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『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』監督が“本作で目指したもの”とは?

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ティモシー・シャラメ、ポール・キング監督

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ティモシー・シャラメが主演を務める映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』が日本での公開をスタートさせた。本作は、ロアルド・ダールの児童小説『チョコレート工場の秘密』に登場するウィリー・ウォンカの若き日を描くオリジナル作品。監督と脚本を務めたポール・キングは、基になった小説のスピリットを最大限に尊重して作品づくりにあたったようだ。

キング監督は、児童文学を映画化した『パディントン』で高評価を集めたが、『チョコレート工場の秘密』も子どもの頃から愛読していたという。

「親に読んでもらうのではなく、自分ひとりで読んだ初めての小説が『チョコレート工場の秘密』でした。それから何十回と読み返したのですが、その時に感じていたのは、この小説がとにかく面白い! ということ。ヘンテコで奇妙な登場人物が楽しかった! という幼少期の思い出があるんです」

ここで少し振り返る。ダールの小説『チョコレート工場の秘密』の主人公は、貧しい少年チャーリー。ある日、彼はチョコレート工場の工場主ウィリー・ウォンカが封入した”工場見学の招待券”を引き当てる。チャーリーが訪れたチョコレート工場は摩訶不思議な世界。ウォンカは謎に満ちた孤高の人物だが、彼はチャーリーの内面を見抜き、結末でチャーリーにチョコレート工場をゆずる。

「プロデューサーのデイヴィッド・ヘイマンから今回の企画を打診されて、改めて小説を読み返したら、この小説はすごい感動する物語を描いていることに気づいたんです」とキング監督は笑顔を見せる。

「この小説の主人公チャーリーは貧しく、とてつもない逆境の中を生きています。まるでディケンズの小説の主人公のようです。だから、そんな彼がウォンカからチョコレート工場を引き継ぐ場面では感動して、思わず泣いてしまったんですよ。今までずっと忘れていましたが、この物語は単にグロテスクで面白いだけではなくて、その根底には“ハート”がある。そこに惹かれてこの映画のオファーを引き受けた部分もあります」

本作は小説の“前日譚”になるが、そのスピリットは継承されている。映画の主人公ウォンカはまだ若く、自分のチョコレート店をだすことを夢見ているが、宿代もないほどに貧しく、コネもなければ、未来への展望もない。しかし、彼は心と魔法のつまったチョコレートをつくりだし、仲間と共に夢を追いかけていく。

劇中にはさまざまなチョコレートが登場し、観る者を楽しませてくれる。食べるだけで宙に浮き上がるチョコレート、美しい花のようなチョコレート……そのデザインと設定はとにかく楽しいが、本作では小説『チョコレート工場の秘密』の世界観を引き継ぎ、“チョコレートの二面性”を描いている。美味しいチョコレートは時に人を誘惑し、溺れさせてしまう危険なものでもあるのだ。

「この映画ではチョコレートを“欲望”や“貪欲さ”を象徴するものとしても描いています。ロアルド・ダールの小説では、チャーリーは飢え死にしそうな状態なのに、チョコレート工場にやってくるほかの少年・少女はとにかくチョコレートが欲しい! 欲しい! と欲望のままにチョコレートを口にしていました。その要素をこの映画ではウォンカに対峙する悪役たちに体現してもらうようにしました。彼らは権力やお金欲しさに、警察長官はチョコレートそのものが欲しくて溺れてしまい、自らの欲望のために他者を排除してしまうわけです」

本作が描くウィリー・ウォンカの“二面性”

ポール・キング監督

チョコレートだけでなく、主人公ウォンカも“二面性”のある存在だ。本作の彼は、亡くなった母との思い出と約束を胸にまっすぐに夢を追い、華麗な歌と踊りで観客を魅了する。しかし、彼は前向きなだけの青年ではない。それこそがダールが小説で描いたウォンカ像だからだ。

「この映画ではウォンカの二面性を描いています。童心をもったウォンカを描く一方で、鋼鉄のような意思を貫こうとする彼の姿を描いています。というのも、本作では彼がチョコレート工場を営むにいたった“種”を見せたかったからです。小説のラストでウォンカはチャーリーにチョコレート工場をゆずるわけですから、優しくて温かい人だと思います。一方で、ウォンカには“これ以上は何があってもゆずらない”という部分があります。

だから本作では彼の中にあるふたつの側面を、どのバランスで出していくのかをシーンごとに緻密に組み立てていきました。ティモシー・シャラメの演技とパフォーマンスは本当に素晴らしいんですよ。彼は抑制を効かせなながらも感情の深い部分まで掘り起こす演技ができる。だからこそ、私たちはウォンカの二面性のバランスをシーンごとに話し合って“どこまで感情のニュアンスを出すのか?”を組み立てることができたのです」

ウォンカは夢を追う好青年だ。しかし、彼は孤高の人でもある。だから、彼は困難に立ち向かう際、出会った仲間たちと共に協力するが、決して”家族”にはならない。本作を紹介する際に“家族”と書いてあるときは少し立ち止まってほしい。『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は家族を描いた映画ではない。ウォンカと仲間たちは、ある偶然から知り合い、同じ目的のために力を合わせ、すべてを分け合う確かな友情を築き上げる。しかし、彼らは家族ではないので、目的を達成するとそれぞれが新しい場所に歩き出すのだ。

「まさにその通り! そう言ってくれてうれしいよ! 小説に登場するウォンカは、ウンパルンパの助けを借りてはいますが、チョコレート工場をひとりでやっている。彼はずっとひとりで、家族や人とのつながりを求めてきたけど、それらは指の間からするりとこぼれ落ちていってしまうような存在だと思うのです。そんな彼が最後の最後にチャーリー少年に会うわけです。

だから、この映画で僕が目指したのは、ある目的のために人々が集まって、終わるとそれぞれが散っていく物語。それこそがやりたいことだったし、そういう終わり方には哀愁や心にしみるものがあって、ウォンカというキャラクターに寄り添っていると思います。ウォンカを真実味をもって描こうとした結果、このような物語になったのです」

人気作のキャラクターだけを取り出して、別作品がつくられることは多くある。中には基になった原作の精神を台無しにしてしまうものや、都合よく必要な要素を抜き出して描いている作品もある。しかし、『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は、ロアルド・ダールの小説のスピリットを丸ごと継承した映画になっている。

「現在、映画はいろんなカタチで楽しめますが、映画館にみんなで集って一緒に体験する、これに勝るものはありません。共通体験として映画は最高だと思います。ぜひ、映画館でみんなで集って楽しんでほしいです!」

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』
公開中

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