漫画とかを読んでも、「このストーリーの中には、自分がいない」「なんか違うな」と思いながら見ることが多かったんです。でも、ピーズの音楽の中には「いる」と思って好きになりました。

「ふたりとも田舎から出てきたアンちゃん、姉ちゃんって感じ」(はる)

――ただ、はるさん、峯田さんって似ているところももちろんありますけど、性格も表現もやっぱり違いますよね。

大森 全然違いますね。峯田さんが歌詞で描く「女性」みたいなイメージは、自分の中に絶対いないんです。いないからこそ「私もこんなふうに歌ってくれたら良いのにな」って思いながら夢を見ることができるんですけど、ピーズの歌詞で描かれている「女性」にはなれそうな気がする。

峯田 なるほど。それはなんかわかる。

大森 だから、ピーズを聴きながらずっと土手を歩いたりとかはできると思うんですけど、銀杏BOYZの歌詞の世界には私がいないんです(笑)。ピーズと銀杏BOYZはどっちも大好きですけど、受け取り方が全然違うんです。

――こういう話を大先輩のはるさんはどう思いますか。

はる 大先輩でもないし、どんなに若いバンドでも後輩とかも思ったことないけどね。だいたい峯田にしても大森さんにしても、田舎から出てきたアンちゃん、姉ちゃんって感じでしょ。

峯田 ……うるさいなー、成田(はるの出身地)だって田舎じゃん。

一同 (爆笑)

はる いや、そんなに気取った人たちじゃないっていう意味で(笑)。たとえば子供の頃から音楽の勉強をずっとやってきて、「音楽家になりました」っていう感じじゃないじゃん。それよりは田舎で過ごして酔っ払った勢いで田舎から出てきたっていう。しかも、大森さんも銀杏BOYZも対バンやったことがあるけど、同じステージに立てば先輩も後輩もないじゃないっすか。むしろ俺はズーズーしく「同い年」くらいの気分でやらせてもらっていますよ。

峯田 でも、すごいからね、ピーズは。はるさんがポロッと言ってくれた言葉とかをずっと覚えているし。

大森 ピーズは私の人生とまったく同じ年齢でもあるし。

はる 俺は何もすごくないよ。むしろサボってるほうだよ。全然がんばっていないし、「がんばっていないほうの先輩」という意味ではすごいかもしれない(笑)。だってさ、もっと世の中でがんばっている人たちの音楽に触れたりすると、「ああ俺はやっぱりダメだな。明らかに違う世界だ」って思うし。俺ができるのはワイルドサイドっちゅうか、土手をテクテク歩くしかできないからね。

後編に続く)

Text:松田義人(deco) Photo:石原敦志

<公演情報>
ぴあpresents『dabadabada vol.2 -Re:Re:Re:Live-』

12月13日(水) 東京・TACHIKAWA STAGE GARDEN
OPEN17:30 / START18:30

出演:大森靖子、銀杏BOYZ、ピーズ

【チケット情報】
1Fスタンディング(整理番号順入場):6,900円(税込)
2-3F指定席(階層指定不可):6,900円(税込)
https://w.pia.jp/t/dabadabada-2/

関連リンク

大森靖子 公式サイト:
https://oomoriseiko.info/

銀杏BOYZ 公式サイト:
https://gingnangboyz.com/

ピーズ 公式サイト:
http://thepees.com/

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