SANABAGUN. 10th Anniversary "ADVENTURE TOUR" FINAL 12月10日 日比谷野外大音楽堂 Photo:Kazuyuki Sanada, shima
SANABAGUN.が10周年を記念して開催した「ADVENTURE TOUR」。そのファイナルの地は、冬の日比谷野外大音楽堂。10年前、渋谷の路上でその唯一無二のストリートミュージックを響かせていた彼らは、自身初となる野音に立った。その軌跡について。
アンコール。「SNB.テーマ」後に鳴らされた「M・S」のパフォーマンスに触れて、鮮明にSANABAGUN.と出会ったころのことを思い出した。野音にいたオーディエンス個々人の誰もが、自分とサナバのファーストコンタクトに思いを馳せていただろう。だから、ここからは、この曲がどうだったとか細かく記述する一般的なライブレポートというよりも、筆者が知るサナバの軌跡の追憶にふけるようなコラムめいた内容になることを許してほしい。というか、これまでも、これからも、彼らのライブについて語るべきことがあるとすれば、四の五の言わずに一度は目撃した方がいい──正直、これしかない。10年前、2013年3月に結成し、音楽にしか生きられない、いや、音楽にこそ生きるべき8人の不良たちが渋谷の地べたに立ってライブを始めてから、日比谷野外大音楽堂に立った今もなおずっとそうなのだ。
あれは、2015年2月22日のことだった。筆者が今はなき下北沢GARAGEというライブハウスで企画したイベントにサナバに出演してもらった。ちなみに共演は長岡亮介(ペトロールズ)とYogee New Waves、DJはオカモトレイジ(OKAMOTO’S)とハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、ライターの高木“JET”晋一郎が務めてくれた。今見ても最高のメンツだったと、自画自賛する。筆者がイベントにサナバを呼んだのは、とにかくヤバいバンドがいるという噂を聞きつけ、その前年の11月に新代田FEVERで初めて8人のならず者のライブを観て、大きな衝撃を受けたのがきっかけだった。2MCに6人の楽器隊。まだ20代前半の若者たちが真っ黒なスーツに身を包み、オーセンティックなジャズマナーを踏襲しながら、ヒップホップの要素を大胆、というよりも暴力的な態度で昇華し、そこにブルースやファンクの匂いも濃厚にまぶしてみせる。思わず身構えてしまう迫力にブラックユーモアもコーディングする。笑っていいのか。もし笑ったらメンバーがステージを降りてフロアにやってきて殴られるんじゃないかとさえ想起させる、緊張と緩和のバランス。それを比肩なきストリートミュージックとしてグルーヴさせるメンバーの演奏力は、10年前のバンドシーンにおいてはあきらかに異端だった。つまり、最初から彼らはすごいバンドとしてのオーラだけを放っていて、恐怖心すら覚えた。だからこそ、またこのバンドのライブを味わい尽くしたいと思わせる中毒性があった。
筆者の企画イベント当日、サナバは7人で下北沢GARAGEにやってきた。当時のメンバーは、高岩遼(Vo)、岩間俊樹(MC)、隅垣元佐(Gt)、小杉隼太(Ba)、澤村一平(Ds)、櫻打泰平(Key)、谷本大河(Sax)、髙橋紘一(Tp)。ん? 一人足りないと思ったら、大河が、病名は失念したがあまり20代男性が患わない系の病に冒され入院しているという。さらに、高岩の声が、風邪をひいているのか、路上ライブで痛めたのか定かではないが、尋常ではなくつぶれていた。その声で「本日、若干メンバーは欠けてますが、気合入ってます。よろしくお願いします!」と迫られ、敵意を感じさせるほどの強さで手を握られたのだから、本当に怖かった。ちなみに岩間は今より推定20キロほど痩せていた。
イベントのトップバッターとしてステージに立ってくれた彼らは、「M・S」を皮切りに、底しれないほどクールな説得力と色気に満ちたパフォーマンスで、徹頭徹尾、我々オーディエンスを魅了した。その証左として、バーカウンターの酒が飛ぶように売れていた。GARAGEで開催されるイベントではアンコールでその日の出演者や事務所スペースに遊びに来ていたアーティストが分け隔てなくステージに上がり、30分から長いときで1時間強に及ぶフリーセッションが繰り広げられることがよくあった。サナバは泥酔したミュージシャンたちがステージにごった返したセッションの中心をもかっさらってみせた。この夜から、GARAGEのスタッフたちはサナバに惚れ込み、サナバもまたGARAGEをホームグラウンドとして愛してくれるようになった。
サナバは2015年10月にメジャーデビュー。そこからの道のりは決して順風満帆ではなく、メンバーの別れも幾度となくあった。ただ──これはサナバについて語るときに何度も書いていることだが──彼らは絶対に折れなかった。思い出は、甘いものも、苦いものも、枚挙にいとまがない。ただ、本当にサナバはサナバをあきらめたことは一度たりともないのだ。どう考えても、サナバが、一番ヤバい。それを彼らは誰よりも信じ続けた。
