『w-inds. LIVE TOUR 2023 “Beyond”』神奈川公演オフィシャルレポート到着
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『w-inds. LIVE TOUR 2023 “Beyond”』神奈川公演より
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すべて見る2023年の7月から9月にかけて、w-inds.は3月14日にリリースした通算15枚目のオリジナルアルバム『Beyond』を引っ提げ、千葉・市原市市民会館大ホールを皮切りに、大阪・NHK大阪ホール、東京・J:COMホール八王子、愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館ビレッジホール、東京・NHKホールと、全国5会場を回るツアー『w-inds. LIVE TOUR 2023 "Beyond"』を開催した。しかし、彼らは間髪入れずに追加公演として、神奈川・神奈川県民ホール大ホールだけではなく、なんと、台湾・TAIPEI INTERNATIONAL CONVENTION CENTERと香港・Star Hall, KITECを発表したのだ。
アルバム『Beyond』のリリース日であった3月14日といえば、22年前に「Forever Memories」でw-inds.がデビューした日である。
デビュー日に合わせてリリースされた特別なアルバムということで期待値も高かったのであろうことと、コロナ感染症の蔓延によりデビュー20周年記念タイミングでのツアーがオンラインライヴになってしまっていたことと、コロナ明け初めてとなる声出しOKのライヴツアーとあって、待ち焦がれたファン達はいつも以上に今回のツアーを楽しみにしていたことが伺えた。
アルバムと今回のツアータイトルになっているワード"Beyond"は、“~の向こうに”“~を超えて”という意味を持つ単語だ。
慶太と涼平は、今作『Beyond』の前に新体制初のアルバム『20XX “We are”』をリリースしているのだが、2人はこのアルバムの制作意図として、敢えてジャンルレスな楽曲を集める形で構成し、“今、2人でやりたいこと”に純粋に向き合ったのだと語っていた。メンバーの脱退により、メンバー編成が3人から2人になるという変化はグループにとってとても大きな変化であったが、2人が純粋に“今、2人でやりたいこと”にまっすぐに向き合ったことで、『20XX “We are”』は新体制の方向性をしっかりと示すところとなったのだった。コロナの影響もあり2021年12月29日にw-inds. Online Show『20XX”We are”』として配信で届けられたライヴでは、慶太がセルフプロデュースした楽曲のみのセットリストで、踊らずに歌のみで構成された新たな試みにもチャレンジしたのだ。
そんな『20XX “We are”』の経験があったからこそ生まれたのがアルバム『Beyond』と言っても過言ではないと感じたのは、『Beyond』のアルバムインタビューをしたときだった。
慶太は『Beyond』を“これまでのアルバムは、ちょっとどこかに承認欲求があったというか、新しいw-inds.をやって、みんなに認めてもらいたいという気持ちが大きかったところもあったんだけど、このアルバムを認めてもらいたいという感覚ではなくて、ただただファンのみなさんに喜んでもらいたいという気持ちで作った1枚だった”と言った。そして涼平は、そんな慶太の言葉を受け、“ちゃんと原点を認めてあげられる今だからこそのアルバムにしたかった。原点を持って、更に先を目指す、超えていく、これを持って前に進む、という意味も、本当に今とこれからのw-inds.にピッタリじゃないかなって思ったんです”と続けた。
作詞作曲・プロデュースを担って来た慶太は、ジャンルレスに様々な音楽を追求して取り入れ、常に時代の先端を走る努力を惜しまないスタイルで楽曲制作に当たって来ていたし、涼平はそんな慶太の1番の理解者であった。そんな中2人は、新体制という形に純粋に向き合って『20XX “We are”』を作り上げ、そこでより見えて来た自分達のやりたいことに素直に向き合い、そこを経て、時空を超えて今のw-inds.を噛み締めたくなった衝動を、2枚目のアルバム『Beyond』に詰め込むことにしたのである。そんな『Beyond』には、デビュー当時からw-inds.の楽曲を手掛けてきた、葉山拓亮、松本良喜、今井了介といった作家陣に楽曲提供を依頼した楽曲が収録されているのだが、それこそが『Beyond』の大きな特徴であり、それこそが“今とこれからのw-inds.の形”となるものだと確信させられることとなったのだ。
2023年10月29日。神奈川県民ホール大ホール。
