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ディズニー最新作『ウィッシュ』監督が作品にこめた想い

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『ウィッシュ』

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ディズニー・アニメーション・スタジオの最新作『ウィッシュ』が公開されている。本作は、『アナと雪の女王』を大成功させたクリス・バック監督と、新鋭ファウン・ヴィーラスンソーンが監督を務めており、本作も歌と魔法に満ちた壮大なドラマが描かれる。その一方で、本作は観ていると、親密で身近な感情が丁寧に描かれていることがわかる。なぜ、彼らは映画の根底に“作り手の身近な想い”をこめるのだろうか? 両監督に話をきいた。

バック監督は1978年にディズニーに入り、伝説的なアニメーター“ナイン・オールド・メン”のひとり、エリック・ラーソンの下で学び、アニメーターやキャラクター・デザイナーを経て、1999年製作の『ターザン』で監督デビューした。スタジオを離れていた時期もあったが、復帰後に『アナと雪の女王』を手がけ大ヒットを記録。本作では、スタジオのストーリー部門で頭角を現してきたファウン・ヴィーラスンソーンとタッグを組んでいる。

本作は、スタジオの100周年を記念する年に公開になるが、バック監督は「ディズニーのクラシック映画のようなノスタルジーを感じるけれども、まったく新しい映画をつくりたいと最初から考えていました」と語る。

「スタジオはこれまでに多くの素晴らしい映画を作り上げてきましたから、まずは自分たちのレガシーを振り返ることから創作を始めたいと思ったのです。ウォルト・ディズニーもきっと自分たちがこれまでに作り上げた映画からインスピレーションを受けていたはずですから」

過去の作品からインスピレーションを受けるが、手がけるのはあくまでも“オリジナル作品”。さらに本作は“今後のディズニー作品”にバトンをつなぐ映画が目指された。

ヴィーラスンソーン監督は「この映画で大事だったのは、次の100年の“はじまり”を告げる映画にすること。ウォルトが大事にした“革新”を大切にした新しい映画をつくることでした。過去の作品を振り返るだけの映画をつくることもできました。でも、次の100年を見据えたもの、これからも観る人にインスピレーションを与えるもの、観客の境界線を押し広げるような映画を作りたいと思ったんです」と語る。

そこで彼らが舞台にしたのは、誰の願いも叶うという王国ロサスだ。この国では世界中の魔法を学んだマグニフィコ王が国民の願いを預かり、その願いは順番に叶えられるといわれている。しかし本作の主人公アーシャの願いは“祖父の願いが叶う”こと。『ウィッシュ』というタイトルの映画で、冒頭から主人公には自分に関する願いがない、さらに彼女は王国の恐ろしい秘密を知ってしまう……意表を突く幕開けだ。

「アーシャはロサスを愛しています。だから少しは希望を持っているんだと思うんです。でも彼女は幼い頃に父を失い、自分の本当の願い=父にもう一度会いたい、が叶わないことに思うところはあるのかもしれません。でも、アーシャは王国の秘密を知り、自分だけでなく、すべての願いや希望を取り返すことができないのか考えます。アーシャがこれまでのディズニー作品の主人公と違うのは、その願いが自分のためだけではなく、他の人のため、コミュニティ全員のためであることです」(ファウン・ヴィーラスンソーン監督)

映画の作り手は集団ですが、そこには個々の想いがある

ファウン・ヴィーラスンソーン監督、クリス・バック監督

映画では、王国の人々を救うため、アーシャの行動と選択が想像もしなかった奇跡を起こすまでが描かれる。登場するキャラクターや舞台設定、アニメーション表現はスタジオの挑戦が結実した新たな表現に満ちているが、ディズニーはキャリアのあるスタッフが若い世代に経験や想いを継承することで100年続いてきたスタジオだ。本作でもこれまでのディズニーのレガシーを随所に見つけることができる。

「100周年という節目に、監督する機会を与えられて最高の気持ちです。小さな頃からディズニー作品を観て、アーティストになりたいと思ってきましたから。このスタジオの好きなところは、長い歴史があって、私が大好きな作品をつくった人たちがスタジオにいることです。12年前に入社して以来、私は彼らの話を聞き、コラボレーションもできる。そうやってここまできたのです。だから、この映画は、これまでのディズニー映画とそれに関わる人たちに受けてきたインスピレーションを祝福する映画になったと思っています」(ファウン・ヴィーラスンソーン監督)

「ディズニーの歴史は、やはり素晴らしいストーリーとキャラクターによって続いてきたのだと思います。ウォルト・ディズニーは誰もが共感できる物語と、映画を超えて自分の人生になりえるような音楽をつくろうとしてきました。ですから、私たちはどの映画でも観る人の記憶に残り続けるキャラクターを描きたいと思っています。ディズニーの名曲たちと同じように、そのキャラクターが作品を超えて愛されるような。それこそがウォルトがはじめた魔法のひとつだと思うし、ウォルトが感じたエンターテイメントのキャラクターに対する想いだと思うのです。それを僕たちが引き継いで100周年を迎えたのだと思います」(クリス・バック監督)

ウォルト・ディズニーというひとりの人物の想いを丁寧にすくいとる。この積み重ねでスタジオは100年にわたって多くの作品を生み出してきた。だから現在も彼らは監督や脚本家、アニメーター……ひとりひとりの想いや情熱を重視する。

本作はファンタジックな世界観や、印象に残る音楽、歴代のディズニー作品を連想させる描写がふんだんに盛り込まれており、スタジオの“節目”を感じられる映画だ。しかし、『ウィッシュ』の根底には、ひとりの人間が観る者ひとりひとりに語りかけてくるような温かみがある。誰もが感じたことのある想いや痛み、情熱があるのだ。

「それまでも画コンテを使ってストーリーを語る仕事はしてきましたが、ディズニーに入ってからは毎日、挑戦が待っていました。自分自身をどうやってストーリーに反映させるのか、物語と観客の心、自分の心をどうやってつなげるのか? 自分の人生には大切なものがあり、それがあるから人に伝えることができると思うのですが、自分にとってそれは何なのか? それを見つけることが大事でした」(ファウン・ヴィーラスンソーン監督)

「これまでにつくられた映画は、どれも違う映画ですし、監督も違います。ですがどの作品も、スタッフそれぞれが『自分がこの物語を語りたい、この物語を観客と分かち合いたい』と思えなければ、映画はつくることができません。『ウィッシュ』という作品では、500人ほどのスタッフがひとつのチームになって、ひとつのアイデアを信じて、美しいストーリーを観客に語ろうとしています。だから映画の作り手は集団ではあるのですが、そこには個々の想いがある。そう感じ取ってもらえたらうれしいです」(クリス・バック監督)

『ウィッシュ』
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(C)2023 Disney. All Rights Reserved.
(C)2023 Getty Images/Getty Images for Disney

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