2017年9月に大林亮三(Ba)が、2019年2月に大樋祐大(Key)が、2022年2月には磯貝一樹(Gt)が加入。言うまでもなく前任者も代替不可能な素晴らしいプレイヤー/音楽家であったし、空いた立ち位置を担った3人のメンバーもまた誰にも似ていない最高の音楽人だ。そうやって、サナバは8人で転がり続けてきた。
そして、2023年12月10日。10周年を記念した「ADVENTURE TOUR」ファイナル。SANABAGUN.が立つ足元は渋谷の地べたから、冬の日比谷野外大音楽堂のステージへ。残念ながら満員とはならなかった。しかし、そこに駆けつけたのはサナバの音楽に心底惚れ込んでいる生粋のオーディエンスであり、そのステージでバンドが体現したのは、この10年で築き上げてきた矜持の集大成と、現編成だからこそ見せることができるパフォーマンのすごみとエンターテイメント性、これからまだまだ続く険しい獣道を突き進むための決意、その塊だった。
本編ラスト、サナバの10年の歩みを形象化した「Jam goes on」を鳴らす前に、岩間はこう言った。
「みんな今日、来てくれてありがとう。この8人が10年間──メンバーチェンジもありつつ、ずっと歩んでこれたのは、今日来てくれている、そして今回のツアーに足を運んでくれたみなさんのおかげです。ここに立つまでは、地味な部分や苦しい部分──1音1音考えたり、いろんな話し合いをしてリリックを書いたり、自分らで言うのもおかしいけど、楽じゃないことが8割くらいなんですよ。でも、こうしてたくさんの人の前でライブできることを楽しみにがんばってます。いつも報われるのは本当にみなさんのおかげです。そして、関係者のみなさんや今日のライブを作るためにいろんなスタッフさんが関わってます。それを全部取り仕切ってくれたVINTAGE ROCK、本当にありがとうございます。あと、4年前はちょいちょいライブに来てたけど、全然見なくなったやつら。実家に帰ったり、結婚したり、子どもできたり。いろんな環境の変化があったと思う。そういうやつらがまたSANABAGUN.のライブに来られるようにこういう場所を作ったし、11年目もいつでも帰ってこられるように、俺ら続けるので。いつでも来ていいから、俺らのライブは。待ってるんで、俺らはずっと。曲書いて、ステージング考えて、楽しんでもらえるように待ってます。また会いましょう。必ず」
アンコールの大ラス、「FLASH」を鳴らす前に、不敵なフロウに乗せるように高岩はこう口火を切った。
「大河、紘一、亮三、一平、一樹、祐大、俊樹と俺、マンパワー重なった、最強です。いかちぃだけじゃねぇぞ、この愛嬌で、笑って、泣いて、盛り上がったろ、日比谷! 10年どうもありがとう。俺たちのね、ミュージック人生はこれからま~だ、ま~だ、ま~だ続くよ。SANABAGUN.10周年、今日来てくれたみんなに、これだけは約束します。引き続き俺たちは、ならず者として、世をなめくさって、中指立てて、真剣にふざけて、歩んでいきます」
すべての楽曲の演奏が終わったあと、岩間はこう叫んだ。
「我々SANABAGUN.、ここから制作期間に入って、夏前にアルバムを出して、ツアーを回り、ファイナルはできなかったZeppにチャレンジさせてください!」
2020年、新型コロナウイルスの影響により延期を試みるも開催できなかったZepp DiverCity公演。これだけじゃない、サナバには果たしてない約束が、まだまだある。
Text:三宅正一 Photo:Kazuyuki Sanada, shima
<公演情報>
SNB. 10th Anniversary "ADVENTURE TOUR" FINAL
2023年12月10日(日)日比谷野外大音楽堂
セットリスト
01. BLOOM
02. KING
03. 8 manz
04. Yukichi Fukuzawa
05. BED
06. Stuck In Traffic × 大渋滞 -REMIX-
07. 三種の神器
08. Speak of Love
09. Somebody
10. SFT
11. B-Bop
12. 3MCメドレー (デパ地下 / ス・パ・パ・パ・イ・ス / DA インフルエンザ / F-BOY / BooOOO!!! / ジャバ・ダ・ハット / C.S.C / My Dog is Bad / 男の代償)
13. ぼくたちダイナソー
14. We in the street
15. 吉報クラシック
16. WARNING
17. 人間
18. Jam goes on
Enc...
19. SNB.テーマ
20. M・S
21. FLASH
<ライブ情報>
SANABAGUN. LIVE "8XL" IN ZEPP SHINJUKU
2024年6月21日(金) Zepp Shinjuku
OPEN 18:00 / START 19:00
Official Web Site最速先行:2024年1月29日(月) 23:59まで
https://w.pia.jp/t/sanabagun-t/
関連リンク
公式サイト:
https://www.sanabagun.net/
公式X:
https://twitter.com/sanabagun
公式YouTube:
https://www.youtube.com/user/sanabagan3785