追加公演1公演目。もう既に数回このライヴを観に来ているのであろうリピーターも多くいた様だったが、明らかにコロナ前との変化を感じたのは、自らもダンスをやっているのであろうという見た目の男性客が増えていたことだった。コロナ前まではチケットを購入してライヴ会場に足を運ばなければライヴに参戦出来なかったが、コロナで配信ライヴで参戦出来る機会が増えたことから、これまでw-inds.を気になってはいたが、なかなかライヴに行けなかったという男性客が改めて配信ライヴを観たことで、想像以上のパフォーマンスと、ダンスと歌唱のスキルにすっかり魅せられ、w-inds.の虜になり、ライヴ会場へのリアル参戦数が一気に加速したのではないかと考えられた。
彼らのデビュー当時はまだYouTubeもそこまでポピュラーでなかった時代だったことや、テレビなどの露出に頼らず、ライヴを中心としてその実力で着実にファンを掴み取って来たw-inds.故に、なかなか生で彼らのパフォーマンスに触れる機会は少なかったことから、きっと世間は、透き通る様なハイトーンボーカルが印象的だった「Forever Memories」を歌いながら踊る初々しい22年前のw-inds.の姿として記憶に深く印象付けられていたに違いない。
時は流れて昨今、世の中は空前のダンス&ボーカルブームである。現在活躍する溢れかえる無数のボーイズグループの中にも、w-inds.に憧れてこの世界を目指したティーン達も多かったことだろう。
憧れというものは永遠だ。人は最初に憧れた対象を変えることはない。現に今、自らがボーイズグループとしてデビューしているメンバーの中にも、w-inds.に憧れてこの世界に入ったというのはよく聞く話である。
シーンを引っ張っていく存在となった今、慶太と涼平が自分達の原点を持って、更に先を目指す、超えていく、これを持って前に進む、というところに立ち返ろうと思ったのも、これまでのいろんな経験があったからこそ導かれた必然だったのかもしれないと感じた。
この日、ステージ中央にはアルバムタイトルである“BEYOND”の文字をロゴ化したシンボルが凛とした佇まいで光を放っていた。
客席には“BEYOND”の文字を形取ったペンライトが青く光り、ライヴ前から圧巻の景色が客席を埋め尽くしていた。
始まりは「FIND ME」。
今井了介からの提供曲である。
デビュー当時からw-inds.のダンスナンバーを担って来た今井の楽曲は、まさしく“今のw-inds.”に似合うスタイリッシュな4打ちダンスナンバーだ。激しく魅せるダンスナンバーではないが、スピード感はありながらも、アンニュイさを含んだ、歌もしっかりと聴かせていく成長を感じさせるこの曲を、2人は左右それぞれに設けられた少し高くなったステージの上で、派手すぎない演出の中、力の入り過ぎない絶妙なパフォーマンスで“今のw-inds.の今井了介ナンバー”を届けて魅せたのだった。
客席の青のペンライトも“今のw-inds.のダンスナンバー”に見合うノリを生み出していたのも、とても印象的だった。青い光を揺らすファン達も、w-inds.の成長と共に、自らの音楽偏差値が成長していっているのであろう。素晴らしい関係性である。
イントロで高い声色の歓声が響き渡った2曲目は「Let's get it on」。2011年にリリースされたシングル曲なのだが、まだこの時代はそこまで多くのボーイズグループも名を馳せておらず、K-POPブームが加速し始めた時期であったが、w-inds.はいち早く海外思考のビートを自らの個性に取り込み、慶太の唯一無二な歌唱力と涼平が担当する歌唱もとても印象的だった、洋楽要素の強いダンスナンバーであった。アイドル路線のボーイズグループがいくつか存在する中で、歌唱力とダンス力を誇れるグループとしては逸材だったと言っても過言ではないだろう。
2009年にリリースされた「Rain Is Fallin'」では、Featuring G-DRAGON(BIGBANG)として、当時韓国で絶大な人気を誇っていたBIGBANGのG-DRAGONとのコラボをいち早く取り入れるなど、w-inds.は常に時代の先を走っていたとも言えるだろう。
この日の「Let's get it on」は、4人のダンサーと共に現在のw-inds.で最高のパフォーマンスを届けてくれた。
続けて届けられた「K.O.」では、慶太のソロパートから涼平のブレイクダンスに繋がれた見せ場や、アルバムの先行配信シングルとしてFeaturing CrazyBoyでリリースされた「Bang! Bang!」を届け、新旧のw-inds.を今のw-inds.で魅せてくれたのだった。ELLYはその昔w-inds.の振り付けもやってくれたことがあるという接点もあることから、ここでもしっかりと"Beyond"なコンセプトは活かされていたのである。
ここで2人は最初のMCを挟んだのだが、なんとこの会場でライヴをするのは2019年ぶりなのだという。そんな話から会場にまつわる思い出話に花を咲かせた2人。お互いの成長を語り合いながら、「メンバー2人なのに、いまだにリーダーってのは違和感あるんじゃないかな? 涼平くんじゃなくて、リーダーって呼ばれるのにも違和感があってさ(笑)」という涼平の一言から、今後それぞれの活動の場においてはそのまま“慶太”“涼平”表記で行い、w-inds.としての活動の際は“涼平(リーダー)”“慶太(副リーダー)”という表記で統一しようという決め事を、公然の場で作ったのであった。
昔はタラタラと取り止めのないトークだったことから、ライヴ後にいつもスタッフからダメ出しをされていた彼らを振り返ると、実に旨い流れでクスッと笑える自然なトークが出来る様になったのも成長の一つと言えるだろう。
彼らはこの日、ライヴ中盤にまとめて『Beyond』の楽曲達を詰め込んでいた。
慶太による作詞作曲ナンバー「Unforgettable」から、アルバム曲が間髪入れずに届けられていく流れが造られていたのである。
アルバムタイトルを『Beyond』と定め、アルバムの楽曲制作に入ったという慶太は、「Unforgettable」の歌詞を書いているときに“自分の承認欲求を満たす楽曲制作ではなく、そこを超えた今、ただただファンのみなさんに喜んでもらえる曲を作りたい”という自分の想いに気付かされたのだという。恋愛ソングとも取れる「Unforgettable」の歌詞は、ファンに向けて書かれた歌詞なのだとか。
慶太曰く、昔から“ずっと一生ついて行きます!”って言ってくれるファンの人達の言葉を“”なんてそんな軽いもんじゃないから!”と、疑ってしまうところがあったのだという。しかし、22年間活動して来た今も、ずっとその言葉を言い続け、ずっと応援し続け、本当にみんなが一生をかけてw-inds.を好きで居てくれて、応援してくれているんだなと思ったら、自然と「Unforgettable」の歌詞を書いていたのだと言うのだ。
Unforgettable。忘れられない、記憶に残る時間。その全てを共に過ごして来たファンへの想いを素直に言葉にしたのが、「Unforgettable」なのだ。
慶太のことは知り尽くしている涼平は、この歌詞を最初に読んだとき、迷わず慶太からファンのみんなに書かれた想いであることを悟ったのだという。涼平は、この日、「Unforgettable」から間髪入れずに届けられた慶太の作った「I Swear」の“君に会う為”に生まれて来たという前作に繋がる愛しさにも深く共感しているのだと教えてくれたことがあった。
「I Swear」はこれまでに慶太が作ってこなかった純粋なラブソングだ。
昔は素直になりきれず、純粋に気持ちを歌詞に落とし込むことが出来なかった時期もあったのだろう。しかし、やはりいろんな経験をした今だからこそ、自分にもファンにも純粋に向き合える余裕と優しさが芽生えたに違いない。この日、後に届けられた「Fighting For You」には、ファンへの想いはもちろん、ファンの家族への愛という意味でも歌っているのだ。
ファン達は「Unforgettable」と「I Swear」に込められた2人からの想いを、真っ直ぐに受け止めていた様子だった。
特に印象的だったのは「I Swear」での涼平の歌声だ。慶太と共にメインボーカルを取ることになった新体制の中で、惜しまぬ努力で短期間に確固たるボーカル力を身に付けた涼平の並々ならぬ努力を痛切に感じた。他にないボーカル力を誇る、透き通った絶対的な歌唱力を持つ慶太と、心地良く心の奥まで届く涼平の性格がそのまま声に出ている真っ直ぐに伸びる涼平の歌声が交互に響き渡った生で聴く「I Swear」は、とても美しい時間となった。
そして、彼らはここで今回のツアーを振り返ったトークを挟み、後半戦へと繋いで行った。
後半戦の1曲目として届けられた軽やかなギターフレーズが印象的な葉山拓亮が作詞作曲を手掛けた「Over The Years」では、今の彼らが歌う葉山節を、2人がそのメロディを1番心地良く聴こえる歌唱で声を載せていたのもとても印象深かった。当時から葉山節をリスペクトしていた慶太は、誰よりもそのメロディの活かし方を知っているのだろう。一方、当時はコーラスのみで参加していた涼平は、葉山の曲をメインボーカルという立場で歌うのは初めてのこと。慣れ親しんだ葉山節ではあるが、自らがメインボーカルとして歌うことになって受け止めたこの曲は、とても新鮮に感じたのだろう。単なる原点回帰ではない葉山節は、“時間の地図を広げて~”という葉山らしい感性と葉山からのw-inds.への愛が盛り込まれた歌詞も含め、集まったオーディエンスの胸の奥に真っ直ぐに届いたに違いない。
「Over The Years」から続けて届けられたのは、松本良喜からの提供曲「Blessings」だった。
松本良喜といえば、「Long Road」「十六夜の月」を手掛けた作家である。「Blessings」は、“やっぱ流石だわ”と納得させられる、松本が作る流石のw-inds.節と言えるナンバーだ。少し懐かしさを感じさせる爽やかなステップ曲。慶太と涼平は左右に分かれてマイクスタンドを用いて、ホーンの音色が美しく響き渡るフュージョン要素も感じる澄み渡るメロディに唄を載せたのだった。他のダンス&ボーカルグループとは違う幅広さを持ったw-inds.という特別な色を見せ付けた瞬間でもあったといえる。
真似出来ない実力を見せ付けた楽曲と言えば、「We Don't Need To Talk Anymore」も、J-POPシーンの中で他に属さない異色の存在として絶対の位置を築くことになったキッカケと言えるだろう。
2017年にリリースされたこの曲こそ、“今のw-inds.”の存在を新たな存在として世の中に印象付けたナンバーになったのではないだろうか。ファルセットと地声を自由自在に使い分けながら軽やかに歌う慶太と、少し地声よりも低めな声で歌う涼平の歌声のコンストラストは当時よりもより心地良い肌触りとなっていた。
本編ラストに届けられた「New World」の成長の大きさにも驚いたことも、今回のライヴでは是非とも記しておきたい部分である。この楽曲は2009年にリリースされた過去曲なのだが、今回のライヴでは大幅にリアレンジされたリミックスヴァージョンで届けられたのだ。
オーディエンスが盛大に盛り上がる中、2人はワイルドなパフォーマンスでステージを盛り上げていったのだった。
そしてこの日、鳴り止まないアンコールに応えてステージに戻った2人は「Get Down」からアンコールをスタートさせた。冒頭にも記した様に、慶太は作曲者として常に世界を視野に入れて動いていた為、EDMがK-POPの影響で日本で注目され流行り始め、世間そこにどっぷりと夢中になっていた頃には、既に先を見据えた曲作りをおこなっていたのだが、2019年にリリースされた「Get Down」では、その世代を上手く取り込む様なアレンジで多くの聴き手をw-inds.の世界に引き摺り込んだのである。この日、最も重要なポジションでもあるアンコールの1曲目に抜粋されて届けられた更にパワーアップした「Get Down」は、会場を見事に虜にした。
そして、今回のツアーの東京公演で初披露された9月22日にリリースされた最新曲「Run」を届けた。“Beyond”の世界観と素晴らしく馴染んでいた、今の想いの全てを詰め込んだというこの楽曲は、余裕を感じさせるステップと共に届けられたのだった。
そして彼らはアンコールのMCで、2024年1月19日に千葉・市川市文化会館、26日に神奈川・相模女子大学グリーンホール、2月1日に埼玉・さいたま市文化センターでの再追加公演の発表をし、ファンを喜ばせるサプライズ発表を用意していたのである。
同じツアーでここまで追加が出るのは誇らしいことである。また、それと同時にファンからしてみれば、ステージの回数を増すごとに公演が成長していくことを共に味わえるのも嬉しい限りである。
大体のところ、アルバムをリリースするごとにツアーは1回というのがお決まりとなっているのだが、これもまた、w-inds.が提示する新たなライヴツアーの形なのかもしれないと、彼らの先陣を切っていく生き方を素晴らしく思った。
このツアーで、歌とパフォーマンスで“~の向こうに”“~を超えて”という意味を持つ"Beyond"を表現した彼らは、ここまで付いて来てくれたファンも、新たにw-inds.というグループの魅力に気付いてくれた人達も、w-inds.に憧れて来た同士達も、誰一人として置き去りにすることなく“w-inds.という絶対的な存在”を証明しながら、未来へと続くw-inds.を提示したと言っても過言ではない。
w-inds.は常にシーンの先を行く。
彼らが積み重ねて来た歴史は、ピンチもチャンスも全て自らの糧とし、彼ら自身が自ら切り開いて来た道の先にあった未来だったのだろう。デビュー20周年から2年目。新たな道をしっかりと切り拓いて前進するw-inds.を心から誇りに想う。
文=武市尚子
「Run」LIVE MUSIC VIDEO
配信リンク:
https://w-inds.lnk.to/run
<ツアー情報>
『w-inds. FAN CLUB LIVE TOUR 2024』
■2024年
3月14日(木) 東京・豊洲PIT
17:30 開場 / 18:30 開演
3月24日(日) 福岡・Zepp Fukuoka
16:00 開場 / 17:00 開演
4月5日(金) 東京・Zepp DiverCity (TOKYO)
17:30 開場 / 18:30 開演
4月21日(日) 大阪・Zepp Namba (OSAKA)
16:00 開場 / 17:00
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